今から14年前の2002年某日。2人の慶應義塾大学卒業生は、ある〝会合〟で運命の出会いを果たした。
その2人とは、サントリーホールディングス会長の佐治信忠と、ローソンの社長に就任したばかりの新浪剛史。趣味のゴルフ話で意気投合し、次第に佐治はバイタリティー溢れる新浪のエネルギーに引き込まれていった。
14年、佐治の粘り強いアプローチが実り、新浪・サントリー社長が誕生した。2人が最初に出会い、この一大人事のきっかけとなった会合は「三田会」なるものだった。慶應卒によるOB会である。
佐治をよく知るサントリー関係者によれば、「佐治は経団連や同友会などの財界活動には熱心でない」。しかし、母校の慶應に対しては別らしい。慶應義塾の最高決議機関である評議員会の評議員に立候補し、評議員を務めている。
09年にサントリーがキリンホールディングスと統合交渉した際のきっかけも、当時キリンの社長だった加藤壹康との親交が関係していた。佐治と加藤は慶應の同期。社長として顔を合わせて以降、同窓であることが、2人の距離を縮める一つのきっかけになった。
そして驚くなかれ、サントリー社長職を引き受けた新浪がローソンの後任に指名した玉塚元一もまた、慶應卒である。
社内後継人事を見ても、キリンの社長は、前出の加藤、後任の三宅占二、磯崎功典と3代続けて慶應卒だったりと、経済界を見渡せば、慶應卒が圧倒的なパワーを見せつけている。
本誌の調査によると、慶應卒の上場企業の社長は355人(5月10日現在、判明分)で大学別トップ。あくまで卒業年と学部が判明した社長を集計したため、実際の数はもっと多い。東京大学や早稲田大学は200人台なので、慶應の圧勝である。
(敬称略)
張り巡らされた慶應人脈 日本経済の裏に三田会あり
『週刊ダイヤモンド』の5月28日号の第1特集は「学閥の王者 慶應三田会」です。
本誌の調査によると、出身大学別で上場企業の社長数が最も多いのは慶應義塾大学。東京大学や早稲田大学に圧勝しています。社長交代などのトップ人事はもとより、業界再編や商取引の内幕を知ると、慶應人脈でつながっていることが少なくありません。
なぜ慶應はビジネスの世界で圧倒的なパワーを持つのでしょうか。
カギを握るのが慶應のOB組織である「三田会」です。会員数約35万人で、団体数は公認分だけで862団体。職場の三田会であれば会員数2000人の日立かなめ会、職域の三田会では会員数4607人の公認会計士三田会などがあります。
「3人寄れば三田会」と言われ、小さな組織もいっぱい。慶應卒の早稲田教職員による早稲田三田会だってある。国内外に三田会網が張り巡らされています。
日本経済の裏に三田会あり。その知られざる全貌を明らかにしました。