プライムを阻む流通株式時価総額100億円の壁
転落間際300社、「逆転上場」期待の277社を独自判定
来年4月の再編で新たに最上位となるプライム市場の基準に満たない1部上場企業は、7月9日時点で664社だ。この大半の企業が今、実は同じ“壁”にぶつかっている。それが「流通株式時価総額100億円以上」というプライム上場基準だ。
流通株式は、上場企業の発行済み株式から、株式を10%以上所有する主要株主や役員が所有している株式、自己株式など流動性が低い株式を除いたものをいう。また東証は今回から、経営の安定化を目的に企業同士が持ち合う「政策保有株式」についても、流通株式に認めていない。企業とすれば、より厳しい基準となる。
これら東証の定義にのっとり、今回ダイヤモンド編集部では、独自に流通株式時価総額を算出。この流通株式時価総額が低い順に300社を並べたランキングを作成し、本誌に掲載した。
ただし300社が全てプライムから脱落するかといえば、話はそう単純ではない。
なぜなら、300社の“懐事情”はさまざまだからだ。自社株買いや配当などの株主還元や成長投資に回す手元資金があれば、その企業は現在の流通株式時価総額を「100億円以上」に高められる可能性がある。
そこでダイヤモンド編集部は、プライム不合格の1次判定を受けたとみられる企業の時価総額をネットキャッシュで割った「ネットキャッシュ倍率」を算出。ネットキャッシュがプラスとなったプライム未達の企業277社のうち、この倍率が低い順にランキングも作成した。
ネットキャッシュ倍率が低いほど、実質的な手元資金に対して企業価値が割安であると見なされやすい。現在の流通株式時価総額に対して、キャッシュリッチな企業を順番に並べた形となる。
ランキング上位の企業は、株主還元への余力が相対的にあるといえる。つまり、プライム逆転合格を目指すために行動を起こし、株価上昇期待が望める銘柄だーー。
企業、投資家、金融機関、東証 4者が描く再編“ドタバタ劇”
『週刊ダイヤモンド』9月18日号の第1特集は「東証再編 664社に迫る大淘汰」です。
今回の東証再編を「ドタバタ劇」に例えるなら、スポットライトを浴びる舞台役者は東証に上場する企業たちです。流通株式時価総額100億円などに達しない一部上場企業は果たしてどのような手を使い、プライム市場への生き残りを図ろうとしているのでしょう。観客である投資家たちが、その一挙一動を見つめています。
無論、舞台は役者だけでは成り立ちません。観客への見栄えがよくなるよう照明や衣装などの担当も必要です。そうした裏方が、証券会社や銀行などの金融機関、コンサルティング会社でしょう。彼らはプライムに残りたい上場企業を支援し、その見返りとして報酬を受け取っています。
そして、劇場の運営者が東証です。彼らもまた、海外の証券取引所との「マネー争奪戦」にさらされ、国内外のより多くの観客を呼べる魅力的な劇場に改築すべく、再編という舞台仕掛けを用意しました。
『週刊ダイヤモンド』9月18日号の第1特集では、東証再編“劇”に関わる役者(上場企業)、観客(投資家)、裏方(金融機関)、劇場(東証)の動きを、4部構成で描きました。
それぞれの視点で再編の全体像をご覧いただければ幸いです。ぜひご一読ください。