『週刊ダイヤモンド』5月1日・5月8日合併号の第一特集は「税務署が狙う! 富裕層 最強の節税」です。現在、国税が富裕層へ次々と鉄槌を下し始めています。不動産を使った節税は過去分までNGになるという強烈規制が開始、裁判では法律通りに申告したのに敗訴する事例が続発しているのです。さらに、この秋以降は税務調査の嵐が始まりそうです。富裕層、相続、仮想通貨、退職金、副業、中小企業経営…。どうすれば企業や個人は税務署に目を付けられずに済むのでしょうか。抜け道はあるのでしょうか。

秋からの税務調査の嵐
税務署はどこを狙う?

「コロナ禍で、納税者の所に無理やり行けない。脱税の刑事事件の摘発もだいぶ進行が遅れている。任意調査も強制調査も積極的にやれていなかっただろう」

 ある元国税調査官の税理士は、去年から今年にかけての税務当局の動きをそう分析する。実際、国税庁が昨年11月に公表した「令和元年事務年度(2019年7月~20年6月)」の税務調査の実地調査件数は、緊急事態宣言発令の影響もあり、法人税、所得税、消費税(個人事業主)で約20~30%も減った(下図参照)。昨年の後半は宣言解除になっていたものの、元国税調査官で今は調査を受ける側にいる冒頭の税理士は「それでも、かなり減っているのが実感」だという。

 だからといって「コロナ禍のため税務調査は来ないだろう」と思ったら大間違いだ。昨年、思うような調査ができなかったからこそ、今年はこれまで以上に、より大きな金額で、効率的に徴収できるものをターゲットにして狙ってくるとみられている。

 そして今年の秋、9月から11月にかけて、特に気合を入れた税務調査が行われる可能性が高いと、多くの税務調査を経験してきたあるベテラン税理士は予想する。それはなぜか。

 官庁の年度は通常4月スタートだが、例年3月の半ばに確定申告の締め切りがある税務当局に関しては3カ月遅れの7月スタートとなっている。税務当局の1年は7月から翌年6月までだ。

 さらに税務調査官は、調査件数について一般企業の営業職等と同様のいわゆる「ノルマ」があり、人事評価では税務調査で、申告された額よりどれだけ多く税金を徴収できたか、その「増差」額によって判断されるという。

 7~8月は年度初めの引き継ぎ作業や調査先の選定などでまだ本格的な活動が行われず、12月は年末年始を控えて活動をいったん締め、1~3月は確定申告で繁忙期になる。人事異動が7月にあるが、4~6月の成果は人事に反映されるわけではないため、あまり活発に新たな活動が行われない。つまり、9~11月が、調査官たちが自らの成果を上げるべく、最も本腰を入れて調査を行う時期だといわれている。

 例年のそうした傾向に加え、今年は昨年のコロナ禍で着手できなかった事案が“たまっている”可能性があり、それが今秋、調査の「嵐」が吹き荒れるかもしれないとされるゆえんだ。

 では、その嵐の中、調査官はどこをターゲットにしてくるのか。

 税務署がターゲットにするのは、基本的にはやはり“金持ち”だ。国税庁が19年3月に作成した「税務行政の現状と課題」では、「重点的に取り組んでいる事項」として「経済社会の国際化、富裕層への対応」「消費税の不正還付防止」「無申告の把握」の3点を挙げている。先のベテラン税理士は「富裕層は金額が大きいのでおのずと調査対象になりやすく、さらに、増差が調査官の評価に結び付くことを考えると、無申告者からの徴収は増差額が大きくなるためマークされやすい」と話す。

 昨今のトピックスとして、個人がメルカリ等でネットビジネスを行い、SNSに「もうかった!」などと無邪気に投稿しているケースは調査官の目に付きやすいという。申告書類はもちろん、調査官はSNSまでもチェックしているのだ。

 さらに、税務当局は世間の目を気にする。金余りが続き、投資に成功した人とそうでない人の格差が広がる中、仮想通貨も要注意といえるだろう。現状では、仮想通貨が国税の網の目を擦り抜けているケースもある。その動きが拡大すれば、今後、税務当局が黙ってはいないだろう。

 実際、あまりに目につくからか、すでに規制されてしまったものがある。これまでは不動産は保険と並び“二大節税商品”の一つだった。特に海外不動産を利用した節税策は富裕層を中心に近年人気を集め、オープンハウスなどの大手不動産会社がこぞって販売するほど。ところが業を煮やした国税が、過去に不動産を購入した者までひとからげで節税効果を帳消しにする前代未聞の強烈規制に2021年度から乗り出したのだ。

 コロナ禍でも税務調査の手が緩められることはなく、富裕層、コロナ禍でも“もうかっている”企業、そして多様な稼ぎ方で新たな利益を手にしている個人に対しては、特に調査官は目を光らせている。もちろん、まっとうに納税していれば何も恐れることはないが、この秋は特に、調査官の“手の内”を知り、正当な節税対策の知識を身に付け、備えを万全にしておきたい。

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 高年収ビジネスパーソンから土地持ちまで、あるいは、仮想通貨で“億り人”になった人など、富裕層に対して税務署の包囲網がますます強くなってきています。

 そこで『週刊ダイヤモンド』5月1日・5月8日合併号の第一特集は「税務署が狙う! 富裕層 最強の節税」をお届けします。

 特集では税務署がどこに狙いを定めているのか、具体的に最新の事例を紹介しています。そして、税対策のプロが最新の富裕層の節税対策を伝授。鉄板の相続対策も開陳しています。中にはそのプロたちも憂うほどの、驚きの抜け道も…。

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