Xiが普及すればするほど
〝隠れ債務〟が膨らみ
その額6兆円規模か!?

 もし、このままのペースでドコモが月サポを進めると経営への負担は、どうなるのか。そこで本誌は、13年度上半期までの状況を基に、スマホに搭載されたドコモの高速通信サービス「LTE Xi(クロッシィ)」の普及度合いによって、本業の携帯電話収入と月サポの負担が17年度までにどう変化するのか、3パターンでシミュレーションした。

 その結果、本業の収入は微増していくものの、普及の度合いによって、累計4.9兆~6兆円に及ぶ〝隠れ債務”ともいえる負担が発生することがわかった(詳細は『週刊ダイヤモンド』2月1日号の28ページに掲載しているのでご覧ください)

 となれば、ドコモが今、野菜宅配会社などを買収し、コンテンツサービスなどに利用していくという「新領域」の戦略がうまくいっても、本質的な成長にはつながらなくなってしまう。月サポの負担が携帯電話収入の伸びを消してしまうからである。

 もっとも、坪内和人副社長が「14年度は月サポの負担が増えるが、15年度にある程度は戻る。競争力がつけば月サポに頼らない戦略が取れる」と言うように、月サポという〝麻薬”を断ち切れば、こうはならない。

 だが、それができるのか。ドコモは、今期営業利益8400億円が最重要課題だ。月サポを増やしても、その分、別のコストを削減すれば利益が出ると考え、その負担を先送りしている。ただ、他キャリアとの競争を考えれば、今後そう簡単に月サポを断つことはできないだろう。

 ドコモを取り巻く外部環境は大きく変わっている。他キャリアが競争力をつけて攻め込んでくるばかりではなく、グローバルなIT企業もどんどんとドコモの顧客を奪っている。その中、まだ従来型の携帯を大事に使うシニア層らを守っていかなければならない。実は、契約者全体に占める、第3世代(3G・FOMA)の利用者は、まだ全体の約7割もいる。とりわけ、地方部ではLTEよりも安いFOMAで十分という利用者も少なくない。

 それが足かせとなり、スマホ時代へのさまざまな移行が遅れている。さらに、ほぼ無借金経営ということもあり、「競争に負けているという認識すらない」(NTT関係者)という。

 だが、このままではドコモの成長は見通せない。iPhoneで復活することが叶わない今、まさに正念場を迎えている。

電気や水道は止まってもいいが
携帯が止まっては困る人が急増
激変する環境下でどーするドコモ

 『週刊ダイヤモンド』2月1日号は、ついにiPhoneを発売したNTTドコモの特集です。ソフトバンク、そしてauがiPhoneを発売して以降、ドコモからはMNP によって顧客が流出し続けました。しかし、iPhoneを導入してからも、捲土重来かと思いきや、顧客流出が多少改善した程度で、一向に浮上してくる気配がない。ドコモの中で一体何が起きているのか。そんな疑問が特集の出発点でした。

 携帯の取材を進めていくと、かつて世界を席巻したiモードや、既存顧客など、かつて携帯の王者だった時代の資産や財産が、インターネットやIT環境が激変する中で〝重荷〟となっていることが分かってきました。

 特集では、そうしたドコモの実態や課題を詳細に分析した他、迷走しているようにみえる買収戦略やサービスなどが、ソフトバンクやLINE、アマゾンといったライバルたちとどう違うのか、がっぷり四つの対決を掲載。合わせて5000人のユーザーを対象に緊急アンケートを実施、ユーザー目線で見たドコモの姿についてもお伝えしています。

 電気や水道が止まっても構わないが、携帯が止まっては困るという人が急増している時代に、ドコモは復活することができるのでしょうか。是非、ご覧ください。

(『週刊ダイヤモンド』副編集長 田島靖久)