世界はどこに向かうのか。進路を占うキーワードは「再加速か停滞か」にある。
リーマンショック直後、世界の経済は「集中治療室」の中にいた。金融政策や財政政策などさまざまな景気浮揚策が打たれ、天文学的な金額がつぎ込まれた。
その〝治療〟が功を奏し、世界経済は再び浮上、加速モードに入った。日本の株価は3年で2・5倍になり、中国は世界経済をけん引、米国も力強く回復している。
だが、治療は代償を伴った。病み上がりならば早々に自律回復させるのが望ましかったが、各国経済はその後も〝通院〟と〝服薬〟をやめられず、強い副作用に襲われることになる。2015年夏、中国の株価暴落が引き金となって世界中にパニックが波及。本来は正常化の道筋である米国の金利引き上げも、人々はリスクとして強く意識し始める。
停滞感が強く漂う今、世界経済が再加速するためには、どうすればいいのか。
本来、難局には各国が連携して立ち向かうべきだが、利害の対立は深まるばかり。アジア太平洋地域にも不協和音は響く。
例えば、貿易面では日米が主導する環太平洋経済連携協定(TPP)に中国は対抗意識を見せ、金融面では、中国はアジアインフラ投資銀行(AIIB)を設立、日米は参加を見送った。
人民元が国際通貨としてのお墨付きを得たことで自信をつけ、軍事面でも南シナ海などで拡張主義に走る中国に対し、米国の次期大統領がどう動くのかも注目だ。
世界を眺めても、米欧中ロシアといった大国の足並みはそろわない。皮肉なことに、頻発するテロの脅威が各国の協力関係を強化する〝磁力〟となっている。
日本経済も正念場だ。多くの企業が最高益を塗り替えてはいるが、利益は内部に蓄えたまま。設備投資を積極化するでもなく、賃上げにも向かわないため家計は潤わず、消費増加に結び付いていない。
17年4月には消費増税を控え、再び景気腰折れ懸念も漂う中、賞味期限が迫るアベノミクスには厳しい視線が注がれる。増税とセットでの導入で決着した軽減税率も16年7月の参議院議員選挙対策との見方が根強く、バラマキ批判も巻き起こる。
世界も日本も、直面する試練の解をどう見つけるか、問われる年になりそうだ。
2016年の日本と世界が丸わかり
2016年、経済は上向くのか、それとも停滞するのか。
『週刊ダイヤモンド』2015年12月26日・2016年1月2日新年合併特大号は「2016総予測」です。
2016年は果たしてどのような年になるのか、各界の第一人者、専門家と本誌記者が「経済」「産業・企業」「政治・社会」「地方」「国際」「働き方」「消費」「スポーツ・文化」の8分野、76項目に渡り、予測しました。ページ数は166ページで、価格は新春お年玉価格の650円です。
日本や世界の経済に漂う雰囲気は、「バブル」よりも「息切れ感」です。再加速できるかどうかにより、景気、株価、為替の水準はまったく異なるから、気になるところです。そこで、延べ23人のアナリストに予測をお願いしました。株価の予測では2万4000円の予測をつけたアナリストもいます。そして、2020年の東京オリンピックまで地価はどのように動くのかも紹介。
企業業績は最高益を塗り替えてはいるものの、アベノミクスの成否は予断をゆるしません。日本をはじめとした各国の経済政策の今後も予測しました。
さらに、本誌記者が銀行、保険、ゼネコン、自動車、電機、電子部品、機械、鉄鋼、勝者、流通、航空などの業界に密着取材し16年の動向を徹底予測。
2015年にフランスでテロが起こったように、テロや難民など地政学的リスクの高まりも世界を揺さぶっています。欧州、中東、中国、米国の経済のみならず、政治、社会についても占っています。
また、なんといっても16年の大きなイベントは米国の大統領選。こちらは、4ページに渡り、仕組みやスケージュル、有力候補などを詳細に解説しています。
もちろん、国内の政治についても「うごめく時間差ダブル選挙」と題して、予測しています。
加えて、16年は「働き方」「消費」にも力を入れ、働く個人や消費者はどこに向かうのかも示しました。
そして、史上初めてキリンとアサヒという大手ビール会社の社長の対談が実現し、業界の効率化や協業などについて明かしています。
他にも稲盛和夫氏、野中郁次郎氏、国際政治学者のイアン・ブレマー氏、星野リゾート代表の星野佳路氏、らみちゃんなど、有名な経営者、アスリートにも多数登場いただいています。
例年に比べ価格も安くページ数も多いです。ぜひ、年末年始のお供にご一読いただければ幸いです。