『週刊ダイヤモンド』11月25日号の第1特集は「団塊、バブル、氷河期、ゆとり…どの世代が割を食っているのか?役職定年 部長・課長の残酷」です。主要64社を対象に、年齢別の推計年収と企業内ランクを、ダイヤモンド編集部が初めて作成しました。そこから浮かび上がった世代間格差とは?ここでは清水建設を例に、注目ポイントを解説します。(ダイヤモンド編集部編集委員 清水理裕)

年収推移で5世代を比較
清水建設の5年後年収は?

 団塊、バブル、就職氷河期、ゆとり──。どの世代が恵まれていて、どの世代が割を食っているのか?

団塊、バブル、就職氷河期、ゆとり──。どの世代が恵まれていて、どの世代が割を食っているのか?(写真はイメージです)Photo:PIXTA

「団塊の世代の雇用を守るために氷河期世代が不幸になった」「少子高齢化で生じた社会構造の変化のしわ寄せが、氷河期世代に集中している」

 日本経済が停滞した平成の30年間で起きたこととして、こういったことが指摘されてきた。

 そして現在、就職難の憂き目に遭った氷河期世代も、課長や部長として企業を支える時代となった。ところが、上のバブル入社組にポストの多くを牛耳られ、下の世代に対してはハラスメントや働き方改革の面で細心の注意を払わなければならないという板挟み状態で今も苦しめられている。

 もちろん、バブル入社組やゆとり世代も悩みは尽きないだろう。さらにはOBとなった団塊の世代は時に「勝ち逃げ」とやゆされるが、業界や会社ごとに実際に置かれている状況は異なるはずだ。各世代の格差の実態は本当のところ、どうなっているのだろうか。

 そこで今回ダイヤモンド編集部は主要64社を対象に、この20年間の5世代の年収と主要企業内ランクを初試算した。同じく独自推計である「5年後予測年収」も含め各社50項目を挙げた。

 この記事では、スーパーゼネコンの一角を成す清水建設の試算結果を取り上げてみたい。同社の「2000年代からの年齢別推計年収と主要企業内ランクの推移」の表を早速、確認してみよう。

団塊は悪?氷河期は犠牲者?
50項目データで解明!

 上図は三つの表で構成されているので、それぞれ見方を解説していこう。

 一番上の表では、20年間の「日本企業内での序列」と「所属する会社内での世代間の損得」が分かる。具体的には、30~70代の5世代について、年収の水準が日本の主要企業の中でどこに位置していたか、同じ社内の5世代の中で誰が得をしていたかを掲載した。

 現在40代半ばの人なら、一番上の表では薄い緑の枠を見てほしい。

 現在の年齢別に、過去20年間の結果を集計して総合的に評価したのが、真ん中の表の右側にある「勝ち組度」だ。これは世代別の損得を総合的に評価したもので、1~4位で格付けした。

 一番下の表では、各社の「5年後の予想年収」を示した。現在の平均年収が971.6万円の清水建設の場合、5年後予想は1175万円となった。

【「2000年代からの年齢別推計年収と主要企業内ランクの推移」の表の見方】
■各社にそれぞれ三つある表のうち、一番上の表の見方:

●「推計年収」は、有価証券報告書で公開された2002年度、12年度、22年度の平均年収と平均年齢を基に、以下の手順で算出(なお、平均年収は2000年3月期以降開示されるようになったデータで、それ以前は存在しない)。厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(02年、12年、22年)を基に、10業種(建設、製造、情報・通信、運輸、商業〈小売り・卸売り〉、金融、サービス、電気・ガス、不動産、その他)の年収カーブを多項式モデルによって作成。それを各社のデータに当てはめて、年齢別の推計年収を求めた。
●「主要企業内ランク」は、今回の主要64社の中で、同じ年度の同じ年齢における当該企業の推計年収の順位で評価した(例:64社中、22年度の35歳の推計年収で、清水建設は何位になるかで評価)。順位の評価方法は、当該年度の当該年齢における当該企業の順位÷64社(02年度は75社で計算)×100を算出し、上位0~5%未満はA++、5~10%未満はA+、10~15%未満はA、…、90~95%未満はG++、95~100%未満はG+、100%はGと格付けした。
●「世代間比較」は、当該企業の同じ年齢で02年度、12年度、22年度の年収を比較し、金額が大きい順に〇、△、×と評価した。例えば、清水建設の35歳の年収は02年度が682.6万円、12年度が686.8万円、22年度が884.2万円なので、22年度が〇、12年度が△、02年度が×。なお、22年度の25歳は今回対象外だが、推計年収は計算し世代間比較に使った。そうしないと25歳は〇と△だけで×の評価がなくなり、真ん中の表において25歳のときの推計年収を含む現在35歳の社員と現在45歳の社員が、それ以外の年齢の人と比べて有利になってしまうため、この補正を加えた。
■真ん中の表の見方:
●「主要企業内ランク(平均)」は、一番上の表の「主要企業内ランク」を色別に集計し、平均値を計算した。例えば、緑(=現在45歳の社員)であれば、22年度の45歳のときの主要企業内ランクと、12年度の35歳のときの主要企業内ランクと、02年度の25歳のときの主要企業内ランクの平均値を出して評価した(一番上の表でD++、D+、Cとなっているように、主要企業内ランクはアルファベットで格付けされているが、この裏側には0~100%の数値がそれぞれある。この平均値を計算し、平均値が0~5%未満はA++、5~10%未満はA+、…、95~100%未満はG+、100%はGと格付けした)。
●「世代間比較(平均)」は、一番上の表の「世代間比較」を色別に集計し(集計の際、〇を1位、△を2位、×を3位と数値化している)、平均値(=平均順位)を計算した。この平均順位が低い順に、◎、〇、△、×、××と評価した。
●「勝ち組度」は、主要企業内ランク(平均)と世代間比較(平均)の双方を加味した総合評価。主要企業内ランク(平均)の裏側にある平均値(=低いほど対象企業の中で順位が高い)の低い順に1~5位を決め、世代間比較(平均)の◎、〇、△、×、××を1位、2位、3位、4位、5位と読み替え、両者を合算。この合算値の低い順に順位を付けた。なお、現在75歳のOBは、評価できるのが02年度の1時点しかないため、順位をブランクとした。
■一番下の表の見方:
●「現在の平均年収」は2022年12月期~23年3月期。「5年前の平均年収」は17年12月期~18年3月期。
●「5年後の予想年収」は、統計専門調査会社おたにの協力を得てダイヤモンド編集部が推計。今回の予想対象の64社を以下の基準でカテゴリー化し、各カテゴリー、経常利益および年齢を用いた重回帰分析によって予測モデルを作成(修正済みR2乗は0.824)。予測において、過去10期分の平均年収と経常利益、IFIS市場コンセンサス予想における5期先までの経常利益を使用。カテゴリー化の基準は、業種・日経平均株価の構成銘柄か否か・本社が「東京都」「神奈川県」のいずれかにあるか否か・平均年収が「上位5%」「上位25%」「下位5%」「下位25%」に属するか否か。

部長・課長の年収や出世事情を
ダイヤモンドの担当記者が徹底取材

『週刊ダイヤモンド』11月25日号の第1特集は「団塊、バブル、氷河期、ゆとり…どの世代が割を食っているのか?役職定年 部長・課長の残酷」です。

 団塊やバブル期世代は悪で、氷河期世代はその犠牲者――。こんな通説がありますが、同じ業界にあっても、会社によってその状況はさまざまです。

 実際のところ、主要企業内で年齢別に年収を比べた場合に、団塊・バブル期・就職氷河期・ゆとり世代のうち、どの世代が金額的に恵まれ、どの世代が割を食っていたか?

 ダイヤモンド編集部が今回、試算対象としたのは、トヨタ自動車やパナソニック ホールディングス、ソニーグループや東京海上ホールディングス、大手商社など主要64社17業種に及びます。

 64社の世代間格差を可視化するため、過去20年間を10年刻みに、5世代の年収と主要企業内ランクを初試算。独自の5年後予測年収を含め計3200項目に及ぶデータで、各社の状況が丸わかりとなりました。

 さらに、NTTやアステラス製薬、キリンホールディングスや日本生命保険、3メガバンクや百貨店、証券会社などに関して、担当記者たちが徹底取材で部長・課長の年収や出世事情を明らかにしています。

 加えて大手企業の人事部長5人が覆面で、ジョブ型雇用によるシビアな降格や、役職定年後の減給の仕掛けなどを暴露する本音トークも展開。

 本特集が、自身の将来を見つめ直したり、考えたりする一助になれば幸いです。