『週刊ダイヤモンド』6月11日号の第1特集は「明暗分かれる生保・損保・代理店/保険商品 最強ランキング」です。未知なるウイルスに翻弄される中、保険に対する関心が高まっていますが、その一方で、金銭不祥事などが続々と噴出する保険業界に対して、厳しい選別の目が向けられています。そこで本特集では、生保・損保・代理店それぞれの業界“裏”事情に加え、保険のプロ28人が厳選した保険商品ランキングに至るまで、保険業界の全てを網羅した内容をお届けします。(ダイヤモンド編集部編集委員 藤田章夫)

金融庁検査で悪質節税保険にメス
マニュライフ生命の断末魔

「『名義変更による節税を目的とした保険募集』について、どのように評価していますか?」

 法人向け節税保険に過度に傾倒し、金融庁の逆鱗に触れた外資系生命保険会社、マニュライフ生命保険。今年2月14日に金融庁検査を招く事態に陥った。

 その4日後の18日、ブノワ・メスレ社長から全社員に一通のメールが届いた。金融庁検査の一環として「社員アンケート」を実施するというものだ(下写真参照)。

今年2月14日に「本当のバレンタインショック」となったマニュライフ生命保険への金融庁検査。検査と同時に社員全員にアンケートを求めた Photo by Akio Fujita
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 写真下段にある「アンケートリンク」。このリンク先には、10個の質問項目が並んでいる。むろん、アンケートの回答を求めているのは、金融庁である。

 この質問項目10個のうちの一つが、冒頭に挙げたものだ。いったい金融庁は、マニュライフ全社員に対するアンケートで、いったい何を把握しようとしているのか。

マニュライフ社内に「節税文化」が
どれくらい浸透していたのか?

 この金融庁検査も大詰めを迎え、役所の事務年度が終わる6月末までには終了するとみられる。その後、マニュライフは検査のために止まっている人事異動を行い、大胆なリストラ策を検討しているもようだ。だが、すでにマニュライフを見限る社員の大量退職が始まっているのが実態だ。

 マニュライフ社内に「節税文化」がどれくらい浸透していたのか――。

 「名義変更による節税を目的とした保険募集」をいつから知っていたのか、どのように評価しているのか、防止するための取り組みをどうすべきか。

 こうした「企業文化」を調べるための手法が、全社員に対するアンケートなのだ。要は、“節税文化”がマニュライフの末端まで浸透しているかどうかを調べるためだ。

 他に金融庁がアンケートを行ったのは、手ひどい乗り換え募集などが常態化していたかんぽ生命保険。そして、高齢かつ成績優秀な営業職員が、長年にわたり約19億円に上る金銭詐取事件を起こしていた第一生命保険だ。

 両社共に企業文化に問題があり、世間を大きく騒がせた事案である。

業界激震!明暗分かれる
生保・損保・代理店

『週刊ダイヤモンド』6月11日号の第1特集は「明暗分かれる生保・損保・代理店/保険商品 最強ランキング」です。

 生保業界では、第一生命保険の元営業職員が起こした約19億円に上る金銭搾取事件をはじめ、営業職員による金銭不祥事が相次ぎ、さらに大樹生命保険では顧客の意向を無視した契約も発覚。かねて強引な保険の勧誘などで不信感が根強くある中、次から次へと問題が溢れ出してきています。

 しかも、マニュライフ生命に代表されるように、保険本来の趣旨を逸脱した節税保険に過度に傾倒し、租税回避と受け取られかねない事案も浮き彫りになりました。

 また、大型ショッピングモールに行けば、必ずといっていいぐらい保険ショップが出店しています。これら保険ショップに代表される乗り合い代理店は顧客の支持を受けて拡大を続け、そこに大手生保も子会社を設立してどんどん参入してきています。

 そうした中、自社商品を優先的に販売してもらおうとして、生保各社が多額のインセンティブを払っていたことが問題となり、保険業法の改正にまで至りました。ところが、一旦は落ち着いたかに見えたインセンティブ合戦が、再び起ころうとしています。

 片や、損保業界。損保会社の主力販売チャネルである損保代理店と、損保会社の間には溝があり、さらにその溝は深くなろうとしています。損保会社が損保代理店に支払う手数料を減らして統合再編を持ち掛けており、それが加速しているからです。

 本来ならば、両者が手を取り合って顧客の不測の事態に備える存在のはずですが、現場では対立している構図が散見されます。

 果たして、こうした状況で保険業界はこの先も存続していけるのでしょうか。消費者の目は厳しく、おかしなことをしている保険会社や代理店は選別の目にさらされることでしょう。

 併せて本特集では、保険のプロ28人のファイナンシャルプランナーの手を借りて、保険商品12分野84商品のランキングを行いました。ベストのみならず、ワーストも選定しており、見応え充分です。

 さらには、「顧客に寄り添った商品開発をしている」「手厚いアフターフォローをしている」といった2つの観点から、「顧客思いの保険会社ランキング」も掲載しています。

 保険業界を余すことなく切り取った本特集をぜひ、ご一読ください。

(ダイヤモンド編集部 片田江康男、藤田章夫、宮原啓彰)