『週刊ダイヤモンド』4月29日・5月6日合併号の第1特集は「シン富裕層」です。新たな志向やビジネスモデルを持ったシン富裕層の台頭や、富裕層全体を取り巻く投資、節税、相続、海外移住などの最新事情に迫りました。(ダイヤモンド編集部副編集長 鈴木崇久)

富裕層が多い世界の都市ランキング
東京が2位にランクイン

 世界で最も多く富裕層がいる都市ランキングで東京が2位に――。

日本で、新しい志向やビジネスモデルを持った「シン富裕層」が台頭してきている。その正体とは?(写真はイメージです) Photo:PIXTA

 国際的な投資・移住コンサルティングを手掛ける英ヘンリー・アンド・パートナーズがまとめた「World’s Wealthiest Cities Report 2023」が4月18日に公表されました。その中で東京(日本)は、ニューヨーク(米国)に次ぐ2位にランクインしました。

 このランキングは、100万ドル(約1億3400万円)以上の投資可能な純資産を持つ「ミリオネア富裕層」の人口数を都市ごとにカウントしたもの。世界9エリアの97都市が対象となっています。

 その結果によると、トップ10は以下の10都市でした。
1位 ニューヨーク:34万人
2位 東京:29万300人
3位 カリフォルニア州ベイエリア(米国):28万5000人
4位 ロンドン(英国):25万8000人
5位 シンガポール(シンガポール):24万100人
6位 ロサンゼルス(米国):20万5400人
7位 香港(中国・特別行政区):12万9500人
8位 北京(中国):12万8200人
9位 上海(中国):12万7200人
10位 シドニー(オーストラリア):12万6900人

 資産10億ドル(約1340億円)以上の「ビリオネア富裕層」に対象を限ると、トップ5は米国と中国の都市が占め、東京は23位まで後退してしまいます。しかし、ミリオネア富裕層の数で見れば東京は、世界で2番目に富裕層が多い都市だということです。

 そんな首都を持つ日本では近年、従来とは一線を画する富裕層が増えてきているといいます。そんな人を「シン富裕層」と呼び、著書『日本のシン富裕層』にまとめたのが、富裕層の海外移住のサポートなどを手掛けるアエルワールドの大森健史代表取締役です。

 そこでここでは、『日本のシン富裕層』と大森氏をはじめとした取材を基に、シン富裕層の“生態”をご紹介したいと思います。なお、『日本のシン富裕層』とはネーミングや分類を少し変更してお届けします。

企業オーナー型

 企業オーナーは昔から定番の富裕層ですが、シン富裕層は志向や価値観が従来とは大きく異なります。

 大森氏によれば、「会社を大きくしたい、もっと稼ぎたいとは思わず、今の収入を維持しながら働く時間を短くしたいという志向が強い」といいます。数千万円くらいの年収を維持しながら、仕事に使う時間を従来の2割くらいまで落としていく。それによって家族との時間を大切にしたり、より自分のモチベーションが湧くビジネスや挑戦に時間を使ったりするそうです。

 また、若い起業家に自分のノウハウを引き継いでビジネスを軌道に乗せてあげる「あしながおじさん」的存在のシン富裕層も散見されるそうです。そして、その起業家たちからアドバイスフィーを受け取っています。

高年収エリート投資型

 医師や一流企業の会社員など、高年収を誇る人々です。やはり定番の富裕層ですが、従来と異なるのは、近年の世界的な金融緩和バブルの波に乗り、高年収を元手に運用で資産を激増させた点です。

 シン富裕層の中には、自宅の購入を「投資」と捉え、売買を繰り返すことで資産を急拡大させた人も目立つといいます。

ノウハウビジネス型

 昔からある情報商材ビジネスの現代版で稼いだシン富裕層です。通信環境の改善やスマートフォンの誕生をはじめとしたデバイスの進化、SNSや販売プラットフォームの浸透などが重なり、少ない元手で効率的に事業を展開することが可能になって台頭してきました。

 投資やせどり(中古品販売)、アフィリエイト、ビジネススキル、動画配信などのノウハウを数万円のレポートにまとめて販売しています。

 ファーストペンギンタイプで、新しいことやリスクが高そうなことにも、面白さやチャンスを感じたら飛び込める人が多いといいます。

YouTuber型

 YouTubeをはじめとした動画配信を起点に財を成したシン富裕層です。前述のノウハウビジネス型が、認知度や信頼性を高めるために「ビジネス系YouTuber」として活躍しているケースもあります。

 また、HIKAKIN(ヒカキン)やフワちゃんのように、YouTuberとして名をはせたことによってテレビで引っ張りだことなり、芸能人化する人も。

 最近は、トップクラスのYouTuberでも動画の広告収入だけでは稼げなくなりつつあるようです。一方で、動画再生回数やチャンネル登録者数などYouTuberとしての実績を買われて、本の著者や売れっ子専門家の道を歩みだす人も増加中です。

暗号資産インベスター型

 投資家(インベスター)としての知識を持ち、ビットコインなどの暗号資産(仮想通貨)の黎明期にまとまった資金を投下。暗号資産の可能性にいち早く気付いた人や、その設計思想に共感した人などが多いです。

 暗号資産は、通常の投資対象より価格が乱高下しますが、それに動じない忍耐力や胆力を持っているそうです。

 高年収エリート投資型の中にも、暗号資産インベスター型の属性を兼ね備える人がいます。

暗号資産ビリーバー型

 同じ暗号資産の「億り人」でも、インベスター型と比べると「ラッキー」な側面が強いシン富裕層です。知人に勧められるなどして暗号資産を購入して、たまたま巨額の資産を手にすることができた人が大半です。

 投資について疎く、暗号資産についてすら詳しくない人も多いといいます。そのため、投資判断を頼るメンター的人物や暗号資産の価値をひたすら信じ込む「ビリーバー(信奉者)」タイプといえます。

 また、「何度も詐欺の被害に遭ってきて、たまたま暗号資産は詐欺ではなかったという人が多い」(富裕層ビジネスを手掛ける事業者)という証言も聞かれました。

 以上の6タイプが、シン富裕層と呼ばれる新たな富裕層像です。みなさんにも心当たりがあるシン富裕層はいたでしょうか?

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『週刊ダイヤモンド』4月29日・5月6日合併号の第1特集「シン富裕層」では、シン富裕層の“生態”だけでなく、富裕層全体の「投資」「節税」「相続」「海外移住」の最新事情をご紹介。「知られざる億万長者の知恵」とともにお届けします。

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