コロナ禍で
「失業の危機」に瀕した医者たち
高収入で社会的地位が高い。どんな不況にも強く、決して食いっぱぐれることはないーー。
バブル崩壊以降、これを満たしてきた職業は、医者しかないといっても過言ではない。
文系の最強資格だった弁護士、公認会計士は、食えない者も登場し、ワーキングプアと揶揄される寸前まできている。他の理系の職といっても、日本の製造業の未来は決して明るくなく、一生を捧げる仕事としては心もとない。
このようなマインドが、ここ数十年の医学部受験を過熱させ、1980年から2017年の間に、医学部の平均偏差値は、10近く上昇し、いまや十数倍という倍率を勝ち抜かなければ、医師への道は開けないほどだ。
それだけ苦労して医者になった先には何が待っているのか。
確かに他職種に比べて医者の給料は高く、女性でも30代になれば平均給与が1000万円を超えてくる。
60歳を超えても、年収はそれほど下がらず、人生100年時代を見据えれば、長く働けるという面でも、医者は魅力的だ。
しかし、今回の新型コロナウイルスの感染拡大で、実際に患者の対応に当たった医者たちは、ほとんどが危険手当ももらえずに、最前線に立たされ続けた。
世間は「医療従事者のみなさんありがとうございます」と表向きでは口にしつつ、子どもを保育園などに預けようとすると断られるなど、家族も差別にさらされた。もともと、働き方改革が最も進んでいない業界であり、時間外労働も常態化している。
そして、コロナ禍における最大の受難、それは「失業の危機に瀕した医者が少なからずいた」という事実である。
医者の中にも、「不要不急」はあり、他の職業と同じように市場から淘汰される危険があるなんて、彼ら自身が一番想像していなかったのではないだろうか。
コロナ危機も収束に向かいつつあった5月末、医療従事者への賞賛と感謝を込めた、ブルーインパルス(航空自衛隊のアクロバット飛行チーム)のパフォーマンスを見て、医者たちの胸に去来したものは、達成感か、それともコロナ禍で浮き彫りになった、不透明な未来への漠然とした不安かーー。
この未曾有のパンデミックの中、医療界で起きた真実をひもときながら、医者という職業の最新事情、そして医学部受験の趨勢に改めて迫ってみる。
アフターコロナの
医者・医療業界の激変を占う
『週刊ダイヤモンド』6月27日号の第一特集は「高ステータス、高収入でいられるか? 医者・医学部 最新序列」です。必死のコロナ討伐の裏で、開業医の経営危機、コロナ受け入れ病院の大赤字、医者の高額バイト急減等々、日本の医者と医療制度が初めて直面する前代未聞の生活不安を取材しました。
また、アフターコロナでは、これまで高収入、花形だった診療科も安泰ではいられない“診療科ピラミッド激変”の可能性があります。そこで今回、3300人の医者を対象に大規模アンケートを実施。コロナの影響、必要な診療科、生き残れない診療科……、最強資格と言われてきた医者の20年後も大胆に予想しました。
さらに、昨今“働き方改革と縁遠いブラック職場”ぶりが露呈していることから志願者が減少し入りやすくなっていると言われる医学部受験や、医師国家試験に強い大学についても取材しています。なかでも、入りやすい割には大学医学部に合格者数の多い中高一貫校リストや、大学医学部の本当の国家試験合格率は必見です。
コロナで注目度が一気に高まった医者や医療業界の激変を占う一冊。ぜひご一読ください。