『週刊ダイヤモンド』1月8日号の第1特集は「ゼネコン・不動産 地縁・血縁・腐れ縁の終わり」です。ゼネコンは長い時間をかけて、施主企業と地縁や血縁、創業家人脈などさまざまなつながりから信頼関係を築き、受注へとつなげてきました。しかし現代のビジネスは、「縁」で全てが決まるほど甘いものではありません。顧客争奪戦の知られざる実態を明らかにします。

ポーラ美術館も銀座ビルも
竹中が施工した

創業家である鈴木家が君臨する化粧品大手のポーラ・オルビスホールディングス(HD)では、竹中工務店の施工実績が目立つ(写真は箱根のポーラ美術館) Photo:PIXTA

 創業家である鈴木家が君臨する化粧品大手のポーラ・オルビスホールディングス(HD)では、竹中工務店の施工実績が目立つ。

 具体的には、前身時代からの建築物を含めると、東京・五反田ビル(1971年竣工)、静岡・袋井工場(77年竣工)、神奈川・ポーラ美術館(2002年竣工)、東京・銀座ビル(09年竣工)などがある。

 2代目社長の鈴木常司氏(故人)が「竹中工務店は完成度が高く、気に入っていた」(ポーラ・オルビスHD関係者)といい、こだわりの強い建物に関しては創業家の意向がゼネコン選定に強く影響してきたとみられる。

 竹中工務店の竹中統一社長(当時、現名誉会長)はポーラ側の求めに応じてポーラ美術振興財団の理事を96~10年に引き受けるほど、懐に入り込んでいた。

 しかし、創業家のお気に入りという効力を今はもう失った。

株式上場の頃から
コンペ実施を徹底

 前出の関係者によると、ポーラ・オルビスHDは少なくとも10年の株式上場の頃からゼネコン選びでコンペの実施を徹底するようになった。投資家への説明責任、公平性・透明性確保のためだ。

 初めのうちはこれまでの関係性がある竹中工務店にコンペを勝ち抜くヒントを与えたこともあったというが、それでも竹中工務店はコンペを勝ち抜けず、「当時の竹中の営業担当者は飛ばされたらしい」と前出の関係者は言う。実際、最近の建築案件は清水建設、鹿島、東急建設などが受注している。

 業種や個別企業によって、発注先の選定における縁の重み付けは異なる。

 ただ総じて、施主が上場したり、企業規模が大きくなったりすると、オーナーや創業家の独断で発注先を決められない仕組みが採られ、競争入札を重視する傾向が強まる。

 施主企業自身、時代の変化と市場での熾烈な競争の中で生き残らなければならない。しかるに、ゼネコンを「縁」だけで受け入れてはいられない。ただの腐れ縁であれば断ち切って、「技術」や「カネ」などでの優位性を求めて当然となる。

 つまりは、自社にメリットをもたらす縁なのか、優れた技術が提供されるのか、価格競争力はあるのか、といったことをシビアに評価するわけだ。

 関係性の変化はゼネコンにとって、お得意先が離れるピンチになる。と同時に、ライバルのお得意先を奪うチャンスにもなる。

縄張りと争奪
受注競争の最前線

 『週刊ダイヤモンド』1月8日号の第1特集は「ゼネコン・不動産 地縁・血縁・腐れ縁の終わり」です。

 ゼネコンが従来のビジネスに限界を感じる中、お得意先との取引関係にも限界が訪れています。かつては地縁や血縁、銀行や財閥の系列などで縄張りがつくられてきました。しかし今、それを飛び越えるかたちで案件ひいては顧客の熾烈な奪い合いが繰り広げられています。

 本特集では、重要業界における施主企業とゼネコンの最新関係図をまとめ、受注競争の最前線に迫りました。

 焦点を当てた業界は、
▼自動車
▼電機
▼製薬
▼金融
▼鉄道
▼電力・ガス
▼新聞・テレビ
など。

 このほか「ゼネコン経営」「地方建設」「不動産売買と賃貸」の最前線をレポート。第2特集では、人・物・金でさまざまな問題が浮上している「戸建てバブル」の裏側を追いました。

(ダイヤモンド編集部・松野友美、岡田 悟、土本匡孝、大根田康介、臼井真粧美)