整骨院って気軽に保険で
マッサージを受けたらダメなの?
慢性的な腰痛に悩む清原亮輔さん(仮名・40歳)はある日、健康保険組合から通知を受け取った。マッサージ目的で頻繁に通っていた整骨院の施術に対する保険適用を問題視する内容だ。
「え? 整骨院って保険でマッサージを受けたらダメなの?」
結論から言うと、慢性的な腰痛のマッサージために保険適用を受けるのはアウトだ。整骨院で保険が適用される範囲は、骨折や脱臼などのけがに限られる。
ところが、実際には清原さんのような整骨院での保険を使ったマッサージは日常茶飯事で、保険の「不適切利用」として問題になっている。この他、負傷名などが何も書かれていない保険支給申請書にサインさせる「白紙委任」や、保険対象外の施術を続けるために、施術部位を転々と変えて保険請求する「部位転がし」など、整骨院は不正の温床のような業界だ。
実態がルールと懸け離れているのは、そうしなければ整骨院の経営がもはや成り立たなくないからだ。この“裏側”を理解しないと、あなたも知らぬ間に「不正」の共犯になりかねない。
整形外科からは「無駄な医療費増大につながる」
糾弾される整骨院の「不正請求」
今、多くの国民が腰痛、肩こり、膝・関節痛に悩んでいる。日本では腰痛だけでも年間の経済損失は3兆円に上る。そして、米国では強力な鎮痛剤「オピイオイド」中毒が蔓延し、トランプ大統領が非常事態宣言をしたほどだ。
日本にとって「痛み」は、早急に解消すべき課題だが、国民を巻き込んだ対立構造が起こるなど、状況は混沌としている。
例えば、整骨院の「不正請求」は、整形外科から「無駄な医療費増大につながる」と糾弾され、両者は激しく対立する。しかし、慢性痛を抱える国民としては「整骨院で手軽に安く保険でマッサージを受けたい」というのも本音だろう。
この対立構造に業界の抵抗や政治の介入、行政の不作為も加わって事態は混迷を極めている。片や、インターネットには、「痛み」にまつわる信ぴょう性の低い情報や怪しい広告がはびこっている。そんな状況で、痛みを解消し、よりよく生きるためには、正しい情報を知ることが大切だ。
腰痛・膝痛・肩痛、正しい治療とは何か?
『週刊ダイヤモンド』11月16日号の第1特集は「腰痛・膝痛・肩痛 医師が教える治療法 整骨院の裏側」です。健康情報の氾濫により、何を信じていいかわからない読者のために、腰痛・膝痛・肩痛を解決するための術を、信頼できる医師に聞いています。
パート1の「接骨、鍼灸、あん摩マッサージ指圧の深い闇」では、これまでタブー視されていたと言って過言ではない「不正」の実態に踏み込み、整体院業界の裏側にあるものを、当事者への取材、証言を元に明らかにしています。
整骨院業界は、不正のあまりの多さ、収益の構造、歴史的経緯など、驚くような話ばかりです。また、業者、政治家、行政など様々な思惑が絡み合っています。不正に巻き込まれないためにも、ユーザーもその裏側を知っておくことが必要です。医師側から整骨院業界への警告も紹介しています。
パート2の「自宅でできる!痛み治療の新常識」では、薬や手術に頼る前に、自宅でできる医師が考案した慢性痛の改善策を紹介。腰痛体操は「1回3秒 1日2回」など、どれも手軽で楽チン、すぐにできるものです。日常生活の改善、ストレッチを中心とした運動で痛みが改善するケースは多い、と今回話を聞いた医師たちは口を揃えます。あなたの痛みを解決するヒントが見つかるはずです。
パート3の「腰痛・膝痛・肩痛 医師が教える最新治療・手術」では、痛み治療を行う整形外科で行われている最新の治療法を取材しました。ポイントは、患者の体に負担が少ない、「低侵襲」の手術法、治療が進化しているということです。わざわざ、古い知識をもとに負担の大きい古い方法での治療を選ぶ必要はありません。そのために最新情報を知っておくことが重要です。
(ダイヤモンド編集部 山出暁子)