最高額は1900万円──。本誌「ビジネスパーソン3300人給料アンケート」の回答者で年収が最も高かったのは、三菱東京UFJ銀行の50代の部長だった。東海東京フィナンシャル・ホールディングスの50代の部長も、同額で並んでいる。金融業界の高年収ぶりがあらためて浮き彫りになった格好だ。
金融に次いで高給取りなのが自動車。日産自動車、ホンダの部長が、40代で共に1800万円を稼いでいる。日産では外部から引き抜いた「外国人部長」なら2500万円クラスもいるという。国際競争力の高い自動車業界ならではの気前の良さである。
対照的に凋落著しい電機業界は年収も低迷気味。不正会計で存続の危機にある東芝の関連会社は軒並み年収ダウンの憂き目に遭っている(左ページ図参照)。昨年、台湾の鴻海精密工業傘下に入ったシャープは、50代部長で1300万円と、買収される前とあまり変わっていない。気を吐いているのがソニーで、50代の部長で1700万円の高年収を誇っている。
金融と並んで高給取りのイメージがある商社はどうか。50代の三井物産室長が1700万円でトップ。同じく50代の住友商事部長が1600万円で続いている。ただ、両社とも2015年度の業績が悪く、年収は前年からダウンしている。一方、15年度に商社トップの業績をたたき出した伊藤忠商事は、実力主義型の給料制度を採用しており、30代の一般社員でも年収は1200万円に達している。
好景気で建設需要が高まる不動産や建設業界は、三井不動産が20代の主任クラスで年収1000万円を超えるなど高水準だ。
15業種80社の88人が明かしてくれた年収実額は、業種によっては役職や年代がばらばらで、横に並べてきれいに比較することは難しい。しかし、有価証券報告書に記載された平均年収からは見えてこないリアリティーがある。
役職定年で給料3割カット 肩書き・権限もなくなる50代のリアル
三菱東京UFJ銀行に勤めるある部長はこの春、岐路に立たされている。50代半ばを迎え、「役職定年」が迫っているからだ。
役職定年とは、定年前に管理職としての定年を設定し、ポストを後進に明け渡すことで管理職の新陳代謝を図る制度だ。本誌の「ビジネスパーソン3300人給料アンケート」によれば、役職定年制は回答者のうち49%が勤める企業で導入されており、うち34%は早ければ「55歳以下」で迎える。
前出の部長も役職定年の対象者。3割程度の給料カットが見込まれ、さらに子会社に転籍になりそうだという。待遇はこれまでに比べて「相当悪い」と覚悟している。
有名企業の知られざる役職定年の実態を下表にまとめたので、参考にしてほしい。
多くの人が忙しさに追われてセカンドキャリアを真剣に考えることなく50代を迎えている。本誌の給料アンケートでは、役職定年になるまで安穏と過ごしてしまったことを悔やむ声も多かった。
「本当にラインから外れるとは思わなかった。会社定款をよく読み、勤めがいのある会社を探す努力をすべきだった」(電機メーカー・60代部長クラス)
「当たり前かもしれないが、役職・報酬は能力ではなく、会社への貢献度(期待充足度)で決まることをもっとよく認識し、行動すればよかった」(シンクタンク・50代役員クラス)
「役職定年制は有名無実化しているが、早期に自信があるスキルを生かす転職を行い、自己の満足・納得感を得られるように動いておけばよかったと反省している」(卸売業・50代部長クラス)
では、どうやって50代以降のセカンドキャリアを築けばいいのか。特集では、「後悔しないためのセカンドキャリアの築き方5箇条」をまとめたので、ぜひ参考にしてほしい。
本誌初の試み!給料もらい過ぎ/もっともらえる企業ランキング
『週刊ダイヤモンド』4月8日号の第1特集は「知らないと損する!給料の秘密」です。今回は、従来にない給料特集をつくろうと、三つの試みを行いました。
一つ目は、本誌読者と転職サイト・ビズリーチへの登録者を対象とした「ビジネスパーソン3300人給料アンケート」です。この調査によって、給料の赤裸々な実態が明らかになりました。
従来の給料特集では、基本的には上場企業の有価証券報告書に記載された「平均給与」のデータを使用していたため、実際に働いている人の給料とは乖離がありました。
そこで今回は、3300人にずばり年収の実額を尋ねて、その結果を業種ごとにまとめました。ただ、回答者の業種や年齢、役職にはばらつきがあるため、業種ごとに同じ年代・同じ役職で年収を比較できない場合もあります。
例えば商社の年収を比較する際に、三菱商事は40代部長の年収を、伊藤忠商事は30代一般社員のそれを掲載しています。横に並べてきれいに比較することはできませんが、ピンポイントで回答者のプロフィールと年収実額がわかることで、平均年収では見えなかったリアリティーを感じていただけるのではないかと思っています。
二つ目の試みとして、「給料もらい過ぎ/もっともらえる企業ランキング」を作成しました。各社の業績や規模、業態などから、給料の適正水準として「40歳理論年収」を算出し、各社の40歳推計年収と比較。理論年収よりも推計年収が高い企業は「もらい過ぎ」、その逆は「もっともらえる」企業として順位付けしたのです。果たしてどんなランキングになったのか、特集本編をご覧ください。
三つ目は、年収の国際比較です。人事コンサルティング会社の米マーサーの協力を得て、日本、米国、ドイツ、英国、北京、上海、香港、韓国、シンガポール、マレーシア、インドの11の国・地域の業種別・役職別の年収ランキングを作成しました。果たして日本の年収は国際的にみて高いのか、低いのか。衝撃の結果が待ち受けています。
この他にも、日本特有の役職定年制度がもたらす50代の給料と仕事の激変や、給料明細を活用した収入アップの方法など、給料にまつわる情報が満載です。
この春入社したばかりの新人の方も、中堅、ベテランの方も、これまでとはひと味違う給料特集をぜひ手に取ってご覧ください。