『週刊ダイヤモンド』7月23日号の第1特集は「今こそ!『嫌われる勇気』〜初めてのアドラー心理学」。1900年代初頭、アルフレッド・アドラーが創始した「個人心理学」(いわゆるアドラー心理学)が、100年の時を超えていま、日本や韓国で脚光を浴びています。国境を越えて人々を魅了するアドラー心理学とは、一体何なのでしょうか。
アルフレッド・アドラー。おそらく数年前まで、この名前も、彼が創始した「アドラー心理学」についても、日本ではほとんど知られていなかったのではないだろうか。
アドラーは100年ほど前に活躍したオーストリア生まれの精神科医・心理学者で、フロイトやユングと並ぶ「心理学の三大巨頭」の一人として、欧米では高く評価されてきた。それが一躍、日本でも知られるようになったのは、2013年12月に刊行された『嫌われる勇気』(ダイヤモンド社)が、100万部を超える大ベストセラーとなって以降だ。
一体、アドラー心理学の何が人を引き付けるのか。
「アドラーの教えは、澄んだ湖のように明快で分かりやすい」と、『嫌われる勇気』共著者の岸見一郎氏が語るように、アドラー心理学は非常にシンプルだ。
例えば、「自由とは他者から嫌われること」。他者から嫌われないように生きようとすると、常に自分を他者に合わせなければならなくなる。それでは自分自身の人生を生きることはできず、不自由な生き方となってしまうというのだ。
一見シンプルな言葉の裏には、目からウロコが落ちるような驚きと共に、「確かにその通りだ」という納得感もある。アドラー心理学のこうした普遍性が多くの人を魅了しているのは間違いない。
特別対談
岸見一郎&古賀史健
『嫌われる勇気』誕生秘話
『嫌われる勇気』『幸せになる勇気』という「勇気の二部作」は、いかにして生まれたのか。共著者の岸見一郎氏と古賀史健氏が、二人の出会いや互いの第一印象、著作に込めた想いなど、大ベストセラーの誕生秘話を余さず語る。
Photo by Kazutoshi Sumitomo
──そもそも、『嫌われる勇気』はどういう経緯で生まれたのでしょうか。
古賀 岸見先生の『アドラー心理学入門』を読んだ後、僕はたくさんの友人にその本を薦めました。知り合いの編集者には、岸見先生と一緒に本を出したいと掛け合ったのですが、賛同は得られませんでした。
2010年にある新聞社から、「誰にでも会いに行っていい」という条件の仕事をもらったので、京都の岸見先生のご自宅に伺いました。僕にしてみれば、10年越しの思いがようやくかなったわけです。それで、取材が終わった後に、「ぜひ一緒に本をつくらせてください」とお願いしたら、快諾してくださって。そこから、ほぼ4年がかりで仕上げました。
岸見 それまでも新聞や雑誌の取材を受けることはあったのですが、皆さんアドラーをほとんど知らないまま、話を聞きに来られた様子でした。
ところが、古賀さんは私の本を深く読み込んでいることがすぐ分かりました。それで、「この人となら、きっと面白い本をつくれる」と確信したわけです。
──会ったときの第一印象は?
古賀 岸見先生の本は読んでいたし、写真を見たこともありましたけど、会うまでは京都学派の流れをくむような、権威主義的でちょっと怖い人なのかなと(笑)。
でも、実際に会うと全然違っていました。例えば、僕の来歴や学歴はまったく聞かれず、しゃべったことや仕上げた原稿で評価してくださる。それが新鮮だったし、うれしかったですね。
岸見 インタビュー原稿を書いてもらうことはそれまでもありましたが、古賀さんの原稿は手直しする必要がない完璧なものでした。そこには絶大な信頼感があって、それは最初に会ったときから変わりません。
『嫌われる勇気』を一緒につくり始めたときは、父の介護をしていて、短時間だけ施設に預かってもらえるようになったころ。古賀さんに会うのも、父が施設に行っている間だけでしたが、それまではほとんど仕事ができなかったので、違う人生の扉を開くカギとなる人物が現れた感じがありました。
本の担当編集者が、2人の共同作業は足し算ではなくて、「岸見×古賀」の掛け算だと評価してくれましたが、まさにその通りだと思います。僕一人ではこれだけ多くの人にアドラーの考えを伝えられなかった。感謝しています。
──本に出てくる「青年」と「哲人」は、どこまでお二人のキャラクターが反映されているのですか。
古賀 哲人に食ってかかるような青年の言葉遣いはデフォルメしていますが、根っこの部分は完全に僕ですね(笑)。
フィクションで人物像をつくり上げてもリアリティーがないので、自分を投影するしかありませんでした。青年や哲人が語るエピソードは、僕や岸見先生の実体験を基にしたものが多いですね。
二人はこの後、アドラーブームの落とし穴についても語っています。続きは本編をご覧ください!
ここでしか読めない!
『嫌われる勇気』著者
書き下ろしの特別編を収録
『週刊ダイヤモンド』7月23日号の第1特集は「今こそ!『嫌われる勇気』〜初めてのアドラー心理学」です。2013年12月に刊行された『嫌われる勇気』が135万部を超える大ベストセラーとなり、16年2月に刊行された続編「幸せになる勇気」も、瞬く間に37万部を超える大ヒットとなっています。
これらの書籍をきっかけとして、女性誌でもアドラー特集を組むなど、日本で「アドラーブーム」が巻き起こっています。とはいえ、「アドラー心理学」という言葉は聞いたことがあっても、中身はよく知らないという方もいらっしゃるでしょう。そこで今特集では、アドラー心理学の基礎から実践までをわかりやすくまとめました。
まずアドラー心理学は初めてという方のために、日本のアドラー研究の第一人者でもある岸見氏の監修による「20分で分かる!初めてのアドラー心理学」を用意しました。5つのキーワードを図解で簡単に解説してありますので、ぜひご覧ください。
そして何よりこの特集でイチ押しなのが、岸見氏と古賀氏が本誌だけに書き下ろした『嫌われる勇気』特別編。『幸せになる勇気』が完結編と位置付けられているため、もう次回作はないだろうと残念に思っていた読者も多かったのではないでしょうか。
そんな読者のために、本誌が待望のプレゼントをお届けします。スピンオフ版ともいえる今回の特別編では、二部作に登場した青年の遠縁にあたる30代の「青年」が登場します。職場では上司と部下との板挟みに悩み、出世できずに転職しようかどうか迷っている「青年」に、哲人は何を語るのでしょうか。ここでしか読めない珠玉の作品を、ぜひ本誌でご覧ください。
このほかにも、岸見氏が悩める読者の相談にずばり答える「公開カウンセリング」や、アドラー心理学を実践する人たちの体験記、仕事にすぐ使える「アドラー流コミュニケーション術」など、アドラー心理学を理解する上で参考になるコンテンツが満載です。
また、著名人が語る「私とアドラー論」では、大ベストセラーとなった『ビリギャル』著者の坪田信貴さんや、400mハードル日本記録保持者の為末大さんなどがアドラー心理学への思いを語ってくれました。
『嫌われる勇気』を読んだ方もそうでない方も、アドラー心理学を知っている方もそうでない方も、楽しんで読んでいただける特集です。ぜひご一読ください!
(『週刊ダイヤモンド』副編集長 前田 剛)