「勝ち組」としてバブルを謳歌するコンサルティング業界。コンサル市場の急膨張を背景に、多種多様なプレーヤーがバトルを繰り広げています。大乱戦期を迎えているコンサル業界で“序列激変”の兆しが出ています。戦略系コンサルや会計系コンサルのビッグ4で起きている異変とは。『週刊ダイヤモンド』6月22日号の第1特集の『コンサル大解剖』は、「ダイヤモンド・オンライン」で人気の連載『コンサル大解剖』の記事を厳選して再編集。大乱戦期を迎えたコンサルビジネスの最前線に迫っています。(ダイヤモンド編集部 名古屋和希、山本輝)

コンサルは総合系が高成長
国内系は独自モデルで勢い

ビッグ4でトップに君臨してきたデロイトトーマツコンサルティングは、アクセンチュアを追って規模拡大を目指してきた。だが、昨年から内部崩壊に見舞われている Photo:SOPA Images/gettyimages

 大乱戦期を迎えているコンサルティング業界。下の大図解を基に、代表的なコンサルファームの特色を見ていこう。

 まず、コンサルファームは、サービスの特徴から大きく戦略系と総合系の二つに分かれる。

 主に少数精鋭の人員で、戦略立案など企業経営の上流に当たる部分をサポートするのが戦略系ファームだ。いわゆる伝統的なコンサルのイメージであり、マッキンゼー・アンド・カンパニーなどが代表だ。

 それに対し、戦略立案だけでなく、実行支援からデジタル関連の実装・運用といった下流の工程まで幅広く手掛けるのが総合系ファーム。デジタルに強く一気通貫のサービスが売りのアクセンチュアや会計系コンサルの「ビッグ4」がその代表だ。

 実は近年、企業の成果重視の傾向が強まったことで、コンサルニーズも単なるレポート作成から、実行支援や実装などへとシフトしている。そのため、コンサルの中でも、かつては花形だった戦略系より総合系の方が高い成長率を示している。

 また、注目すべきは国内系コンサルの隆盛だ。特にベイカレント・コンサルティングは、近年著しく成長しており、業界の台風の目だ。ビッグ4などとは異なり、各社独自の強みやビジネスモデルで勢いをつけているのが国内系の特徴といえる。

 さらに、ここ数年、デジタルがコンサルの主要テーマとなったこともあり、いわゆるベンダーとコンサルの垣根があいまいになりつつある。その中で、富士通が2025年度までにコンサル人材を1万人に増やす方針を発表。NTTデータもコンサル部門の拡充を打ち出している。ベンダー側も単なる“御用聞き”から脱却し、上流のコンサル機能の強化を加速している。

 伊藤忠商事のような異業種もコンサル事業の強化を虎視眈々と狙っている。市場の拡大とともに、コンサル業界は様々なプレーヤーが入り乱れて混戦状態となっている。

 大乱戦期を迎えたコンサル業界。実は、コンサルファームの間で“序列激変”の兆しが出ている。

戦略系3強は「MBB」から「MBA」
デロイトが内部崩壊でPwCが逆転も

 激変しているのが、一つは外資戦略系コンサルティングファームの序列だ。日本で事業を展開する外資系戦略ファームで、長らく四番手だったA.T.カーニーの人員数が直近でベイン・アンド・カンパニーを逆転したのだ。

 戦略コンサル業界では、マッキンゼー・アンド・カンパニー、ボストン・コンサルティング・グループ、ベインの頭文字を取った「MBB」が3強として君臨してきたが、足元ではカーニーの躍進によって新3強である「MBA」との呼称が業界関係者の間でもささやかれつつある。

 そして、もう一つが、会計系総合コンサルのビッグ4の序列である。

 ビッグ4でトップに君臨してきたデロイト トーマツ コンサルティングは、絶対王者のアクセンチュアを追って規模拡大を目指してきた。だが、昨年からデロイトは内部崩壊に見舞われている。さらに、主幹ベンダーとして手掛けた江崎グリコのシステム刷新プロジェクトは“炎上”し、「プッチンプリン」などの商品が店頭から姿を消す事態も招いている。

“予算未達ドミノ”ともいうべき窮状に陥ったデロイトの業績不振は深刻だ。デロイト関係者によると、2023年度の売り上げは前年度と同水準の1100億円ほどにとどまる可能性がある。大手コンサル各社は二桁成長を続けてきたが、近年では極めて異例の低成長となる。

 一方、ビッグ4では2位につけるPwCコンサルティングが22年度に売上高を1000億円の大台に乗せたとみられる。23年度に売上高が二桁成長を達成すれば、売上高は1100億円前後となる見通しだ。つまり、売上高でPwCがデロイトを上回ってビッグ4で首位に立つ可能性があるのだ。

 ビッグ4では、EYストラテジー・アンド・コンサルティングも近年躍進している。EYはコンサル事業では、デロイトやPwCに水をあけられていたが、デロイト出身の“超大物”コンサルタントの近藤聡社長が「プロジェクト・ドラゴン」なる計画を推し進めて急成長を遂げている。

 足元では、EYはビッグ4の中で最も高い成長率を誇っており、22年度の売上高は前年度比で約30%増となる800億円だったとみられる。23年度も二桁成長となる見込みで、売上高1000億円の大台も視野に入ってきそうだ。台風の目ともいえるEYが上位2社を射程圏内に捉えられるかにも注目が集まっている。

 デロイトは内部崩壊をきっかけにビッグ4首位陥落が眼前に迫っている。「勝ち組」といわれるコンサル業界で、今後は2極化が進んでいく可能性もありそうだ。

「勝ち組」コンサル業界の
給料・序列・採用を大解剖

『週刊ダイヤモンド』6月22日号の第1特集の『コンサル大解剖』では、「勝ち組」としてバブルを謳歌しているのがコンサルティング業界を徹底解剖します。

 コンサル業界の基礎知識として、どんなプレーヤーがどんな業容でしのぎを削り合っているのかを大図解で紹介。外資戦略系コンサルやアクセンチュアやビッグ4など総合系コンサル、ITベンダーの動きを解説します。

 最新の業界構造にもメスを入れました。破竹の勢いが続くアクセンチュアが誇る最強ビジネスモデルを解剖。ビッグ4の一角、デロイトトーマツコンサルティングで起きている内部崩壊の詳細も明らかにします。また、企業を取り巻く経営環境が激変する中、事業会社のコンサル需要が高まっています。コンサルとの正しい「付き合い方」について、実例を基に紹介していきます。

 そして、バブルに沸くコンサル業界の給料や採用の実態もリポート。アクセンチュアの職位別の給与額や、新卒採用については、東大や早慶など主要11大学のコンサル就職者数の一覧も公開しています。

 空前のコンサルブームの中、コンサル業界関係者のみならず、コンサルを「使う」企業の関係者、転職や就職を目指す人たちに必見の特集です。