『週刊ダイヤモンド』1月27日の第1特集は、「廃業or承継 大量廃業時代の最終決断」です。団塊世代の大量引退時期が迫り、大廃業時代の足音が聞こえている。廃業するか、事業承継を検討するか──。オーナー経営者が大事に育ててきた会社の“最終決断”をどう下すべきなのか。10年後のゴールを目指して、「会社の畳み方・譲り方」を検討してほしい。

 大廃業時代が足音を立てて迫っている。

 経済産業省が衝撃的なシナリオを提示した。日本の企業の3社に1社、127万社が2025年に廃業危機を迎えるというものだ。このまま廃業問題を放置すると、雇用650万人、GDP22兆円が消失してしまうという。

 東京商工リサーチによれば、廃業する企業の約半数が経常黒字なのだという。優良企業が大量に退出してゆく姿は異様にも映る。事業がジリ貧になっているわけではなく、後を受け継ぐ者がいないため、仕方なく廃業を選ぶ経営者が増えているのだ。

 実際に、惜しまれて廃業を決めた中小企業の経営者は少なくない。 

 以下の図は、すでに廃業した企業、あるいは廃業を決めた企業をまとめた「絶滅危惧企業リスト」ともいえるものだ。

 岡野工業が製造する注射針は、赤ちゃんや糖尿病患者のインスリン注射などにも使われる「痛くない注射針」だ。品質管理に厳しい大手自動車メーカー向けの部品も製造するなど、世界に誇る技術を持つ企業だが、後継者がおらず廃業の道を選んだ。

 作り続けて82年。羽衣文具が製造するチョークは「世界一書きやすい」という評判だった。だが、需要が低迷した上、後継者問題も持ち上がり、会社を畳んだ。興味深いのがこの先で、羽衣文具の製造技術・ノウハウは海を渡って韓国企業に買収された。

 廃業予備軍には歴史の長い老舗企業や、日本の工芸品を手掛ける伝統企業が多く含まれているのも特徴だ。企業名はさほど知られていなくても、日本にはオンリーワンの技術・サービスを誇る中小企業が多く埋もれている。独自色を持つ中小企業の集積が、日本の産業を支えてきたとも言える。

 環境変化に応じて企業に新陳代謝が必要なのは言うまでもないが、将来有望な〝お宝企業〟が次々と消えてゆく事態は見過ごせない。

 大量廃業問題は、マクロ経済に負のインパクトを与えるのみならず、日本の産業基盤を劣化させる元凶にもなりうるのだ。

 

昨年末に税制抜本改正! ハードルが下がった事業承継

『週刊ダイヤモンド』1月27日号の第1特集は、「廃業or承継 大量廃業時代の最終決断」です。

 6割以上の経営者が70歳を越え、半数の企業で後継者不在──。日本の中小企業が、一斉に世代交代の時期を迎えています。

 会社を畳んで廃業すべきなのか、(家族・親族、従業員、第三者へ)事業を承継すべきなのか。オーナー経営者のあなたは、事業承継の「出口戦略」を検討するときにきていると言えるでしょう。

 子供のように大事に育ててきた会社の“最終決断”を下すことはそう簡単なことではありません。

 業績不振に陥っていたり、周囲に後を継がせたい候補者がいなかったり、思い悩んでいる経営者も多いと思います。

 それでも、ここではあえて「諦めないで!」と強調しておきたいと思います。

 近年、事業承継のハードルが格段に下がってきています。昨年末、承継税制が抜本的に改正されたことで、贈与税・相続税の支払い負担がゼロになるなど、スムースな承継を後押しするメニューが多数用意されました。

 また、承継マーケットの活性化により、企業の売り買いの機会が増えました。特集では、業績不振の企業でも買い手が群がる「意外なチャームポイント」についてまとめています。

 出口戦略の選択肢として、「第三者への承継(M&A:合併・買収)」の道も加えてみるのも一計でしょう。

 大事な会社に「最終決断」を下す判断材料として、本特集を使っていただきたいと思います。