『週刊ダイヤモンド』2015年5月23日号は、「投資の鉄則 高値圏でも買っていい株・投信」。その中から、大江英樹、竹川美奈子、山崎元の資産運用の専門家3氏が、悩める個人投資家の質問にずばり答える鼎談の一部を紹介します。

 まずは、いま個人投資家が一番聞きたい質問から。

Q これから投資を始めようと思っています。いま買って大丈夫ですか。

山崎 株式に投資する場合で考えてみましょう。株式投資というのは、株式の形で資本を提供して、企業が稼いでくれた利益を株主が得るという仕組み。長期で資本を提供して利益を積み重ねていくというのが基本の考え方です。まだ投資を始めていない人ならば、株を持つことは長期的な資産運用にはいいことなので、いま投資を始めても何ら問題はありません。

 一方、すでに株に投資している人、例えば、資産1000万円のうち500万円を株で持っているような人が、さらに株を買い増してもいいのかというと、現在の株価はもう安いとはいえない水準まで来ているので、ここからさらにアクセルを踏んで株を買うタイミングではないという気がします。

竹川 幾つか考え方があると思います。まず、全く株を保有していない人が、ずっと株を資産として持たないままでいいとは思わないので、そういう人はいま買うという選択肢もあるでしょう。

 ただ、全く投資経験のない人にありがちなのが、例えば1000万円といった多額のお金を一括でまとめて投資してしまうこと。2007年ごろに高値で買って、リーマンショック後に半値ぐらいになって怖くなって売ってしまったケースがたくさんありました。初めての投資は少額から始めた方がいいでしょう。

 また、投資を始める場合は確定拠出年金(DC)や少額投資非課税制度(NISA)など、まず使える制度を最大限活用することが先決です。

 すでに投資している人は、追加で投資するのではなく、次の投資に備えて現金を取っておく方がいいと思います。株価はここまで上がってきているので、急落することもあるでしょう。その際に株を買えるくらいの現金資産は残しておいた方がいいでしょう。

大江 これから相場が上がるか下がるのかは結局、誰にも分かりません。ただ、山崎さんも竹川さんも話されたように、株を資産の一部として長期に持つということであれば、始める時期に良い悪いはなく、長い目で見たらいつ始めてもあまり関係ありません。

「長期保有が前提なら、投資はいつ始めてもいい」——。3人の専門家が一致したこの回答はまさに、「投資の鉄則」です。

 もう一つ、これも投資家の関心が高い質問です。

Q 株や投信はどんなタイミングで売ればいいのでしょうか。

竹川 そもそも、買ったときの価格より高いから売る、安いから売るという考え方がおかしいと思います。まず、株や投信を買った目的が何だったのかを自分に問い直してみるべきです。

山崎 買い値を基準に考えること自体がおかしいですよね。自分が幾らで買ったかということと、その株が今後上がるか下がるかは、一切関係がないからです。

 株価が上がったから売らなければと考えている人は(売買手数料を稼ぎたい)証券会社のカモですし、下がったから売れないという人は、資産の適正な配置を妨げているという点で、自分のお金を牢屋に閉じ込めてしまっているようなものです。

 売るべきときというのは明快で、お金が必要になったとき、資産配分を見直すとき、買った理由がなくなったとき(割安だと考えて買った株が割高になってしまったなど)です。

 株や投信の「売り時」というのは、「お金が必要になったとき」であり、「買い値にこだわるな」というのが投資の鉄則です。

 鼎談ではこのほかにも、「ラップ口座を利用すべきか」「投資で失敗する人の共通点は何か」など、個人投資家の尽きない悩みに対して、3人の専門家が投資の鉄則を伝授してくれます。

専門家が厳選!
買ってもいい株・投信

週刊ダイヤモンド5月23日号の第1特集は、「投資の鉄則 高値圏でも買っていい株・投信」です。

 4月下旬、15年ぶりに日経平均株価が2万円台を回復しました。ただ、市場には割高感も漂っており、個人投資家はいま投資すべきかどうか迷っているところでしょう。そんなときこそ、基本を押さえることが重要になってきます。

 そこで冒頭の3人の専門家に、投資家の悩みに答える鼎談の形で「投資の鉄則7カ条」を伝授してもらいました。初心者はもちろん、投資経験者も、目からウロコの貴重な話が満載です。

 基本を押さえた上で、どんな商品を選べばいいのかもまとめました。最新決算と2期先のアナリスト予測に基づく「買ってもいい株ランキング」では、2期先のPER(株価収益率)が割安な銘柄、2期先の増益率が30%超えの銘柄など124の銘柄を選び出しました。

 専門家5人が選んだ「買ってもいい金融商品ランキング」では、手数料が安い投信34本を厳選。投信の売れ筋ランキングを賑わせている「毎月分配型投信」が全く入っていない”斬新な”ランキングになりました。じっくりご覧ください。

 また、今後の相場を読む上で重要になる、株価・金利・為替・景気が動く仕組みについて、著名エコノミストの上野泰也・みずほ証券チーフエコノミストにやさしく解説してもらいました。相場が動く仕組みを理解することで、足元の株価の乱高下に一喜一憂しなくても済むようになるはずです。

 特別付録として、いまから投資を始める人のための「投資カンタンガイド」もまとめました。ぜひ参考にしてみてください。

 今回の特集では書ききれなかったのですが、個人投資家の方にも何人かお話を伺いました。中でも印象に残ったのは、「梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー」という投資ブログの著者として有名な水瀬ケンイチさんのお話。投資とは関係のない企業に勤めながら、この12年間ずっと積み立て方式でインデックスファンドに投資し続けている方です。

 リーマンショックとその後のアベノミクス相場という「地獄」と「天国」を経験して、「現在は期待通りの運用結果に収斂してきている」とのこと。長期投資をしていれば、その間に山や谷があるのは当たり前。大事なのは目先の出来事に右往左往するのではなく、じっくり構えることだということでしょう。

 毎年荒れやすい5月相場ですが、この特集で投資の鉄則を身につけて、乗り切っていきましょう!

 ★  ★  ★  ★  ★  

週刊ダイヤモンド2015年5月23日号
「投資の鉄則 高値圏でも買っていい!株・投信」

◆Part1 初心者も経験者も必見!
    投資の鉄則7カ条

Part2 専門家が厳選!
    買ってもいい株・投信

◆Part3 著名エコノミストが伝授
    相場と経済の深〜い関係

◆特別付録 投資スタートガイド

 ▼こちらでも購入できます
 
>>雑誌を1冊購入
 
>>電子版を購入