日銀の追加緩和と消費増税の先送り観測で、相場が沸き返っている。これを機に、投資を始めようという人も多いだろう。だがまずは投資の基本をしっかり押さえるべきだ。浮き足立ってはけがをする。

 大ベストセラー『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』の著者で公認会計士の山田真哉氏が、自身の壮絶な失敗談を基に、投資の基本について語ってくれた。

 私が株投資を始めたのは2005年ごろ。ちょうど日経平均株価が1万1000円台から1万6000円台へと跳ね上がった時期でした。ところが、ご存じのように翌年の06年に「ライブドアショック」が起こって、株価は急落しました……。

 現在までに総額で約2500万円投資しましたが、最大で1500万円の含み損を抱えた時期がありました。アベノミクス相場のおかげで、今はようやく含み損が200〜300万円まで減ったところです。

 なぜ失敗してしまったのか。損をしたくないという気持ちが強かったんです。だから株価が急落する局面で、ある銘柄は放置して上がるのを待ち、またある銘柄はナンピン買い(保有銘柄の株価が下がったときにさらに買い増しして平均取得単価を下げること)に走りました。

 なぜ早く損切りしなかったのか、と思われる方も多いでしょう。損切りするということは失敗を認めるということ。人間というのは失敗を認めたくないんです。自分が見込んだ銘柄はいずれ必ず上がるはずだから、ナンピン買いしておけば大もうけだ、と思い込んでしまったんです。結果を見ると、ナンピン買いした銘柄ほど含み損が残ってますね。

 それ以来、ナンピン買いはきっぱりやめました。ナンピン買いするくらいなら、その資金でもっといい銘柄を買った方がいい、ということに気付くくらいには進歩しました。銘柄数を増やした方がリスクヘッジにもなりますし。

 私は、投資というのは余裕資金でやるべきだと思っています。「お金の余裕は心の余裕」というのも私の座右の銘なんですが、やっぱりお金に余裕があるとじっくり構えられるんですね。1500万円の含み損を抱えた“塩漬け”株を損切りせずにずっと持ち続けられたのは、余裕資金で投資していたからなんです。

 山田さんの失敗談はこのあともまだまだ続きます。

いつ買い、いつ売ればいい?
相場の格言が教える「正解」

  投資の基本であり、永遠のテーマなのが、売買は「いつ」が正解なのか、ということ。「アノマリー」と呼ばれる相場の格言や法則は、投資心理の“あや”や需給の癖を教え、売り買いのヒントを与えてくれる。

 個人投資家の「三大後悔」といわれるものがある。一番が「売るタイミングを誤った」、次いで「買うタイミングを誤った」、そして三つ目に「銘柄選びの失敗」である。

 売買は「いつ」が正解なのか? 先人たちも迷い、失敗し、後悔してきた。その経験から相場格言や季節アノマリーといわれるヒントを抽出し、私たちに残してくれている。

 これらには合理的、理論的な根拠があるわけではない。しかし、単なる迷信だとないがしろにするのは、もったいないことこの上ない。今も株の売買に”使える格言・アノマリー”を検証してみよう。

 まずは「曜日」だ。日本では「月曜日の株安(週末の株高)」「荒れる月曜日は安い」「魔の水曜日」といったアノマリーがある。

 月曜日は、休日に政治的な材料が出やすく、また週末の海外市場の動きを織り込むことから、「荒れる」というのも得心がいく。

 実際に曜日ごとの日経平均株価の騰落率を見てみると、2000年のITバブルまでは月曜日の勝率は確かに極めて悪かったが、このところは他の曜日とほとんど変わらない。

 週末の勝率が高くなるという「週末効果」はどうか。ITバブルまでは「月曜日に買い、水曜・木曜日に売り」が正解だった。それが08年のリーマンショック以降、株安は月曜日から火曜日にスイッチ、「火曜日に買い、水曜・木曜日に売り」の収益率が高くなってきている。

 続いて「週間アノマリー」を見てみよう。株価指数先物のSQ(特別清算指数)算出の影響から、「第2週は荒れる週、特にSQ前の水曜日は要注意」とされていた。

 実際、リーマンショック前までは第2週の騰落率は全ての曜日でマイナスとなっていたが、リーマンショック以降、第2月曜・金曜日の成績がプラスになっている。また第3・第5水曜日のパフォーマンスが良く、第1月曜日は悪い。有効な売買パターンは「第1月曜日で買い、荒れる第2週を凌ぎ、第3水曜日で売る」ということになりそうだ。

 このほかに、月ごとの収益率や「えと」についてのアノマリーも検証しました。その驚くべき結果については、本誌でご覧ください。

急変相場だからこそ
中長期で持てる銘柄を見極めよう

『週刊ダイヤモンド』11月22日号は、相場が沸き返っている最中にお届けする株特集です。

 10月中旬に世界同時株安で急落したと思いきや、その後、日本銀行の追加緩和で急騰。11月に入って消費増税先送り・解散総選挙の観測が浮上し、株価は上昇しています。にわかに活気づいている相場を目の当たりにして、投資を始めようと考えている方も多いことでしょう。

 相場が急変しているときは、投資のチャンスではありますが、慌てると大けがをしかねません。そこで本特集ではまず、初心者も経験者も押さえるべき投資の基本である「長期投資」と「分散投資」の考え方や、急変相場の見極め方をまとめました。

 基本を押さえた上で、実践編として、買っていい株237銘柄、買ってはいけない株163銘柄も一挙掲載しました。下ブレしにくく高配当で成長性が高い銘柄、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の買い増し候補銘柄など、さまざまな基準で銘柄を評価しました。

 投資初心者の方には、手軽に始められる投資信託商品も用意しました。NISA(少額投資非課税制度)でも投信は主役級の商品です。これから購入を考えている方はぜひ手にとってご覧ください。

 また、来年1月から解禁されるNISA(少額投資非課税制度)口座の金融機関の乗り換えが解禁されます。そこで、金融機関12社の使い勝手を徹底比較した表を掲載しました。乗り換えを考えている方はぜひ参考にしてください。

 特集ページの最後には、資料編として時価総額が大きい大型株500銘柄のリストを付けました。これから買おうと思っている銘柄や自分が保有している銘柄が、割安なのか割高なのか、業績はどうなのか、気になる方はぜひチェックしてみてください。

 現在の相場は、追加緩和や消費増税先送り観測で一時的な熱狂状態にあります。だからこそ、冷静になって、業績に裏打ちされた銘柄を個別に選ぶべきです。本特集が、その助けになれば幸いです。
 

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急変相場を見極める!買っていい株237 買ってはいけない株163


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