「日本企業の部長の年収はタイより低い」
経産省の衝撃報告書よりも低い本当の実額
「日本企業の部長の年収は、タイよりも低い」──。そんな衝撃的な言葉が記されているのは、経済産業省が2022年5月に公表した報告書「未来人材ビジョン」だ。
報告書によれば、米国やシンガポールの部長の年収は約3000万円、タイは約2000万円に対し、日本の部長は1700万円程度にとどまる。さらに、日本は海外と比べて課長や部長に昇進する年齢も遅いとも指摘し、「雇用・人材育成システムの聖域なき見直しが求められている」などと報告書は提言している。
ただし、経産省が報告書で示した部長の年収は、海外の調査会社のデータを参照したものだ。調査に協力した日本企業は、グローバル展開を進め、海外の給与相場に関心が高い大企業が中心である。
実際の日本企業の部長の年収は、もっと低い。部長と課長の本当の年収は、厚生労働省の「賃金構造基本統計調査(21年)」から導き出すことができる。
年収900万円が日本の部長の現実
3割減も少なくないシニア役職定年の残酷
賃金構造基本統計調査によれば、日本には部長が約90万人、課長が約174万人いる。正社員のうち部長は約28人に1人、課長は約14人に1人となる計算だ。
そして部長の平均年収は900万円、課長は762万円。部長は平社員の平均年収445万円の倍以上もらってはいるものの、年収1000万円にすら届かない。
もちろん大企業に限ると平均年収はアップする。部長は1193万円、課長は935万円、平社員は525万円だ。年齢別で見ると、大企業の50代の部長と平社員の年収差は約600万円で、課長と平社員では340万~380万円の差がつく。出世の有無でこれだけの年収格差が生まれるのだ。
しかし、部長や課長に昇進しても、一定の年齢に達するとポストから外れる「役職定年」が待ち構える。これで転落し、年収が3割減になることも少なくない。
実際、年齢別の役職者の割合のピークは50代前半で、それ以降は平社員の割合が増えていく。
出世・給料・役職定年…シニア社員のリアル
企業非公表の年齢別賃金テーブルも大公開
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