『週刊ダイヤモンド』12月2日号の第一特集は「ゼネコン2024年ショック」です。2024年4月1日から、建設業にも働き方改革に伴う残業時間の上限規制が適用されます。ただでさえ、高齢化や人手不足、長時間労働の三重苦にあえぐ中、「2024年ショック」が追い打ちをかけます。業界では生き残りをかけた合従連衡が進む見通しです。業界再編の最新動向をお届けします。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)

2024年問題が追い打ち!
ゼネコン大再編時代へ 5つのトリガー

Photo by Ryo Horiuchi

「2024年問題」がいよいよ、建設業界に襲い掛かる。2024年問題とは、働き方改革に伴う時間外労働の上限規制が24年4月から建設業にも適用され、建設業界で人手不足と労務費の高騰が深刻化することである。

 かねて建設業界は「建設労働者の高齢化」「人手不足」「長時間労働」という三大問題を抱えてきた。2024年問題は、三大問題にあえぐ建設業界に追い打ちをかけるのは必至で、生き残りを懸けた合従連衡は避けられない。その先に待つのは、建設業界の再編である。

 そのトリガーは五つだ。

 まずは「人手不足」である。すでにその実例がある。スーパーゼネコンの大成建設が11月9日、中堅ゼネコンのピーエス三菱をTOB(株式公開買い付け)によって連結子会社化することを決めた。業容拡大を図る大成と人手不足の解消を目指すピーエス三菱の利害が一致した。

 二つ目のトリガーは「後継者難」だ。M&A(企業の合併・買収)助言会社のレコフによると、近年は後継者不足をきっかけにした事業承継型のM&Aが活発化している。例えば、準大手の戸田建設が18年末、後継ぎがいなかった福島県の名門ゼネコンである佐藤工業を子会社化している。

 業界再編の〝刺客〟はゼネコン業界にとどまらない。〝黒船〟ともいえる「物言う株主(アクティビスト)」が、三つ目のトリガーだ。

「PBR(株価純資産倍率)1倍割れ」のゼネコンは、アクティビストに狙われやすい。アクティビストに圧力をかけられた西松建設や大豊建設などは、再編を余儀なくされた。

 トリガーの四つ目。異業種プレーヤーによる「領空侵犯」も目立つ。大和ハウス工業が12年に準大手のフジタを買収して業績を拡大させたのを〝モデルケース〟とし、近年はハウスメーカーが中堅ゼネコンを獲得する例が相次ぐ。

 最後のトリガーが「自滅」だ。準大手の三井住友建設は、自社が手掛ける大型工事でトラブルが続き2期連続の最終赤字に陥った。財務基盤が揺らいだこともあり、「三井住友建設はどこに買収されるのか」といううわさが絶えない。買い手として名前が浮上するのは、ゼネコン業界に限らない。

 あくまで2024年問題は、業界再編のきっかけの一つにすぎない。〝火種〟は、至る所にある。「ゼネコン大再編時代」がいよいよ到来する。

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『週刊ダイヤモンド』12月2日号の第1特集は「ゼネコン2024年ショック」です。働き方改革に伴う時間外労働の上限規制が2024年4月から、いよいよ建設業にも適用されます。働き方改革によって人手不足と労務費の高騰が深刻化する「2024年問題」は、すでに資材高にあえぐ建設会社に追い打ちをかけます。

 国や自治体に提出する経営事項審査結果を公表している建設業者延べ25万社の情報を基に、建設業界のデータベース事業を展開している日本マルチメディア・イクイップメントの協力を得て、ダイヤモンド編集部は人手不足と資材高に着目した独自ランキングを作成。全国ゼネコン・サブコン2565社徹底分析し、日本建設業連合会加盟社133社と主要6業種のワースト900社の計1033社の経営脆弱度ランキングをお届けします。あなたの会社、あなたの身近な取引先はランキングに名を連ねているでしょうか。

 建設業界では、それぞれのゼネコンが生き残りを懸けて合従連衡を繰り広げています。それだけではありません。総合商社やハウスメーカー、物言う株主など異業種プレーヤーも、66兆円市場といわれるゼネコン業界に乱入しています。徹底取材を基に、ゼネコンの業界再編に関する最新動向も追いました。