『週刊ダイヤモンド』3月9日号の第1特集は「後悔しない医療・介護」です。自分や親、家族が最適な治療や介護サービスを受け、後悔しない人生を送るために必要な最新の情報をお届けします。(ダイヤモンド編集部 臼井真粧美、野村聖子)

特養の入居待機者数は
大幅に減っている

 人生100年時代になると、親子ともども高齢者になる。子どもの方が認知症になったり、先に亡くなったりすることもある。親子そろって高齢者向け施設に入ることもある。

Photo:PIXTA

 2025年には全員75歳以上の後期高齢者になる団塊世代は、そもそも人生設計において子どもを当てにしていないことが多い。核家族化の時代を生き、子ども世代に介護を頼ろうという意識が薄いのだ。

 団塊世代はもちろん、その下の世代も「60歳の節目を迎えたら老後の人生設計を考え、正月なり誕生日なりに毎年見直して更新するのがよい」とUビジョン研究所理事長の本間郁子氏はいう。このとき、認知症になったり、介護が必要になったり、自宅暮らしに限界が来たりすることも想定して、早めに終の棲家探しの準備をしておきたい。

 老いれば、程度の差はあれ、多くの人に認知症の症状が現れる。認知症が進んだときにどこで生活を送るか、最期の看取りをどうするのかを考えておくのだ。この考えも病気になったり、年齢を重ねていく中で変化するので、毎年再考したい。

 このとき大事なのが、自分のことだけでなく、世の中、医療、介護などの情報もアップデートすること。これらもどんどん変化しているからだ。

 公共の高齢者向け施設である特別養護老人ホーム(特養)は「安かろう、悪かろう」なのに入居待ちで順番が回ってこない──。そう思い込んでいるとしたら、その情報はもう古い。

 15年度に入居者の対象を原則として「要介護3以上」に絞ったことで、14年度に52.4万人いた待機者数が22年度には27.5万人まで大幅に減っている(下図参照)。

「平均入居期間はどんどん縮まってきている」と、特養に詳しい本間氏。定員100人の施設は3年でその100人が入れ替わるくらいまでに回転は速くなっているという。以前よりも待たずに済むようになっているのだ。

 また、全個室で居室前に共有のリビングスペースを備えた、「新型特養」と呼ばれるユニット型施設が増えている。

 個室は「プライバシーが守られやすいし、認知症の症状に対応しやすい。最期を穏やかに過ごすことができる」と本間氏。特養は今、認知症になっても最期を看取ってもらえ、自分らしく人生を最期まで生き抜く「終の棲家」として有力な選択肢となり得るのだ。

初診料アップで医療従事者は賃上げ
患者側は自己負担が増える

 また、最新情報を目下、収集すべきなのが医療と介護の報酬改定。24年度は、6年に1度だけ訪れる医療と介護が同時に報酬改定される年だ。

 世の中で物価や賃金が上がり、業界においては人手不足が深刻化する中で、今回の改定は医療報酬(医療サービス部分)も介護報酬も賃上げに充てるかたちで引き上げられた。医療機関や介護事業所の収入は国の定める報酬で固定されており、他の産業のように価格に転嫁できない。今回の改定でプラスするのは道理であった。

 この改定を個別に見ると事業者への影響はプラスもあれば、マイナスもある。また、患者・利用者への影響は事業者と異なってくる。

 外来受診における初診料と再診料、および入院基本料が引き上げられるのは、医療機関側にとっては基本的にプラス。医師など医療従事者の賃上げにつながるが、患者側は自己負担が増える。物価などを反映して特養や介護老人保健施設(老健)の居住費が引き上げられ、これも利用者側の負担アップとなる(下表参照)。

 訪問介護の基本報酬は軒並みマイナス改定になり、事業者は怒りをあらわにしている。利用者にとって介護保険サービス費の負担は減るものの、実はサービスが受けにくくなるという大きな副作用が懸念される。そうなると利用者にとってもマイナスの影響の方が大きくなる。

 病院の敷地内にある「敷地内薬局」の調剤料金が大幅に引き下げられるのは、敷地内薬局にとっては大打撃。患者にとっては単純に、調剤料がお得になる。

 医療においてはこのほかに、認知症の新世代治療薬が登場しており、それ自体は患者側にとってプラス。しかし、実際には希望したからといって治療にたどり着けるわけではない。治療を希望する患者が、処方する適応から外れていることが多いのだ。

 期待していた患者の中には、処方対象にならずに絶望する者もいる。その一方で、新たな治療チャンスを得る者もいる。

 医療や介護は、命や生活に大きくかかわってくる。後悔しない人生を送るためには、医療・介護のさまざまな変化について自分たちにどんな影響が出るのかまで、最新情報を深く知ることが重要だ。

看取り実績がある788施設
終の棲家「特養」厳選リスト

『週刊ダイヤモンド』3月9日号の第1特集は「後悔しない医療・介護」です。24年は、医療と介護が6年に1度だけ同時に報酬を改定する年。医療機関や介護事業者に支払われる報酬が改定されたり、認知症を治療する新薬が登場したり、今この瞬間も医療と介護はどんどん変化しています。

 この10年近くで入居待機者数が大幅に減り、全て個室のユニット型が増えている特養については、看取り実績で厳選した788施設のリストを作成しました。空きがあればどこでも駆け込むのではなく、「安かろう、悪かろう」と切り捨てるのではなく、特養も施設個々の情報を収集して選ぶ時代です。

 24年ぶりに新世代が登場した認知症薬に関しては、「夢の新薬」と呼ばれる新しい薬の処方を受けて恩恵を得る方法を明らかにしました。

 自分や親、家族が最適な治療や介護サービスを受け、後悔しない人生を送るために必要な最新の情報をお届けします。