創業当時から重視されてきた舞台
「少年たち」や「滝沢歌舞伎」が有名
ジャニーズ事務所(現SMILE-UP.)のビジネスモデルの大黒柱はコンサートとファンクラブの会費だ。だが、約60年前の創業当時から、重視されてきたものがある。それが舞台だ。
創業者の故ジャニー喜多川がこだわったこともあるが、実は舞台はジャニーズJr.の育成の場でもあるのだ。そして、コンサートほどではないが、チケット売り上げのほかに、グッズ販売も見込める。
舞台の中で、最も歴史が古いのが、「少年たち あの空を見上げて」である。初演は1969年のフォーリーブスにさかのぼる。長くジャニー氏が演出を手掛けてきたが、2021年からは滝沢秀明(現TOBE社長)にバトンが移った。
滝沢秀明の名前を冠した「滝沢歌舞伎」も人気舞台の一つだ。初演は10年で、上半身裸のタレントたちが一斉に太鼓を打ち鳴らす「腹筋太鼓」で知られる。滝沢がジャニーズ事務所を去った後の23年は、Snow Manのメンバーの岩本照が演出を手掛けた。
そして、堂本光一が主演する「Endless SHOCK」も人気舞台の一つだ。00年から毎年上演し、単独主演ミュージカルの上演回数では歴代1位だ。当初はジャニー氏のプロデュースだったが、光一が自ら志願し、プロデューサーに就いた。
近年のジャニーズの主な舞台では、堂本光一と滝沢秀明がプロデュースしたものが、動員数を競ってきた。次ページでは、22年のジャニーズ事務所が実施した主な舞台の動員数を基にチケット売上額を推計した。堂本光一と滝沢秀明のどちらの舞台が上回ったのか。
「Endless SHOCK」が19億円超
「滝沢歌舞伎ZERO」は8億円
早速、チケットの売上額を見ていこう。
昨年に最もチケット売り上げが多かったのが、Endless SHOCKだ。ステージ数は87回に上り、動員人数は14万8000人。推計の売上額は19億4000万円となった。
堂本光一のEndless SHOCKは帝国劇場で開かれる。大阪や福岡などで地方公演も少なくない。公演回数が多いのはこのためだ。2階席も人気だ。理由は、堂本光一がステージ上空を飛び回る、名物の「フライング」があるからだ。
一方、滝沢秀明がプロデュースする「滝沢歌舞伎ZERO」は8億2000万円だった。ただし、ステージ数は53回となり、Endless SHOCKを大きく下回っている。滝沢歌舞伎の東京での会場は、新橋演舞場。1回当たりの売り上げはそこまで多くはない。
滝沢秀明がプロデュースする「JOHNNYS’ IsLAND」の売上額は5億8000万円だった。たくさんのジャニーズJr.のメンバーが出演する同舞台は、ジャニーズ事務所にとって重要だ。滝沢が去った後は、23年には東山紀之、堂本光一、井ノ原快彦の3人が演出を担当した。24年からは、堂本光一がスーパーバイザーとなり、リニューアルされる。
主要な5つの舞台は、年間で253回開かれ、39万5000人を動員。チケットの売上総額は46億8000万円に上った。まさにジャニーズにとっては大きな存在感があるといえる。(敬称略)
巨大帝国のビジネスとカネを徹底解剖
ジャニーズと企業&メディアのなれ合い
『週刊ダイヤモンド』11月18日号の第1特集は『ジャニーズ帝国 最強ビジネスの真実』です。
まずは、ジャニーズ事務所のコンサートとファンクラブ会費という二本柱を持つビジネスモデルと、それが生み出す巨額マネーに着目。年間で500億円にも上るコンサート収入の詳細をグループ別にひもときます。
また、13もの子会社が形成する巨大組織の全容のほか、ジャニーズが保有する不動産の資産価値や賃料収入も独自試算しています。ジャニーズタレント114人が登場する大相関図も掲載しています。
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ジャニーズとメディアに関しては、出版社の「カレンダー利権」の実態を明らかにします。マガジンハウスや講談社、小学館といった大手出版社のジャニーズタレントを起用したカレンダーの推計売上高を公開。また、テレビ番組へのタレントの出演状況を徹底調査し、テレビ局別のジャニーズ依存度を明らかにします。
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