この4月から医療の値段が変わる。例えば、紹介状を持たないで大病院を受診すると、初診で5000円以上、再診で2500円以上を追加料金として支払うことになる。
この事実、あなたは知っているだろうか。
医療サービスの公定価格に当たる診療報酬は、原則2年に1回見直される。全体の改定率は政府が、個々の単価はその範囲内で厚生労働相の諮問機関である中央社会保険医療協議会が審議し、厚労相が決定する。
2016年度改定の全容が明らかになったタイミングで、本誌は医療従事者向け会員サイト「m3.com」(エムスリー)と共同で緊急アンケートを実施した。医療を受ける一般人と医療現場で働く医師の双方に、診療報酬改定と医療制度改革への本音を問うものだ。
アンケート結果では、紹介状を持たずに大病院を受診すると初診時や再診時に患者が追加料金を支払うことを、一般人の3割がまだ知らなかった。
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この施策の狙いは、大病院は高度で専門的な診療に専念し、軽度で日常的な診療は「かかりつけ医」が担うという役割分担を進めることだ。では、国の思惑通りに患者の受診行動は変化するのか。
「4月からも、紹介状を持たずに大病院に通いたい(家族を通わせたい)と思うか」の問いに、3割の一般人が「通いたい(通わせたい)」と回答した。
医師からすれば、大病院と、中小病院・診療所の一番の違いは「医療における役割の相違」だが、一般人の大病院信仰はなかなか根強い。
戦後すぐに生まれた団塊の世代が、全て75歳以上の後期高齢者となる「2025年問題」に向けて、診療報酬改定ではあの手この手を打ちながら医療制度改革が進められている。
1人当たりの生涯医療費は、約2400万円。そのうち70歳までに半分、残る半分を70歳以上になってから使う。つまり、数の多い団塊の世代が高齢者になることで、医療費は急激に増える。
すでに日本の医療費は40兆円規模まで膨張しているのに、まだまだ膨らむというわけだ。医療機関の窓口で患者が支払うカネは、本当に掛かった医療費総額ではない。
自己負担は1~3割であるため実感しにくいが実際の医療費はもっと高く、自己負担や保険料で足りない分は国の借金で賄っている。要は、次の世代へのつけ回しであり、そのつけ回しもこれ以上許されないほどに財政は逼迫。医療制度改革待ったなしというわけだ。
全国トップは岡山の倉敷中央病院
『週刊ダイヤモンド』の3月19日号の第1特集は「全国病院[改革]ランキング」です。
団塊の世代が全て75歳以上の後期高齢者となる「2025年問題」に向けて、国は医療制度改革を進めています。診療報酬改定、制度改革に対応して実績を出している病院はどこなのか。DPC(包括医療費支払い方式)参加病院を集客力と機能を11指標で評価し、全国トップ100位と都道府県別ランキングで全国1000病院を掲載。全国1位になったのは岡山県の倉敷中央病院です。
ランキングとともに1000病院の5大がん手術患者と脳梗塞患者の実績データも掲載しています。また、診療報酬改定で4月から医療の値段が変わることを受け、患者への影響を整理。紹介状なしの大病院受診は追加料金を請求され、薬局では薬剤師の「指名制」が始まります。入院、外来、在宅など5つのケースから患者の損得を徹底解説しました。
そして本特集、医療とカネの”不都合な真実”にたっぷり迫りました。医療保険制度は資金の流れが複雑怪奇で分かりづらい。だから国民は関心を持ちにくい。でも実は、サラリーマンの保険料の4割は高齢者医療に召し上げられています。強固な岩盤規制に既得権者が跳梁跋扈する”医療ムラ”の内幕もお見せします。
利害がぶつかって改革のスピードは遅い。国民皆制度崩壊の足音は高まるばかり。われわれ国民ももう無関心ではいられません。