『週刊ダイヤモンド』10月7日号の第1特集は「これなら続けられる!『独学力』」です。勉強してキャリアアップに役立てたい。そう思っていても、いざ勉強するとなると、何から始めたらいいかわからないし、忙しくて続けられそうにない。そんな人にぴったりなのが「独学」です。いつでも、どこでも、自分のペースで勉強できる独学の魅力とノウハウをまとめました。

 独学には、人生を変える力がある。

 実際に、独学を極めることで人生が変わったのが、アイドルグループのももいろクローバーZの楽曲など、ヒット曲を連発している音楽クリエーターのヒャダイン氏だ。彼はどのようにして作曲を独学で学んだのか。

──音楽との関わりはいつからですか。

 3歳から習っていたピアノが好きで、毎日練習のほかにファミコンの音楽などを好き勝手に弾いていました。それもあって音楽は得意だったのですが、6年生のときに挫折を経験します。

 僕がパート譜を書いて同級生たちに渡し、合奏することになったんです。でも、みんな全然真剣に練習してくれなくて、思ったような合奏にならなかった。「好きな音楽をやるには人を説得してまとめるとか、社交術が必要なんだ。ウゼえ」(笑)と、暗たんたる気持ちになりました。

 シンセサイザーなら一人で全ての楽器ができると知って、中学に入るとたまっていたお小遣いで、小室哲哉プロデュースのオール・イン・ワンのシンセサイザーを買いました。当時はネットもなく、分かりやすい説明書もない。でも、毎日いじって曲を打ち込んでいたら、つまずきながらも1年くらいで自分のしたいことがほとんどできるようになりました。

──どんな曲を?

 TMネットワークやaccessというバンドのフルスコア(合奏・重奏における全てのパートがまとめて書かれている楽譜)を買って、ベース、ドラムなど各パートを1小節ずつ、全部手打ちしました。音楽は「レイヤー」でできているのだと体感として理解できた。

 途方もない作業でしたが、楽器ごとの役割や、どの楽器をどう使えばイメージ通りの効果が得られるのかも分かってきました。テレビの生演奏と比べて、この部分のギターはアコースティックでないと駄目だとか、生で聞くとこうだけど、譜面はこうなのねとか、発見だらけでした。

──仲間とバンドを組もうと思ったことは?

 全然(笑)。人と一緒に音楽をやるのはとても大変です。同じ傾向の音楽が好きな、同じ技術レベルの人を探し、その上、その人たちと友好的な関係を築かなければならない。当時はそうした音楽以外の努力は全部「ノイズ」だと断じていました。本当に生意気でしたね(笑)。

 人と音楽を創る楽しさを知ったのは、28歳でプロとして生計を立てられるようになってからです。ただ、ひたすら一人でトライ・アンド・エラーを繰り返したおかげで、音楽作りの基礎ができた。うまくできずイライラすることもありましたが、自分で失敗して得た知識は忘れないんですよ。

 プロの作曲家を目指したヒャダイン氏は、しばらくは売れずに苦しむが、ニコニコ動画への投稿をきっかけにブレイクする。インタビューの続きは、特集本編で。

脳科学で実証 実は、脳は勉強好きだった!

 もういい年だから勉強なんて無理──。勉強を始める前から「できない理由」ばかり挙げて言い訳する人がいる。しかし、脳科学の進歩によって、これは真っ赤なウソであることが分かってきた。

「人間の脳は、努力すれば何歳からでも成長する」。東北大学加齢医学研究所教授で脳医学者の瀧靖之氏は、そう断言する。「知りたい」「学びたい」「達成したい」といった意識を常に持っている人は、脳の機能が保たれることが明らかになっている。

 つまり、脳が衰えるから勉強ができないというのはウソで、勉強をしないと脳が衰えるというのがホントなのである。

 ほかにも脳に関する常識のウソがある。「脳の力は生まれつきで変えることはできない」というのもその一つだ。人間の脳は後ろ(後頭葉)から前(前頭葉)の方に向かって成長とともに発達する。子どものころに発達する後ろの方は、視覚、聴覚、運動能力などをつかさどっており、遺伝的な影響が8~9割も出てくる。

 一方、考える力や判断力、コミュニケーション力など大人になって発達する脳の前の方は、遺伝の影響は50%程度に限られており、「50%は環境や意欲によって後天的に決まってくる」(瀧教授)。

 もう一つ、脳についての意外な真実が「脳は、実は勉強好き」というものだ。

 われわれは普段勉強するとき、「させられている」と感じることが多い。しかし、「脳はそもそも、やる気に満ちている器官で、生まれた直後から新しい情報や知識を求めており、大人になってもその性質は変わらない」と瀧教授は指摘する。

 こうした脳の新常識から導き出される結論は、「脳はそもそも勉強好きなので、人は何歳からでも勉強することが可能であり、勉強することによって脳は成長する」ということだ。

 つまり、大人になってからの勉強は良いことずくめで、始めない手はないということになる。

 理屈では勉強した方がいいことは分かっている。でも、なかなか取り掛かることができない。そんな人におすすめなのが、脳の性質を利用した勉強法だ。特集本編では、独学を始めるハードルを下げる八つの作法を紹介している。

独学はキャリアアップの最強の武器

『週刊ダイヤモンド』10月7日号の第1特集は「これなら続けられる!『独学力』」です。

 今や、いくつになっても勉強が必要な時代になりました。フィンテックやIoTなど、もの凄いスピードで技術革新が進んでおり、もはや「昔取ったきねづか」にすがって生きていくことはできません。

 好むと好まざるとにかかわらず、われわれは新しい知識や技術を身に付ける必要性に迫られているのです。

 今さら勉強といわれても、大学卒業以来、まともに勉強したことがないという人も多いでしょう。そんな人におすすめなのが「独学」です。

 独学と聞くと、意志が強くないとできないと思いがちですが、高校・大学を独学で過ごし、現在は東京大学大学院で教鞭を執る柳川範之教授は、自身の経験から「誰でも意志は弱い。意志が弱くても独学はできる」と諭します。

 特集では、どうすれば勉強を習慣づけることができるのか、その具体的ノウハウを紹介するとともに、独学のテーマとして、ビジネスに役立つ6つの必須教養(宗教&哲学、世界史、英語、国語、理科、数学)も紹介しています。

 これら必須教養は、豪華講師陣がわかりやすく解説・監修してくれました。宗教&哲学は社会学者の橋爪大三郎氏、世界史はライフネット生命保険創業者の出口治明氏が、学びのポイントをわかりやすく解説しながら、われわれを学びへと誘ってくれます。

 英語と国語は、カリスマ講師として有名な関正生氏と出口汪氏が、目から鱗が落ちる問題の解法を教えてくれます。

「三日坊主でも、それを毎年繰り返せば10年で1カ月分勉強したことになる。何もやらなかった場合とは天と地の差がある」(柳川教授)

 もっと気軽に、独学を始めてみませんか。