『週刊ダイヤモンド』10月30日号の第一特集は「駆け込み相続&死後の手続き」です。毎年110万円の贈与税の非課税枠を活用する「生前贈与」の節税術が、早ければ2022年にもダメになる見通しです。民法大改正や税制改正、コロナ禍に伴う社会変化や税務当局の徴税強化など、相続を取り巻く環境は激変しました。家族を困らせないために、今しかできない「駆け込み相続」対策をお届けします。(ダイヤモンド編集部副編集長 大矢博之)

相続税額の平均は1714万円
「駆け込み贈与」を勧める税理士たち

「相続の〝大増税〟時代が迫っています。今なら『駆け込み贈与』をお勧めします」──。

 目端が利く税理士たちは今、顧客にこんな営業トークを繰り広げているという。

 国税庁によれば、2019年に亡くなった人は約138万人で、このうち相続税の課税対象となった被相続人は約11.5万人だった。死亡者全体の8.3%と、実に12人に1人が相続税を課されているのだ。

 ただし、この数字は全国平均である。東京都に至っては、19年の死亡者約12万人のうち、課税対象となった被相続人は16.3%の約2万人。実に6人に1人が相続税を課されている。

 その上、この数字は財産を遺して亡くなった人の数だ。相続税を支払うのは、妻や子供など残された家族で、関係者は増える。

 実際に相続税を納税することになった19年の相続人の数は約25.5万人で死亡者の約2倍。そして、被相続人1人当たりの相続税額の平均は1714万円に上る。

 相続と相続税の問題は少しずつ身近に迫っており、また大きな負担が発生する問題なのだ。

 また、相続税から逃れようとすると、手痛いしっぺ返しを食らう。

6人に1人は相続税を調べている税務署
税務調査を受けた85%で申告漏れが発覚

 19年度の税務署による相続税の税務調査件数は1万0635件で、電話連絡などの簡易接触は8632件。課税対象となった被相続人の約6人に1人を調べている。

 そして税務調査を受けた場合、申告漏れがバレる割合は85%超だ。追徴税額の平均は641万円と、目を付けられたらほぼ間違いなく高い授業料を払う羽目になる。

 そんな相続税も、事前に対策すれば合法的に負担を減らせる。その筆頭だった「生前贈与」が、早ければ22年にも封じられる見通しだ。そんな相続税の大増税をビジネスチャンスとみた冒頭の税理士たちは、今しか使えない駆け込み贈与を指南しているのだ。

 また相続税だけでなく、遺産の分け方を巡って近親者でもめる「争族」もひとごとではない。家庭裁判所で争われる遺産分割は年間約1.5万件に上り、争族は平均で1日に40件発生しているのだ。

今からでも間に合う「駆け込み贈与」完全ガイド
損しない節税術から死後の手続きまで対処法満載

 『週刊ダイヤモンド』10月30日号の第一特集は「駆け込み相続&死後の手続き」です。

 財産が多ければ多いほど税率が高くなる相続税。このため相続税対策の基本とされるのが「財産を減らす」ことでした。その目的にかなう“最強”の節税対策として、「生前贈与」は広く利用されてきました。

 ところが相続税と贈与税の一体化で、生前贈与を使った節税術が早ければ2022年にもダメになる見通しです。

 でも実は、今しか使えない節税術があります。贈与税の非課税枠110万円を超えた「駆け込み贈与」で節税できるのです。その節税効果は最大で700万5000円。そして、駆け込み贈与の節税効果は資産の額や子供の数で変わります。

 幾ら贈与すればお得なのか。本特集では、今からでも間に合う駆け込み贈与を徹底解説。駆け込み贈与の節税額が最大になる、家族構成や資産別の早見表を用意しました。

 また、18年の改正相続法で、新しい相続の制度が次々と導入されました。でも注意が必要です。新たなルールをきちんと把握していなければ、泣く泣く土地を手放したり、「争族」を招いたりするリスクが潜んでいます。相続の落とし穴に落ちないための回避法や絶対に知っておきたいお得知識をまとめました。

 また、相続だけでなく、葬儀や墓などをはじめ「死後の手続き」にはお金と手間がかかります。人生の大団円を円満に迎えるためには、事前の準備が欠かせません。保険や年金などの各種届け出から認知症やがんなどの病気への備え、老後の資産運用術まで、損をしないための死後の手続きの対処法が満載です。ぜひご一読ください!