全ての働く人の必須教養!
簿記知識不要の決算書読解術
「働く人が“財務をまったく分からない”というのは、プロサッカー選手がサッカーのルールを知らないのと同じ」
ミクシィの社長として同社を再生し、『ファイナンス思考』などの著作もある朝倉祐介氏は断言する。
「だから、『私はデザイナーなので関係ない』とか、『僕は技術系だから知らなくていい』ということもあり得ない。財務の理解は、全ての働く人の必須教養。義務教育で教えてもいいくらい」と続ける。
週刊ダイヤモンドが日本を代表する企業に行ったアンケートでは衝撃の結果が出ている(回答企業などは特集参照)。
各社に、課長という役職に理解していてほしい財務知識のレベルを聞いたところ、24%の企業が「財務3表」と答えた。41%がさらに高度な「ROE(自己資本利益率)やROA(総資産利益率)」と答えているが、設問ではこの回答を選ぶ場合は財務3表の理解を前提とした。
そして、27%が最も高度な「ファイナンスの概念や投資の評価方法」と答えている。この回答も、財務3表とROEやROAの理解を前提とした。言い換えれば92%の企業が課長には最低でも財務3表を理解してほしいと考えているのだ。
しかも、部長、役員と職位が上がるにつれ、求められる知識のレベルはさらに高くなっている。例えば、役員なら84%の企業が「ファイナンスの概念や投資の評価方法」を理解してほしいと答えている。出世したければ、財務の知識の習得は必須なのだ。
なぜ、朝倉氏は冒頭のように強調し、企業は社員に財務の能力を求めるのか。
かつて、日本経済が右肩上がりに成長していた時代には、企業は売上高がどれだけ増えたかという、“量”を気にしていればよかった。利益は結果として後から付いてきていた。
しかし、日本経済が停滞すると、無駄のない財務体質が優先されるようになった。さらに、近年は投資家の目は厳しくなるばかりで、売上高の拡大よりも、利益とその中身、効率性など、“質”が重視されるようになっているのだ。
こうした流れに現場の社員も無縁ではいられない。
会社側が売上高ではなく、利益の改善を求めているのに、安売りをして営業成績を上げようとしては、まったく評価されないだろう。
昨今では、ROEを各事業部に数値目標として課す企業もあるから、財務が分からないということは、自分に何を求められているのかが分からないのと同じなのだ。
しかし、「必要なのは分かっている……でも、これまでに何度か挑戦して挫折したからなあ」と尻込みする人もいるかもしれない。
それはやり方が間違っていた可能性がかなり高い。
会計の理解に関する書籍やインターネットの情報では、資格の一つである「簿記」のルールに従っているものが多い。その結果、難解な表現が至る所で目に付いてしまう。
しかし、多くの人にとって経理部に配属されない限りは、財務3表を「作る」能力は必要なく、基本的な「読解」さえできればいいのだ。そこで、特集Part1では財務3表読解のために必要なスキルを、簿記の知識や難しい数式などなしに、楽チンに身に付けられる構成にした。
また、Part2ではPart1で身に付けた読解術を補強すべく、実際の企業の決算書を基に、そこに隠された経営者の意図、企業のドラマを紹介していく。読み進めれば自然と、財務3表の読解力が強化されるようになっている。
ぜひ、気負わずに楽しく読み進めてほしい。
33業種100社以上の実例
新たに「キレのある業界図鑑」も
『週刊ダイヤモンド』2018年8月11・18日合併特大号の第一特集は「2018年版 決算書100本ノック!」。大好評だった昨年版とコンセプトだけは同じですが、内容は大幅に刷新・増強されています。
簿記の知識や難しい数式の暗記が不要で楽チンに財務三表を理解できるという基本設計はそのままに、33業種100社以上の企業の実例は最新版となっています。そして新たに、退屈ではないキレのある業界図鑑も設置しました。
・米中貿易戦争激化でトヨタに1.4兆円の打撃
・赤字でも広告やAIに巨費を投下するメルカリ、LINEの脱「PL脳」
・資産は「重たいソニー、軽いパナソニック」に逆転していた
・野村ホールディングスの社長後継レースを決算書から占う
・生き残るのはどこだ?銀行107行の強弱マップ
・東京電力が批判を浴びても原発再稼働目指す理由は財務からわかる
・財務健全な大手マンション7社の寡占で新築価格は下がらない
・タケダの7兆円巨額買収で学ぶ英語決算書の紐解き方
などなど実例は豊富です(詳細は下の中吊り広告画像参照)。
決算書に隠された企業のドラマを読めば自然と易しく財務読解術が身につく、100本ノックをぜひ、受け取ってください。
【特集の発売に合わせて過去の財務特集の人気記事や漫画などが無料で読める特設サイトも設置いたします(公開は8月6日から)。2週間、毎日記事をアップしていきます。特集と併せてお楽しみください】