記事一覧:連載小説 『シャッターがなくなる日』26

  • 第二章 一人の覚悟  [第06回]

    連載小説 『シャッターがなくなる日』
    第二章 一人の覚悟  [第06回]

    2018年3月31日号  

    「え、えーと、ここが裏庭で、ここに小さな小屋があって、ここが母屋になります。えーと、できれば地域における賑わいの核のような施設にできないかなと……」つくってきた資料をプロジェクターで投影しながら、佐田たちが主催するマーケットに出店している30人ほどの人たちに解説をする。急にこんなことをするはめになったのは、僕が佐田に「本当にうちに出店してくれるなんて人がいるかわからない」と言ったことに端を発していた。

  • 第二章 一人の覚悟  [第05回]

    連載小説 『シャッターがなくなる日』
    第二章 一人の覚悟  [第05回]

    2018年3月24日号  

    「いやぁ、そんな勝手に方針変えられましてもねぇ、ええ」あからさまなしかめっ面で、さきがけ銀行の担当者である山田は渋った。土地を売却し、これまでの借り入れをチャラにする相談をしていたのに、急に売却せずに物件を人に貸す事業を始めたいと言い出したわけだから、僕だって無茶を言っているのはわかっている。

  • 第二章 一人の覚悟  [第04回]

    連載小説 『シャッターがなくなる日』
    第二章 一人の覚悟  [第04回]

    2018年3月17日号  

    「それでは、開会のご挨拶をお願いします」市長が壇上にあがって挨拶を始めた。イベント当日はあいにくの雨。地元のテレビ局が予定どおりに取材にきて、ご当地アイドルグループが各店舗を回っている。パイプ椅子が並んだイートインコーナーには、まばらに人がいるだけだった。

  • 第一章 黒い善意  [第03回]

    連載小説 『シャッターがなくなる日』
    第一章 黒い善意  [第03回]

    2018年3月10日号  

    「あのさぁ、どうにか前日にこれないのかよ」電話口から聞こえる森本の声は、明らかに苛立っていた。語尾に舌打ちさえ聞こえる。「わ、わかってるよ。けど、連休前に休みとって帰れるわけないじゃんか……」遮るように、「だからそこどうにかならないのかよ。やると言ったことはちゃんとやってもらわないと困るんだよねぇ、ほんと。瀬戸はさぁ、そういうところがダメなんだよ。設営はやるって言ったんだから、やってもらわないと」吐き捨てるように電話は切れた。

  • 第一章 黒い善意  [第02回]

    連載小説 『シャッターがなくなる日』
    第一章 黒い善意  [第02回]

    2018年3月3日号  

    久々に実家を訪れ、いきなり家業を畳むことが決まってから2週間。気づけば仕事が忙しいのにかまけて、ほとんど手を付けることもなく時間だけが経ってしまった。要領がいいわけでもないから、複数のことを同時になんてできないや。

  • プロローグ 帰郷  [第01回]

    連載小説 『シャッターがなくなる日』
    プロローグ 帰郷  [第01回]

    2018年2月24日号  

    「……ちょっとお母さん話したいことがあるから、一度、家に帰ってきて」スマホに珍しく表示された「母」の文字に驚いて電話にでたら、いつになくか細い声が聞こえた。どうしたのかと聞いても、答えらしいものはわからない。「ひとまず週末にそっちに一度帰るから、一旦切るね」「元気だけが私の取り柄!」が口癖の楽天的な母の弱った声に、あまり詳しいことは聞かずに帰省することにした。

定期購読キャンペーン

記者の目

  • 編集委員 藤田章夫

    新NISAを追い風にする保険業界のしたたかさ

     新NISAが1月からスタートし、保険の販売には逆風かな?と思っていたら、「むしろ追い風になっていますよ」との声が多数。
     資産運用の相談に来た人に、「投資信託は資産が減ることもありますが、変額保険の死亡保険金額には最低保証があります」と言えば、「保険の方がいいか」となるようです。
     本来は、資産を運用したいのか保障が欲しいのか、目的に応じて使い分けたいところですが、これがかなり難しい。
     そこで、保険ジャーナリストの森田直子さんとファイナンシャルプランナーの風呂内亜矢さんに、保険と運用それぞれの立場から対談を行っていただきました。面白過ぎて、対談時間はあっという間に過ぎました。ぜひご一読ください。

  • 副編集長 名古屋和希

    “予定調和”の買収は今後減少?

     第一生命ホールディングスが3月に福利厚生代行のベネフィット・ワンを買収しました。この買収劇は異例の展開をたどりました。
     先に買収を表明したのは医療情報サイト運営のエムスリーでした。そこに第一生命が参戦したのです。結局、エムスリーよりも好条件を提示した第一生命が買収戦を制しました。大企業による対抗的な買収は極めて珍しいものです。
     従来、事業会社はイメージ悪化などを恐れ、「敵対的」な買収を控えてきました。ただ、近年はルール整備などを背景に「同意なき買収」が広がる機運が出ています。買収が活発になれば、企業・業界の新陳代謝も促せます。今後、“予定調和”の買収は減っていくかもしれません。

最新号の案内24年4月27日・5月4日合併特大号

表紙

特集保険vs新NISA 今「契約したい保険」は? 生保商品ベスト&ワーストランキング

保険とNISA、どちらに資金を振り向けるべきか──。新NISAをきっかけに投資熱が高まる中、多くの人が抱える悩みだ。そこで保険とNISAで迷ったときの考え方や保険の見直し方、保険のプロ29人が辛口採点した生命保険商品ランキングを、業界の深部…

特集2変局 岐路に立つNHK

NHKが大きな岐路に立たされている。今国会で放送法改正案が可決されれば、ネット視聴も受信料徴収の対象となる。一方で、今後、NHKの受信料収入は人口減やテレビ離れを背景に先細る可能性が高い。職員数1万人を誇る巨大公共放送機関は、「みなさまのN…