人気の情報系学部・学科でも
需給逼迫までには至らない
少子化が進む中、国は2010年代半ばから大学側に人文科学系などの文系リストラを促すようになった。
その一方で、AI・データサイエンスの急速な技術進化が社会やビジネスに大きな影響を与え、また世界的に脱炭素化へ向けた再生可能エネルギーの活用が進むことから、デジタル系人材やグリーン系人材を育成する理系学部・学科の充実を後押しする。
大学側は文系の定員を減らし、理系、文系と理系を融合した文理融合型の学部・学科にその数を充てるようになった。しかし、受験者側のシフトが追い付いていない。理系科目が苦手で文系に逃げた者が、定員を増やしたところで自然と流れてくるわけではない。
大学受験の歴史は、景気が良い時期に文系が人気になる「文高理低」、景気が悪くなると理系人気になる「理高文低」を繰り返してきた。コロナ禍になると理高文低が続いたが、直近は「現3年生で明確な理系人気の傾向は見られなくなっている」とベネッセコーポレーションの教育情報センター長である谷本祐一郎氏は言う。
これは受験生にとって、大チャンスである。
次のページの表は、最新23年における理系学部・学科系統別の状況だ。募集人員数と志願者数について、10年前の数値を100としたときの指数で見ると、情報科学、情報工学、総合情報学といった情報系の伸びが目立つ。
実質倍率(受験者数÷合格者数)も上昇しているが、学部・学科の新設ラッシュで募集人員も膨らんでいるので需給逼迫までには至らない。新設ラッシュはまだ続く。
農・水産系統では、募集人員数が10年前より増えているが、志願者数がついてこず、実質倍率も高くはない。デジタル人材需要で人気が出た情報系に続いて、グリーン系人材需要で人気が出るといわれるが、まだ実態は伴わない。
地方国公立大学の理系学部・学科などを見ると、理系の入試難度は、実は昔よりかなり易しくなった。合格偏差値より下でも受かる割合が高くなっている実態がある故、「すごくチャンスがある」と谷本氏。学生側は理系にそこまで苦手意識を持つ必要がなくなったのだ。
デジタル人材が重宝される職場や社会で理系コンプレックスを抱く親世代には、早いうちに子供の理系志向を促す者が少なくない。こうしたシフトが進む手前の今こそ、“理系の入り時”である。
170大学754学部・学科
「理系」偏差値推移を大公開
『週刊ダイヤモンド』12月9日号の第1特集は「新・理系エリート」です。
DX(デジタルトランスフォーメーション)に続いてGX(グリーントランスフォーメーション)の波が起こり激変する大学の「理系」を受験の観点から徹底解剖。偏差値については学部だけでなく学科単位で、170大学754学部・学科の推移をリスト化しました。
小中高生から大学生、社会人までそれぞれが新たな時代の理系エリートになる道に迫ります。