例えば、丸ビルができたのは02年で、新丸ビルができたのは07年だが、両建物の中身はまったく異なる。以前は、働く女性のほとんどが制服やスーツを着用していた。ところが昨今、私服で働く女性が増え、オンとオフの差がなくなっている。そのため新丸ビルでは、従前、百貨店の稼ぎ頭だった〝キャリア〟や〝OL〟といったカテゴリーを廃止し、いつでも着られるハイセンスな商品を展開している。
こうした芸当は、スクラップ・アンド・ビルドという考えがなく、建物の新陳代謝ができない百貨店には無理な話。おのずと消費者ニーズとはズレが生じてしまう。
スペースが広く、利益率がさほど高くない商品であっても展開できる点もSCの強みだ。
現在、世界的にスニーカーがブームなのだが、百貨店は店舗スペースが限られており、利益率の高い商品を優先するため置く余地はない。これがSCであれば、常に流行の最先端を取り入れ、消費者からの支持を優先するから大展開する。昨今では、こうしたSCの姿勢を外資系のファストファッションブランドも評価、日本初出店にSCを選ぶ傾向にある。
新規プレーヤーが
商業運営能力増し
商品補充交渉まで
百貨店にとってさらに脅威なのは、新勢力のデベロッパーが、単なる〝ハコ貸し業〟にとどまらず、商業運営の力を蓄えてきたことだ。
三井不では、運営会社の社員が施設に常駐、定期的に店舗を巡回している。そこで品切れしていれば、店長と一緒にテナント本部に掛け合い、商品補充を交渉する。
「テナントの売り上げが伸びれば、商業施設の売り上げも伸びる。在庫コントロールも含めて当社がサポートする」(青柳雄久・三井不動産商業施設運用部長)という徹底ぶりだ。
こうした状況を前に、攻め込まれている百貨店側も商業プレーヤーとしての実力を認めざるを得なくなっている。
髙島屋の木本茂社長は、三井不が日本橋に開発するコレドシリーズについて、「新しい建物ほどバージョンアップして、完成度を上げてきている。どこにでもあるテナントを集めて編集するだけでなく、施設としての独自性を出し、味付けをしている」と評する。
百貨店が、自社の論理に基づき、高コスト体質、硬直的な品ぞろえで足踏みしているうちに、新勢力は着々と実力を付け〝百貨店包囲網〟を狭めている。百貨店はどのような手で迎え撃つのであろうか。
『週刊ダイヤモンド』6月7日号は「異業種乱入で盟主危うし!百貨店包囲網」。消費増税に伴う駆け込み需要で、百貨店業界は業績的に一息ついているが、新たなプレーヤーが続々と進出、商業施設を開設させて百貨店市場を侵食しています。そうした構造は今後も変わらず、6.2兆円のマーケットが5兆円規模まで縮小することが必至との見方が濃厚です。
そこで今回は、こうした現状を取材すると共に、迎え撃つ百貨店業界の戦略を詳細に分析しました。三越伊勢丹ホールディングス、J.フロントリテイリング、髙島屋、エイチ・ツー・オー リテイリング、そしてそごう・西武の大手5グループは、かつてと違い大きな違いが出ているようです。
また今回は、どこよりも早く百貨店の店舗別売上高のデータを入手、「売上高」「前年度からの伸び率」そして「1㎡当たりの売上高」でランキングしました。同時にショッピングセンターをの運営会社を対象にアンケートを実施、店舗別の売上高を見てみました。
地方百貨店についても全国縦断レポートと題し、北海道、名古屋、大阪、広島、福岡の現状をお伝えします。是非、ご覧ください。
『週刊ダイヤモンド』 副編集長 田島靖久