今年の夏、ある1本のテレビコマーシャル(CM)が、ビール業界で大きな話題を呼んだ。CMの舞台はキリンビールの社内。テーマは「酎ハイ事業部の謀反」で、社員に扮した俳優が発した一言が、衝撃を与えた。

「酎ハイ事業部が、『取りあえずビール』を否定し、『取りあえず酎ハイ』にしようと新商品を出します」

 大手ビールメーカーが、自分たちのアイデンティティである「ビール」を否定したのだ。商品は、キリンが今年6月に発売した、「ビターズ」という酎ハイ。果実の皮から抽出したほろ苦さを特徴としており、「ビール離れが進む中、ビールから流れてくる消費者を獲得する目的で発売した」(キリン幹部)という。9月にはビターズの年間計画を当初予定値の3倍に上方修正。不調のビール事業とは裏腹に、売り上げは好調だ。

 業界関係者を驚かせたキリンのCMだが、酒類市場全体の傾向に目を向ければ、何ら奇抜なものではない。むしろ、必然である。

 今、国内の酒類市場では大きな地殻変動が起こっている。酒類市場全体が縮小傾向にある中で、新たな〝勝ち負け〟が表れだしたのだ。最も苦しいのはビール類(ビール、発泡酒、第三のビール)だ。市場は縮小の一途をたどっている。

 ビール市場の動きを見れば、キリンの酎ハイシフトも、至極まっとうな判断なのだ。対照的に、ビール類から消費者を奪い、活気づいているのが、酎ハイ、ウイスキー、ワイン、日本酒だ。

世界で評価される
“ニッポンの酒”

 現在の酒類業界の状況は、各ジャンルが限られたパイを奪い合う、椅子取りゲームの様相を呈している。しかし、縮小を続ける国内市場では、どの酒も〝成長の限界〟がある。

 世界に目を向ければ、未開拓の広大な市場が広がるが、海外展開は、それほど簡単には進まない。危機感がにじむ中、業界に希望の光が見えている。2000年代に入って以降、日本で造られた酒が世界的なコンクールを席巻し始めたのだ。

 特に高い評価を受けているのが、「ジャパニーズウイスキー」だ。01年にニッカウヰスキーの「シングルカスク余市10年」が「ウイスキーマガジン」の「ザ・ベスト・オブ・ベスト」で最高賞を受賞。以降、ジャパニーズウイスキーが何度も世界の舞台で最高賞を受賞している。「イチローズモルト」(ベンチャーウイスキー)など、小規模蒸留所が手掛けるウイスキーも高評価を得ている。

 ワインの受賞も相次いでいる。こちらも大手だけでなく、「キュヴェ三澤 明野甲州2013」(中央葡萄酒)、「御坂 甲州 樽発酵 2010」(勝沼醸造)といった小規模なワイナリーもその実力を世界に知らしめている。

 日本酒は、月桂冠や宝酒造といった超大手が古くから米国など海外に進出してきた。日本酒を意味する「ジャパニーズワイン」「ライスワイン」の認知度は高く、フランス・パリに進出を決めた「獺祭」の旭酒造など、新たな進出の動きも始まっている。

酒の最新事情を徹底取材
飲み手・造り手・売り手の今

『週刊ダイヤモンド』11月1日号の第1特集は、飲み手、造り手、売り手に大きな構造変化が生じている、酒業界を徹底取材した「世界が認めたニッポンの酒」です。

 若者の酒離れや高齢化で、お酒の消費量が減少を続けていますが、消費者の嗜好が大きく変わる中で、酒類別の消費量も近年、大きく変化をしています。

 今、最高に勢いづいているのは、ウイスキー。一時はピークの約5分の1まで低迷していましたが、ハイボールブームで反転。サントリー山崎蒸溜所の初代所長にして、ニッカウヰスキーの創業者である竹鶴政孝氏を主人公のモデルにしたNHKの朝ドラ「マッサン」効果で、さらに勢いを増しています。ニッカの竹鶴ブランドのウイスキーは、9月単月で前期比62%増(1~9月で42%増)を記録したとか。

 造る側にも変化が出てきました。日本酒、焼酎、ワインなどで、若くてやる気のある新世代の造り手が続々登場しています。

 近年、日本の酒の高い品質が認められ、世界的の有力コンクールで、ウイスキーやワインが相次いで受賞しています。寿司をはじめとする和食文化の広がりもあって、日本酒の輸出は増える一方です。

 世界が認めた〝ニッポンの酒〟。高い品質を培ってきた歴史から、品質へのこだわり、世界戦略まで、最新事情に迫ります。

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本誌2014年11月1日号
「世界が認めたニッポンの酒」


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