インテル、コマツ、ソニー、DeNA──。国内外のそうそうたる有力企業が相次いで出資しているベンチャー企業がある。自動運転システムを開発・販売するZMP(東京都文京区)だ。一体、社員70人の小さな企業の何が、これらの企業を引き付けるのか。
自動運転には、物を見て認知する技術、得られた情報を判断する技術、判断に従って操作する技術が求められる。同社の最大の強みは、認知と判断という自動運転の「頭脳」に関わるハードとソフトを、自前で作っている点にある。
物を見て認知するためのカメラである「ロボビジョン」には、資本提携しているソニーのCMOSセンサーが搭載されている。情報を判断する人工知能「IZAC(アイザック)」には、同じく資本提携しているインテルのCPUが組み込まれている。資本提携で協業しつつ自前で開発することで、「進化のスピードが格段に速くなる」(谷口恒社長)。
自動運転技術で世界の最先端をいくZMPが現在注力しているのが、無人運転車によるタクシーサービス「ロボットタクシー」の実用化だ。2015年5月にDeNAと共同出資してロボットタクシー事業の新会社を設立し、20年の東京五輪時には、法整備が進めば3000台のロボットタクシーを走らせる予定だ。すでにプロトタイプを走らせて実験を始めており、19年後半からは量産を開始する。
「前回の東京五輪の年に生を受けた人間として、20年の五輪でイノベーションを起こして、次世代の新しい日本をつくっていきたい」と谷口社長は意気込む。
同社のロボビジョンとIZACは、自律移動を制御できる点で自動運転以外の分野でも応用が可能だ。建機や農機、物流の台車など、用途は今後どんどん広がっていきそうだ。
同社には昨年来、新規上場(IPO)の期待が高まっており、投資家の熱い視線が注がれている。
独自技術で米巨大企業を凌駕
世界に名を馳せる地方企業
ライバルは米国の巨大企業ジョンソン・エンド・ジョンソン(JNJ)──。手術の縫合用の「アイレス縫合針」や、目の角膜を切る眼科ナイフなどの製造を手掛けるマニー(栃木県宇都宮市)のことだ。
あおぞら銀行から06年に同社に転じた高井壽秀社長は、「ニッチ市場で消耗品を作り続けることが、中小企業が生き残る道だ」と強調する。
ステンレスの超微細な加工技術が同社の強みだ。そのため、技術を生かせる医療向けの特定の商品だけに経営資源を集中。さらに、継続的な購入が見込める消耗品の供給で安定的に利益を生む戦略だ。
そして品質は、常に世界一を目指す。半年に1度「世界一か否か会議」を社内で開催し、同業他社と自社の製品を徹底的に比較。他社が上回っている点があれば、改善によってその半年後に世界一になることを目指す。
こうした努力の結果、手術の部位などにより1万種類にも達するアイレス縫合針を全種類製造できるのは今、世界でJNJと同社だけだ。世界シェアはJNJ70%に対して同社は10%だが、全ての完成品を目視検査するなど品質管理にも注力した結果、医師の間で評判を呼び、単価はJNJを2~3割上回るというからすごい。眼科ナイフの世界シェアは30%だ。
生産拠点は、人件費の安いベトナムを中心に海外移転がほぼ完了。そのため「世界一の品質を、世界一安く作れるようになった」という。国内拠点は研究開発や管理部門などに限られることになるが、高井社長は「餅は餅屋。しっかり稼いで納税し、地元に貢献したい」と話す。