今年4月、ソウル市江南区(カンナム)にそびえるサムスン電子の本社ビル。花形のスマホビジネスを管轄する無線事業部で、かつてない異常事態に緊張感が走っていた。
「出荷価格の7掛けでいいから、在庫を引き取ってほしい」
看板商品である最先端モデル「ギャラクシーS4」が思ったように売れずに、出荷した家電量販店などからこんな悲鳴が寄せられていたのだ。業界関係者によれば、主に欧州の流通大手からの声が最も切実だったという。
次世代モデルの発売が5月中旬に迫る中、このまま旧モデルの売れ残り品を大量に抱えれば、さらに販売が難しくなる。損切りしてでもいいから在庫を“逆流”させたいという訴えに対し、サムスン側は引き取り拒否を貫き、社内外で混乱に拍車がかかる。
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「米デトロイトを反面教師に」――。昨年8月、現代自動車の主力生産拠点のある“城下町”の蔚山(ウルサン)の地方紙に、こんな新聞広告が掲載された。
広告主は、地元の商工会議所会長だ。平均年収940万円という高給を貪りながらもストライキを繰り返す、現代自の労働組合を批判したものだった。
かつて自動車業界のビッグスリーを形成した米国のゼネラル・モーターズ(GM)やフォード、クライスラーが本拠を構える自動車の都・米デトロイト市が破綻したのは、ちょうど1カ月前の昨年7月のこと。現代自のお膝元である蔚山も、対岸の火事とは思えなかったのだろう。
それもそのはずだ。GMを破綻に追い込んだのは、巨額に膨らんだ年金・医療費。ストを繰り返した労組が勝ち取った権利だ。現代自労組も、文句を言えば賃金は上がると思っている「労働貴族」なのだ。
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韓国鉄鋼最大手、ポスコ発祥の地・浦項(ポハン)。浦項製鉄所に着くやいなや、興味深い光景が飛び込んできた。ポスコの製鉄所と大通りを挟んで目と鼻の先に、2010年に鉄鋼事業に参入した現代製鉄(現代自動車グループ傘下)がそびえたっているのだ。
現代自動車が高級鋼材を自グループから調達を始めたことで、金城湯池だった国内市場が食い荒らされ始めている。技術力ではまだポスコが勝っているものの、今や目の上のたんこぶといってもいい。本業の鉄鋼業回帰を引っ提げて3月に就任したばかりの権五俊(クォン・オジュン)会長兼CEO(最高経営責任者)には、大きな試練が立ちはだかっている。
“日の丸キラー”の
韓国企業を襲う
六重苦の正体とは
“日の丸企業キラー”と呼ばれ、飛ぶ鳥を落とす勢いで躍進を果たした韓国企業たちの間に、暗雲が漂っています。
ソニーやパナソニックの家電事業を崩壊に追い込んだ「サムスン電子」、年間出荷台数にしてホンダや日産自動車をすでに追い抜き、トヨタに迫ろうという「現代自動車」、新日鉄住金をはるかに上回る利益を叩き出してきた鉄の巨人「ポスコ」。
そんな彼らに今、六重苦が襲い掛かっているのです。詳しくは本誌をご覧いただきたいが、従来の勝利の方程式が崩れようとしています。
今なぜ、サムスン、現代自動車、ポスコを取り上げるのか。3社の資産規模はGDPの4割を占めており、3社がコケれば韓国経済がコケてしまうからなのです。
そこで本誌の取材チームは8月上旬、彼らの現状をつぶさにレポートするために、韓国に飛びました。
韓国経済は今、大きく揺れ動いています。今年2月に朴槿恵(パククネ)大統領は就任1年のタイミングで「経済革新3ヵ年計画」を発表したものの、頼みの綱である巨大企業たちの勢いには大きく陰りが出始めています。今年4月に起きた「セウォル号」の沈没事故による国内消費の自粛ムードによって、経済面では“冷たい夏”が続いています。
『週刊ダイヤモンド』8月30日号の特集「サムスン、現代自動車、ポスコ失速」では、日本の基幹産業や経済動向と密接につながっている韓国経済を象徴する巨大企業について、文字通り足を使って集めた現地情報をふんだんに盛り込みました。
また経済誌ならではの確かなデータと数字、さらには「技術流出ランキング」などここでしか読めない独自資料もふんだんに盛り込んであります。
「嫌韓」でもない、「呆韓」でもない韓国経済の真実を浮き彫りにする一冊に仕上がっています。
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本誌2014年8月30日号
「韓国3大企業 サムスン、現代自動車、ポスコ失速!」
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