ウェブニュースの
PV至上主義で
増幅する過剰報道

 やがてこうした嫌韓記事は、オンラインでも支持を集めるようになり、日本のメディアにとって、やめられない〝麻薬〟となった。「嫌韓モノが金を稼げるコンテンツになりビジネス化した」(同)のである。

 実際にメディア側は、こうした嫌韓コンテンツにすがらざるを得ない収益上の問題を抱えている。

 インターネットの普及により、紙の販売部数が減少、新聞や雑誌等の既存メディアは、オンラインで稼ぐ必要に迫られて、編集サイドでも商業主義的な傾向を強めている。これは韓国メディアも同様で、両国メディアが抱える二つ目の問題である。

 日韓のオンラインニュースでは、「有料課金モデル」が「日本経済新聞」など一部を除き、普及しておらず、ページビュー(PV)を集めるほど収益が上がる「広告モデル」に依存しているのが実情だ。

 さらにインターネットにおいては、紙の世界で名を轟かせた大手紙も、名もなきウェブメディアと同じ土俵で戦うことになる。

 そもそもウェブメディアは、過激な見出しで集客を増やす手法が定着しており、大手メディアも広告収入を得るため、それに追随し、PV至上主義に陥りやすい。そのため、「見出しや内容がセンセーショナルになってしまう」(韓国大手紙マーケティング担当者)のだ。

 日本では、ヤフーが媒体の品質劣化を恐れ、国内最大のオンラインニュースサイトのヤフーニュースで嫌韓、嫌中ニュースを排除しだしている。

 しかし、韓国では大手メディアがこぞってニュースを配信するオンラインニュース最大手のネイバー上で激しいPV争奪戦が繰り広げられている。その結果、「反日モノがPVを稼げる〝ドル箱コンテンツ〟として量産されている」と前出のマーケティング担当者は打ち明ける。

 一方で、ウェブでの反日・嫌韓記事の配信は、オンライン特有の副作用をもたらす。

 PVを稼ぐ記事は、いったんニュースサイトにアップされると次々に転載され、短時間で一気に増殖することで、世論をいたずらに煽ることになる。

 オンラインニュースの台頭によるメディアの収益構造の変化が商業主義に拍車を掛け、反日・嫌韓報道を大量生産しているのだ。

 もっとも、日韓関係悪化の最大の原因は両国の強硬な外交姿勢にある。しかし、メディアが、冷え込んだ両者の関係に警鐘を鳴らさず、大衆迎合主義と商業主義に走っては、関係改善どころか、反日・嫌韓感情の〝増幅装置〟と化すばかりである。

日韓メディア初公開
本当の日韓関係と韓国経済

 『週刊ダイヤモンド』10月31日号の第1特集は、「ビジネスマン6000人に聞いた日韓 本当の大問題」です。11月1日に予定される日韓首脳会談。二国間での正式な形での会談は2013年5月以来、3年半ぶりとなります。会談では日韓融和が強調されるだろうが、それを実現するのはたやすいことでありません。この間、日韓関係は悲劇的なまでに冷え込んでしまったからです。

 韓国・ソウル南部の江南(カンナム)で特集取材を終えて、中心部へとタクシーで向かう道すがら、日本人相手の観光案内も手掛ける運転手の洪炳利さんが韓国訛りの日本語で愚痴り始めました。ちょうどソウル最大の繁華街、明洞(ミョンドン)を通り過ぎる辺りだったと思います。

「この辺は3年くらい前まで日本のおばちゃん通りだったよ。今、いないね。日本人のお客さん、8割減った。じぇんぶ嫌韓のせい」

 嫌韓・反日はビジネスの世界にも浸食してきました。仕事上、付き合うことの少なくない両国ビジネスマンは、どう思っているのか。本誌では日韓ビジネスマン6000人に緊急アンケートを実施したところ、意外な本音が浮かび上がってきました。

 どうして日韓は、〝断絶〟といえるほどまでに冷え込んでしまったのか。嫌韓報道からは絶対に見えてこない本当の日韓関係、そして中国景気の急減速のあおりを受けて混迷する韓国経済の深層を探りました。日韓メディア初公開の内容が満載なので、是非、ご一読ください。

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週刊ダイヤモンド2015年10月31日号
「ビジネスマン6000人に聞いた 日韓 本当の大問題

Part1 ビジネスマンに10大質問         日韓6000人アンケートで         解き明かす「3つの大誤解」

◆Part2 日韓関係が〝断絶〟した本当のワケ

◆Part3 日本との比較で分かった          韓国経済の本当のリスク

◆Part4 韓国産業界に残された「最後の選択」

 


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