人が来ないし
創れない!
スポーツとエンタメは、最もコロナに弱いビジネスといえる。
ほとんどのジャンルで「多くの観客が来ること=密」を前提としているからだ。また、観客だけでなく競技や演技、制作にも多数のプレーヤー、関係者が必要となる。だからコロナに弱い。
しかも、間が悪いことに、この10年はより一層、人を呼ぶことにまい進してきた。
例えば、プロ野球では「ボールパーク構想」と銘打ち、観客動員数や球場での消費を伸ばしていた。Jリーグも同様だ。そして、音楽業界はCDではなくライブでもうける構造に変化していたのだ。
そこにコロナが直撃したわけだ。
緊急事態宣言で試合が延期となったプロ野球とJリーグは全チームが赤字の見通しで、債務超過の可能性すらある。また、映画館には前年比5%の客しか来ていない。
さらに、「作れない」問題も深刻だ。アニメは制作がストップして100本以上が公開延期。密接した演技が魅力だった宝塚や小劇場の関係者は頭を悩ませ、映画の撮影も進まない。
世界の経済を語る上で最重要人物である米連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長。アイスホッケーのファンでもある同議長は会見で「公衆を集めるスポーツイベントやコンサートなどが元に戻るのは最後だろう」と述べている。
実際、日本の現状は厳しい。緊急事態宣言が明けた現在は、試合こそ開催できるものの、プロ野球とJリーグは1試合5000人に観客を限定。映画館では50%に観客席を間引いている。そのように制限しても、満席にならないことが多い。
仮に満席になったとしても、50%の制限を前提とした収支の構造ではない。今の状況があと数カ月続けば、スポーツやエンタメ業界は壊滅的な状況になるだろう。廃業や生活苦の大きな波が襲いかかってくるのは確実だ。
実は先祖帰りしていた?ビジネスモデル
歴史を振り返れば、黎明期では、スポーツもエンタメも、人を集めることで成立していた。
そこから、ラジオやテレビ、CDなど新しいツールを活用して多くの人に届け、効率的にもうける仕組みに進化してきた。さらに、それに限界を感じると前述したようにこの10年は「人を集めるモデル」に注力している。いわば先祖返りだ。
今の状況を脱するには、新しい収益源を拡大することが急務だ。スポーツとエンタメは再び、モデルチェンジができるのだろうか。
スポーツ&エンタメ業界の
苦境を総力取材
週刊ダイヤモンド8月22日号の第一特集は「エンタメ&スポーツ消滅」です。
プロ野球、Jリーグ、音楽、フェス、アニメ、映画、演劇、宝塚、美術館、動物園、水族館、オーケストラの苦しい状況を総力取材しました。多くは、上場している大企業のような体力がなく、いまや存続は風前の灯火です。
一方で、数は少ないですが、同じエンタメでもゲームや漫画のように巣ごもり消費にうまく乗っているプレイヤーもいます。
日本のエンタメとスポーツはどうなるのか。ぜひ、ご一読ください。