『週刊ダイヤモンド』1月21日号の第一特集は「超・階級社会 貧困ニッポンの断末魔」です。日本はついに「超・階級社会」を迎えようとしています。アベノミクスは「勝ち組」と「負け組」をはっきり分け、日本を“1億総下流”社会へと変えました。さらに大規模階層調査の最新データが明かすのは、“コロナショック”による階級格差のさらなる拡大です。為替相場の激変やインフレも直撃し、「日本版カースト」は苛烈化しています。「貧国ニッポン」の実像をお届けします。 (ダイヤモンド編集部 堀内 亮)

超・階級社会は
下克上が起こり得ない

平均的な日本人が「真ん中」というのは、幻想にすぎない。かつては存在した分厚い中間層は総崩れとなり、格差が急拡大。日本は“一億総下流”社会へと変貌を遂げた(写真はイメージです) Photo:PIXTA

 中国、シンガポール、オマーン…。都心の超高級タワーマンションに居を構えるのは、実はこうした国の人々だ。もちろん、億円を超える高級物件を所有する日本人もいるが、彼らはごくごく限られた「上級国民」。平均的な日本人にとって、雲上人といえる存在だ。

 もっとも平均的な日本人が「真ん中」というのは、幻想にすぎない。かつては存在した分厚い中間層は総崩れとなり、格差が急拡大。日本は“一億総下流”社会へと変貌を遂げた。そして新型コロナウイルスの感染拡大やインフレが引き金となって、拡大した格差が完全に固定化する「超・階級社会」を迎えようとしている。

 超・階級社会を招くのは、「低成長」「低賃金」「弱過ぎる円」「貿易赤字の常態化」の四重苦だ。

 バブル崩壊以降、低成長にあえぐ日本では企業の従業員の給与は伸びず、先進国で最下位、発展途上国並みの低賃金に陥った。長年続いた低成長と低賃金は、日本にデフレマインドを植え付けた。

 2012年末、第2次安倍政権がデフレ払拭に向けて「アベノミクス」を始動。これに歩調を合わせ、日本銀行は大規模金融緩和に踏み切った。あえて「弱過ぎる円」へと誘導したのだ。

 「円安は得をする人と損をする人が大きく分かれる相場現象。アベノミクスは失敗に終わった」。みずほ銀行チームマーケット・エコノミストの唐鎌大輔氏は、そう総括する。

 メリットを享受したのは、円安などを追い風にした株高で富を増やした上級国民だ。その一方で、円安と貿易赤字の常態化という「弱いニッポン」を警戒した上級国民は、円を外貨に替えるなど資産防衛も怠らなかった。

 これに対し、中級以下の国民は大して得をしなかった。円安によって企業が好業績に沸いても賃金の上昇にはつながらず、家計への恩恵は少なかったからだ。

 アベノミクスの厳しい現実を突き付けたのは、野村総合研究所が20年に実施したアンケート調査に基づく推計だ。上級国民に当たる準富裕層以上は資産を増やした一方で、中級国民、下級国民であるアッパーマス層、マス層は資産を減らした。富める者は富み、貧しい者はより貧しくなったのだ。

 かつてジャパン・アズ・ナンバーワンと称された日本はいまや「貧国ニッポン」と化した。下克上が一切起こり得ない理不尽な超・階級社会が迫っている。

賃上げ旋風に冷や水、衝撃の階層調査データ初公開
三菱商事、デンソー…外資があさる高年収人材16職種

 『週刊ダイヤモンド』1月21日号の第1特集は「超・階級社会 貧困ニッポンの断末魔」です。日本はついに「超・階級社会」を迎えようとしています。アベノミクスは「勝ち組」と「負け組」をはっきり分け、日本を“1億総下流”社会へと変えました。

 そしてコロナショック前後で、階級構造がどうなったのか。『新・日本の階級社会』の著者、橋本健二・早稲田大学人間科学学術院教授の協力の下、最新階層調査データを初公開します。あなたは全8階級のうち、どこにいるでしょうか?勝ち組か、それとも負け組かーー。

 超・階級社会の上流階級は、中流貧民を寄せ付けません。三井不動産グループや三菱地所グループなどが手掛けるマンションは価格高騰を続け、都内では“億ション”が当たり前になっています。こうした高級マンションのお得意様は、ごくごく限られた上級国民です。

超・階級社会で「勝ち組」ともいえる一流企業の優秀な人材は、グローバルで比較すればまだまだ「安い」です。外資系企業は三菱商事やデンソーなどの一流企業のエリートを買い漁ろうとしています。

富める者は富み、貧しい者はより貧しくなるーー。すでにニッポンが変貌を遂げた“1億総下流社会”の今、そしていよいよ迫る超・階級社会の行く末を先取りしたビジネスパーソン必見の1冊です。