現会長は森トラスト会長の森章氏。相談役にはキッコーマン取締役名誉会長の茂木友三郎氏、JR東海代表取締役名誉会長の葛西敬之氏、国分グループ本社会長兼CEOの國分勘兵衛氏ら、保守派経営者が居並ぶ。
国策研究会の役員には、他にも多くの企業経営者が名を連ねる。今年9月1日時点で14人の理事、13人の評議員、44人の幹事などがおり、定期的に懇談会を開いている。
懇談会における過去の講演者も豪華で、調べてみると、安倍氏をはじめ、元自民党幹事長の石破茂氏、第36代自衛艦隊司令官(海将)でジャパンマリンユナイテッド顧問の香田洋二氏、民間人初の防衛相となった拓殖大学総長の森本敏氏ら保守派の論客が勢ぞろいしていた。
国策研究会がこうした保守人脈の交流の場となっており、財界における保守勢力の維持・拡大の舞台装置として機能してきたわけである。
保守系の財界クラブとなっている団体は他にもある。例えば、旧陸軍出身者の経済クラブである「同台経済懇話会」がそれだ。
旧陸軍の士官学校および経理学校、幼年学校、そして防衛大学校を卒業して企業や団体、官庁など経済界で活躍している有志のために、大手企業の財界人が中心になって75年に設立された。
同台経済懇話会の講師役にも
歴代首相や財界の重鎮がずらり
初代の代表幹事は元大本営参謀の瀬島龍三氏。創設の趣旨では、「命を懸けて君国のために報じたエリートの集団としての伝統を引き継ぐ」とうたっており、かつて国家を率いたプライドがにじむ。
創立総会では、元首相の福田赳夫氏が特別講演しており、以後、岸氏、中曽根康弘氏、海部俊樹氏、宮沢喜一氏、羽田孜氏、鳩山由紀夫氏ら多くの首相経験者が講師を務めてきた。
財界との交流も図られ、松下幸之助氏(松下電器産業)、本田宗一郎氏(ホンダ)、盛田昭夫氏(ソニー)、堀田庄三氏(住友銀行)、小山五郎氏(三井銀行)、江戸英雄氏(三井不動産)、稲盛和夫氏(京セラ)など名だたる財界人が過去に講師を務めた。
日本の右傾化が指摘される中、最近は積極的に発言、行動する右派団体が増えている。一方で、財界人が多く所属する保守系団体が表に出ることはほとんどない。むしろ指導層と結び付きながら、国益のために水面下で行動する傾向が強いといえる。
『週刊ダイヤモンド』11月18日号の第1特集は「右派×左派 ねじれで読み解く企業・経済・政治・大学」です。右派と左派。そう聞けば自分とは関係ない世界の話だと思う人が多いでしょう。ただ、現在の日本をこの両極から読み解くと、これまでとは異なる社会、経済、政治の断面を見ることができます。
すでに壊れた冷戦構造の残滓であるイデオロギーから現代を読み解くことを無意味と断じる向きもありますが、私はそうは思いません。日本では今、右派と左派のねじれが顕著で、そうしたねじれがあるところにこそ、社会の矛盾が凝縮されるからです。本特集では企業・経営者の保守人脈から「自称リベラル」の真実まで、左右にまつわる事象を硬軟織り交ぜてお届けします。