『週刊ダイヤモンド』6月8日・15日合併号の第1特集は「賃上げの嘘!本当の待遇と出世」です。世間では過去最高の賃上げのニュースが続いています。しかし、取材を進めると、単なる賃上げにとどまらない企業の明確な意図が見えてきました。特に中高年には減収と降格の危機が忍び寄っています。主要企業で進む待遇と出世の激変に迫ります。(ダイヤモンド編集部副編集長 清水量介)

過去最高レベルの賃上げ続出!
実は浮かれていられない中高年

 長い間、先進国最低レベルの賃金増に甘んじてきた日本。名目でも実質でもイタリア以外の諸国に引き離されてしまっている。

中高年にとっては、賃上げと同時に進む人事制度改革、降格&減収リスクに物価高の追い打ちがかかる(写真はイメージです) Photo:PIXTA

 ところが、2023年あたりから、風向きが変わってきた。インフレや業績の好調を背景に、賃上げに踏み切る企業が増加。24年春にはその流れが加速し、過去最高水準の賃上げが続出している。

 ただし、浮かれてはいられない。そこには嘘やカラクリが存在しているからだ。

 まず、ベースアップ(ベア)や定期昇給、福利厚生の向上などでなされる「賃上げ」の数字は、あくまで“平均”にすぎない。厚く還元される世代や役職もあれば、その裏で割を食う社員もいる。世間の耳目を集めるために初任給を一気に増加させる企業も多いが、同じ割合で全社員に適応されることは、まずないだろう。

 さらに重要なことがある。多くの企業で賃上げと同時に人事制度の改革が進んでいるのだ。

 端的に言えば、実力主義が進み、賃金テーブルに大きなメスが入り始めている。もちろん、それは年収に影響するだけではなく、出世の構造、社内の序列をも激変させるインパクトすら持つ。

賃上げと同時に進む人事制度改革
降格&減収リスクに物価高の追い打ち

 というのも、一律に実力主義を導入するのではなく、ダブついた世代や職位を狙い、制度改変する企業が目立つからだ。その多くで中高年の社員を中心とした管理職が標的になっている。

 しかも、だ。企業の賃上げは続くものの物価の上昇に追い付かず、実質賃金は23年度も2.2%減と2年連続のマイナスとなった。

 つまり、「初任給も上昇、賃上げも過去最高。給料が上がるのかな……」と漫然と思っていたら、「翌年の評価で年収がダウンし出世の芽も摘まれた。出費もかさむ」という憂き目に遭いかねないのだ。

 これからは会社が賃上げを打ち出したら、裏にある意図を探る方がよいだろう。「年収が上がったからラッキー!」と緩むのではなく、「ハッパを掛けられている」と、気を引き締めるべきかもしれない。

賃上げの裏で進む「中高年の降格危機」
企業の意図と年収実額を丸裸に

『週刊ダイヤモンド』6月8日・15日合併号の第1特集は「賃上げの嘘!本当の待遇と出世」です。

 世間では過去最高の賃上げのニュースが続いています。しかし、明るい話題の裏では、待遇や出世の構図を激変させかねない事態が進行しています。

 取材を進めると、単なる賃上げにとどまらない企業の明確な意図が浮かび上がってきました。多くの日本企業で賃上げと並行して進む人事制度改革では、特に中高年の社員が減収、降格の憂き目に遭う可能性が明らかになりました。

 さらに、口コミデータや財務データを活用した独自の分析と試算に加え、公務員数百人に向けた独自アンケートも実施。

 本当の待遇と新しい出世の構図を、具体的な金額や職位とともに炙り出しています。