「機関投資家はリスクを負えない。
最後の最後にはみんな一緒に落っこちる」
──澤上さんはマネー経済が危機的状況にあるとして、警鐘を鳴らし続けています。
債券市場も株式市場も崩落する。金融緩和バブルの崩壊は時間の問題です。
そもそもこの40年、先進国を中心に金融を緩和し資金を大量に供給すれば、経済は成長するといわれてきました。リーマンショック、コロナ禍を経て、さらに緩和の深掘りが進められ、その結果どうなったか。実際に経済は良くなったのか、豊かになったのか、一度も検証されていない。おかしいでしょう。まさに金融緩和バブルなのです。
──ただし、澤上さんのように金融緩和バブルが崩壊すると断言するのはごく少数派です。
「大丈夫だ」「心配ない」と言う人たちのほとんどは、このバブルに乗っちゃっている。実は、運用のプロである機関投資家もそうなんです。
彼らは、マーケットトレンドを追い掛けようとする。短期運用が主体になってきているからですが、理由はそれだけではありません。
そもそも年金など機関投資家というのは、自分の投資判断で上昇相場から降りようとはしません。上昇トレンドが続く中で自ら降りたら、ライバルに投資成績で負けるだけ。自分が首になるリスクもある。そんなリスクは負えないから、最後の最後までトレンドに付いていく。
音楽が鳴っている間は踊り続けなきゃいけない。だからこそ、バブルじゃない、崩れるわけがないと思いたい。現に居心地はいいし、現状が変わってほしくない。そして最後の最後には、みんな一緒に落っこちてしまう。米国のブラックマンデーのときも日本のバブル崩壊のときもそうでした。
みんなが一緒であれば、機関投資家の運用は結構、楽なんですよ。なぜなら、どうしようもありませんでした、不可抗力でしたと言いさえすればいいのだから。無責任極まりない。
世界の運用業界は、1970年代前半まではもっとまともなものでした。その頃から運用に携わっている私から見ると、異常な事態がどんどん進んでいる。歴史の生き証人として、おかしい、おかしいと言い続けてきたわけです。投資運用はマーケットを追い掛けるものではなく、将来価値を先取りしていくもの。それを忘れてはいけません。
マネー膨張が進めば進むほど、経済合理性がどこかで必ず働きだす。これは当たり前の道理です。
「お金をこれだけ大量に供給すれば
当然その価値は下がり、インフレが来る」
お金をばらまくことによって、金利がどんどん下がり、株価は上がりと、居心地のいい状態が続いてきた。それが逆回転を始めようとしているのです。
──供給が過剰になれば、当然、その価値が下がるものだと。
お金を大量に供給すれば、お金の価値はどんどん下がっていく。お金の価値が下がれば、モノの値段は上がる。インフレが来る。そうしたごく当たり前のことが、ここへ来てようやく実感を伴ってきました。
コストプッシュによるインフレに皆目が行くけれども、根っこにはお金のばらまきによる価値下落があります。
国際金融協会というところが政府、金融機関、企業、個人を含めた世界の債務残を発表しています。これが今、世界経済のGDP(国内総生産)の3.5倍強。10年前は2.5倍でしたから、先進国が金融緩和競争を演じたこの10年で、地球1個分のGDPに相当する債務が膨らんでいることになります。
今や先進国のほとんどがゼロ金利を脱し、金利が上がってくる中で、ゼロ金利下でも利回りを稼げるよう作られた金融商品がガタガタになるでしょう。
「投資」「年金」「保険」「住宅ローン」…
お金の不安を解消するための必須ノウハウ
『週刊ダイヤモンド』1月28日号の第一特集は『「お金」入門』です。
経済は動乱期に入りました。ただし、目の前の相場乱高下に不安に駆られ、うろたえてはいけません。今必要なのは先を見据え、起こり得る経済リスクとその構図を理解し、守りをきちんと固めることです。
この先、一体何が起こるのでしょうか。物価上昇、金利上昇、円安、日本銀行の金融政策、米国経済と中国経済の減速…、日本が抱え込むこうした経済リスクの今後の行方は? 5年先を見据えて名だたる専門家たちが、まず予想します。これまでの「当たり前」が揺らぎ、新たに生まれた構図をしっかりと見定める必要があります。
経済リスクを押さえた後は、備えを万全にしましょう。「住宅ローン」「年金」「投資」「保険」…。後悔しないため、少しでも得をするための必須ノウハウを身に付けなければいけません。
固定金利の上昇に不安が広がる「住宅ローン」については、借り換えや金利についての必須知識を押さえておきましょう。将来の生活を支える柱「公的年金」については、今後の制度改革で年金額はどうなるかを見据え、少しでも年金を増やす最新ノウハウで立ち向かう必要があります。「株式投資」でお金を増やすために、個人投資家ならではの武器のパワーを体得することも大事になります。
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