記事一覧:山崎 元のマネー経済の歩き方69

  • 個人のマネー運用で守りたい5原則

    山崎 元のマネー経済の歩き方
    個人のマネー運用で守りたい5原則

    2013年5月11日号  

    「マネー経済の歩き方」というタイトルの下で、10年以上記事を書かせてもらった。残念なことに連載の最終回だ。連載の最後に当たり、自らマネー運用を行っている読者のために、今後長く通用する資産運用の心得5カ条をお届けしたい。第1条 余計な手数料を払うな。金融業者に払う手数料は「確実なマイナスリターン」だ。「国内株式」「外国株式」のように、同じ資産クラスに投資する商品同士を比較した場合に、「手数料が高いけれども、運用がうまい」という商品は、事前には見つけることができないのが現実だ。

  • 今後に来るかもしれない「バブル」について

    山崎 元のマネー経済の歩き方
    今後に来るかもしれない「バブル」について

    2013年5月4日号  

    日本銀行が黒田東彦総裁体制に変わり、4月4日の金融政策決定会合の結果を受けて、円安と株高が一段と進んだ。少し長い目で見た今後の展開を考えてみよう。会合後の記者会見で、黒田総裁は、株式のETFに関する質問に対する答えの中で、「リスクプレミアムはまだまだ圧縮する余地がある」と語った。リスクプレミアムは株価と一対一対応しているから、この発言は、現在の株価が安過ぎると述べているのと同じだ。アベノミクスにあって、特にその初期には、為替レート(円安)と資産価格が果たす役割は大きい。日銀と政府は、円安と株高を実現することを通じて景気を拡大し、ひいては物価上昇につなげようとする意図を明確に持っている。

  • 日本版ISAでの正しい運用法

    山崎 元のマネー経済の歩き方
    日本版ISAでの正しい運用法

    2013年4月20日号  

    通称「日本版ISA」と呼ばれる制度が2014年1月からスタートする予定だ。これは、1人が年間100万円まで行う投資の収益に対して5年間非課税とする、投資優遇税制だ。 日本版ISAでは、1人が1金融機関に一つだけ専用の口座を開くことになるので、金融機関の間では、すでに口座獲得競争が始まっている。現段階で予定されている日本版ISAの制度は、必ずしも使い勝手がよくないし、金融機関にとっても多額の手数料が入るような制度設計にはなっていない。しかし、新しい顧客の獲得につながるし、既存の顧客を他社に奪われたくないこともあり、半ば採算性を度外視して口座獲得競争に参加している会社が多い。

  • ファンド・オブ・ファンズをめぐるあれこれ

    山崎 元のマネー経済の歩き方
    ファンド・オブ・ファンズをめぐるあれこれ

    2013年4月13日号  

    ファンド・オブ・ファンズとは、複数のファンドを集めて一つのファンドとした商品だ。一般個人向けの投資信託にもあるし、機関投資家向けの運用でも、ヘッジファンドなどを集めたファンド・オブ・ファンズが存在する。個人向けの投資信託で最近多いのは、主に海外市場に上場されているETF(上場投資信託)を複数組み合わせたファンドだ。このタイプのファンドは、小口単位で行う投資に向いている。

  • 岩田規久男日銀副総裁への三つの期待と心配

    山崎 元のマネー経済の歩き方
    岩田規久男日銀副総裁への 三つの期待と心配

    2013年4月6日号  

    注目の日本銀行首脳人事が先般決着した。黒田東彦氏の総裁就任もさることながら、岩田規久男氏の副総裁就任が注目される。岩田氏は、金融緩和政策の代表的な論客であるのと同時に過去の日銀を徹底的に批判してきた人でもある。できたら総裁にと思わぬでもなかったが、岩田氏が日銀の内部に入ることは画期的だと筆者は思う。ご活躍に大いに期待したい。まず、有効な金融緩和策を実行する上での議論の主導を期待する。日銀の金融政策は、金融政策決定会合の多数決で決まるのであり、総裁・副総裁の一存で決まるわけではない。正副総裁3人以外の委員は、「小出しの美学」、白川方明前総裁の政策におおむね賛成してきた人たちだ。一方で長いものには巻かれるだろうとは予想するものの、これまでの政策を不連続に変えることには抵抗感があろう。

  • 金融マンの報酬とバブルの関係

    山崎 元のマネー経済の歩き方
    金融マンの報酬と バブルの関係

    2013年3月30日号  

    欧州連合(EU)は、銀行員のボーナスに上限をつける制度を導入するという。基本的に、ボーナスは年間給与(ベースサラリー)と同額までとして、銀行の株主の過半数の承認があれば、2倍まで許容する、という内容になるようだ。EUは、まだ決まったわけではないが、投機取引を抑える方法として金融取引税の導入も検討しているという。外資系の投資銀行マンがベースサラリー2000万円、ボーナス8000万円といった構成で報酬をもらっていたとすると、同額の年収を得るためには、ベースサラリーを5000万円に増額しなければならない。金融関係の人材を扱うヘッドハンターに話を聞くと、外資系の会社では、かつてよりもベースサラリーを高めに設定する動きがすでに始まっているようだが、これが高給取りの外資マンリストラの一因になっているという。

  • 株式・債券・為替各市場のアベノミクス解釈

    山崎 元のマネー経済の歩き方
    株式・債券・為替各市場の アベノミクス解釈

    2013年3月23日号  

    先日、あるブログを読んでいたら、株式市場はアベノミクスでインフレになるとはやして株高で反応し、債券市場はアベノミクスではインフレにならないとわかっていて冷静に長期金利低下で反応し、為替市場は心理戦の世界なので「アベノミクスは円安材料だ」と人々が信じていると推測して円安に反応したが、いずれかの市場が間違っているのではないかという記事があった。その記事の筆者は、株式市場の参加者はあまり頭がよくないので、間違っているのではないかと言いたげだった。筆者は3商品をすべて売買したことがあるが、主なキャリアは株式のファンドマネジャーだ。腹を立ててもいいところかもしれないが、若いころに株式運用の世界に入って、「株の世界の連中は、経済のことをこんなに知らないのか!」と同様の感想を持ったことがあるので、気持ちはわかる。

  • 広告付きの記事や講演にご用心!

    山崎 元のマネー経済の歩き方
    広告付きの記事や講演にご用心!

    2013年3月16日号  

    誰でも「評論家」になることができる。そのビジネスモデルは、(1)本を書いて「先生」と呼ばれ、(2)テレビ等で顔を売り、(3)講演でもうける、のおおむね3段階だ。投入時間当たりの報酬は講演が圧倒的にいい。だが、経済系、特に運用関係がテーマの講演の仕事は、リーマンショックで半減、東日本大震災でまた半減という感じで減っていた。しかし、最近の「アベノミクス相場」で増加に転じたようだ。資産運用を考えるセミナーや講演が目に付くようになった。特定の媒体を批判するつもりはないので詮索しないでもらいたいが、先般、筆者はある紙媒体が主催する資産運用をテーマとする講演の仕事を引き受けた。一般向けの講演を行い、講演内容を記事にして、記事と同ページに広告が入るという企画だった。「広告」の片棒を担ぐことが少し心配だったが、部数の多い媒体であり、多くの読者にメッセージが届くことが魅力的だった。主催者も、今回は「レベルを少し上げて、率直な内容を伝えてほしい」という。

  • 運用初心者へ四つの心得

    山崎 元のマネー経済の歩き方
    運用初心者へ四つの心得

    2013年3月9日号  

    いわゆる「アベノミクス」で円安と株高が進み、お金の運用に興味を持つ人が増えてきた。これから運用を始めようとお考えの読者もおられよう。本稿では、運用初心者のための心得を四つお伝えしたい。心得は以下の通りだ。

  • ファンドマネジャー個人の資産運用

    山崎 元のマネー経済の歩き方
    ファンドマネジャー個人の資産運用

    2013年3月2日号  

    テレビやラジオでおカネの運用に関係する話をすると、高い確率で「山崎さん自身のおカネの運用はどうしていますか?」と質問される。下品とは言わないまでも、下世話を持ち味とする司会者は、気が利いた質問だと思うらしい。個人投資家の中にも、「本人がやっている運用でうまくいっている人の話でなければ信用しない」という人がいる。マネー評論家の中にも、見通しをはずし続けながらも、「私は、ここに書いた通りのポジションを自分でも持っている」と、自分の資産運用を議論の説得材料に使う人がいるから、「自分の運用」には一定の説得力があるのかもしれない。

  • 期待リターンは社会的に決まる

    山崎 元のマネー経済の歩き方
    期待リターンは 社会的に決まる

    2013年2月23日号  

    お金の運用について説明する際に、うまく伝えるのに苦労するけれども大切な機微は、資産の「期待リターン」の決め方だ。多くの人の資産運用に関するイメージは、経済の大きな流れを読んで、市場の動きを予想し、資産配分を決めて、次に、個々の企業を調査して投資する銘柄を決めるといった流れだろう。運用会社からの運用結果に対する説明(しばしば「言い訳」)が、この流れなので、これが普通の考え方だと思うのも無理はない。

  • 次のバブルが来るなら何が起こるか

    山崎 元のマネー経済の歩き方
    次のバブルが来るなら 何が起こるか

    2013年2月16日号  

    最近、雑誌の見出しなどで「安倍バブル」という表現をよく見かけるようになった。バブルは「長期的に維持できないほどの資産価格の高騰」とするのが一般的な定義だ。問題は、その最中に「今の株価はバブルだ」といった判断が可能かどうかだ。この問題については、グリーンスパン前FRB(米連邦準備制度理事会)議長のように、バブルはそれが崩壊して資産価格が下がってみなければ(確か4割くらいと言っていたと思う)、バブルだと認識できないという考えと、ある程度は認識できるはずだという考え方がある。両説の差は、経済政策の望ましいあり方と責任について異なる意味合いをもたらすので、政策論として重要だが、投資家としては、「現在形」で判断するしかない。

  • アベノミクス相場のチェックポイント

    山崎 元のマネー経済の歩き方
    アベノミクス相場のチェックポイント

    2013年2月9日号  

    総選挙が決まってから、安倍政権の経済政策に期待が集まり、円安と株高が急激に進んだ。初めは懐疑論もあったが、今やほとんどの一般雑誌が「株価はまだまだ上がる」という論調になった。そうすると雑誌が売れるのだという。目下の市況を「アベノミクス相場」と呼ぶとして、当面のアベノミクス相場と付き合う上でのチェックポイントを挙げておこう。まず、「インフレ目標2%」がどのくらい強く日本銀行を拘束するか、その程度の機微が重要だ。

  • 読書会形式の投資勉強会のすすめ

    山崎 元のマネー経済の歩き方
    読書会形式の投資勉強会のすすめ

    2013年2月2日号  

    投資の「理解力」を身に付けるには、どうしたらいいのか。大きく分けて、独学と、グループで勉強する方法がある。強靱な知性と、自分の理解を自分で疑うことができる高度な客観性を持っている人の場合、独学でもいいかもしれないが、投資の原則にはほうぼうに誤解しやすいポイントがある。グループ学習が有効だろう。

  • 運用のため「だけ」の株価指数の可能性

    山崎 元のマネー経済の歩き方
    運用のため「だけ」の 株価指数の可能性

    2013年1月26日号  

    以前に本欄で触れたことがあるが、現実に存在する株価指数には、複数の機能がある。これらが混在することによって、単独の機能に対して不具合が生じている。株価指数の機能は、控えめに見ても三つある。まず、株式市場の動向を表す統計データだ。もともと時価総額の変化と平均的な株式投資のパフォーマンスをリンクさせた指標であったTOPIX(東証株価指数)はこの性格が濃い。他方、日経平均株価は、人気銘柄で見た日々の市場の動きに敏感な指数と考えるべきだろう。

  • 日本版ISA構想の注目点

    山崎 元のマネー経済の歩き方
    日本版ISA構想の注目点

    2013年1月19日号  

    通称「日本版ISA」と呼ばれている、英国のISA(個人貯蓄勘定)に範を取ったと目される少額の投資優遇税制の仕組みが金融庁を中心に検討されており、2014年度から導入されそうだという観測がある。現時点で構想されているらしき日本版ISAは、率直に言って使い勝手の悪い、中途半端な制度だ。これは、金融庁の責任というよりは、優遇税制の枠を広げたくない財務省側に問題がありそうだ。

  • 日本の投資信託の現状を知っておこう

    山崎 元のマネー経済の歩き方
    日本の投資信託の現状を知っておこう

    2013年1月12日号  

    投資信託評価会社のモーニングスター社の社長である朝倉智也氏が書いた『低迷相場でも負けない資産運用の新セオリー』(朝日新聞出版社)は大変参考になる。特に、日本の投資信託の現状を、データに基づいて批判的に説明した第1章は、例えば投信を顧客に薦める可能性があるファイナンシャルプランナーなら、赤線を引きながら、精密に読む価値がある。言い方を換えると、ここに書いてある事実を知らずに、他人に投信についてアドバイスしてはいけないということだ。

  • 「PBR1倍」の意味を考える

    山崎 元のマネー経済の歩き方
    「PBR1倍」の意味を考える

    2013年1月5日号  

    12月10日終値の日経平均株価は9533円だったが、翌日の「日本経済新聞」を見ると、この株価で、日経平均構成銘柄の平均PBR(株価純資産倍率)がちょうど1倍となる(純資産は前期末基準)。東証1部上場全銘柄の平均PBRは0.97倍とわずかに1倍を下回るが、こちらもほぼ1倍だ。PBR1倍というと、「株価の下値めどだ」と言われることが多かった。「下値めど」というのは、株価が下落した場合、そのあたりが「底」になるという意味だ。

  • 持ち家か、賃貸か、を整理する

    山崎 元のマネー経済の歩き方
    持ち家か、賃貸か、を整理する

    2012年12月22日号  

    持ち家がいいか、賃貸がいいかは、「永遠のテーマ」なのだそうだ。住宅雑誌でも、一般誌でも、繰り返し取り上げられる。ちなみに、筆者は、この種の企画で、「賃貸派」として取材されることが多い。確かに、筆者は、就職してからでも12回の引っ越しを経験しているし、ずっと賃貸住宅暮らしだ。背景は二つある。一つには過去の(特にバブル期の)明らかに高過ぎる住宅価格で家を買うほど筆者が愚かではなかったことだが、もう一つは、筆者が採算を度外視して自分の家を買えるほどのお金持ちではなかったことだ。

  • 安倍晋三氏の金融緩和政策は正しいか

    山崎 元のマネー経済の歩き方
    安倍晋三氏の金融緩和政策は正しいか

    2012年12月15日号  

    総選挙の実施が決まり、最大野党であり、世論調査的に優勢が伝えられている自由民主党の安倍晋三総裁の金融政策をめぐる発言に注目が集まっている。安倍氏は、2%以上のインフレ目標を定めて、これが達成されるまで強力な金融緩和を継続すべきだと述べている。彼の発言を受けて、ドル円相場は80円を超えて円安方向に、株価も上昇に転じて日経平均で9000円を回復するなど、市場は反応を示している。

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記者の目

  • 編集部 鈴木洋子

    20年前に見た業界再編の後の未来、こうなるとは予想してなかった

     2001年から04年まで、当編集部で記者として最初に担当した業界が半導体業界でした。当時は日本中が最初の大再編のさなか。日本の半導体はこれで本当に復活するのか?と、じりじりしながら取材し記事を書く毎日でした。日本の半導体の再生を信じてさまざまな活動をしていた東北大学の故大見忠弘教授や故坂本幸雄・元エルピーダメモリ社長にはとりわけお世話になりました。
     月日は流れ、日本企業がほとんどいなくなってしまった後、まさかこんな形で半導体の特集に関わる日が来るとは思っていませんでした。「日の丸半導体最後の挑戦」というタイトルは無数に使った気がしますが、今度こそ挑戦が本当に花開くことを、心から祈っています。

  • 副編集長 鈴木崇久

    人事からの呼び出しに早とちりは禁物?

    「お伝えしたいことがあるので時間をください」と、ある年の3月に人事から呼び出されたことがあります。3月といえば異動の内示の季節。「編集部から出るのか」と覚悟を決めて応接室に向かったところ、全くの別件で逆に衝撃を受けました。
    「紛らわしい時期なんだから用件を先に伝えてくれればいいのに」「センチメンタルになった時間を返してほしい」などと思いながら、部屋を後にしたことを覚えています。
     そんな経験から何年もたちましたが、今度こそ14年半過ごした編集部を離れることになりました。最近は記事執筆の機会が減って、読者の皆さまにとって影が薄い存在でしたが、この場を借りて今までのお礼をお伝えできれば幸いです。

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表紙

特集高成長&高年収企業がぞろぞろ! 半導体 160社図鑑 これから買える株!

株式市場で大きな支持を集め、日経平均株価の最高値更新を支えた半導体関連銘柄。高成長で好業績であるだけではなく、高い年収を誇る企業も多い。ただし、玉石混交で、大手の中にも変調を来しそうな企業がある。一方で、今はあまり知られていない隠れたお宝銘…

特集2日銀「次の一手」は? 金利ショック 襲来

日本銀行がついに異次元緩和に別れを告げた。マイナス金利解除の決断を受け、市場の関心は早くも日銀の「次の一手」に移っている。17年ぶりの利上げで日本経済と今後の金融政策はどう変わるのか。「金利ショック」襲来の影響と課題を徹底検証する。