『週刊ダイヤモンド』9月4日号の第一特集は「廃業急増のウラ 倒産危険度ランキング」です。コロナ危機で、これまでの倒産の常識が通用しなくなっています。倒産件数そのものは低い水準で推移する裏で、廃業する企業が急増。豊富な支援策で生かされステルス化した「倒産予備軍」が増えています。激変する倒産事情の新常識を追いました。(ダイヤモンド編集部 副編集長 大矢博之)

コロナ禍と連休理由に来訪拒否
死亡事故から1カ月で破産手続き開始

「ゴールデンウィーク及び新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、5月12日まで営業自粛となります」──。

 4月下旬、神奈川県相模原市の建築工事業、則武地所のホームページにこんな一文が掲載された(現在はホームページを削除)。

 同社は4月17日に東京都八王子市で発生した、アパート階段崩落死亡事故の施工会社だ。結局、5月13日になっても営業は再開されず、その日に自己破産を申請。横浜地裁は19日付で破産手続き開始を決定した。

「大型連休中に会社を畳むことは昔からあるジンクスだ。加えて、コロナ禍を理由に第三者の来訪を拒否している。怪しいなと警戒していたら、破産申請した」と帝国データバンク横浜支店情報部の内藤修部長は振り返る。

 則武地所は2000年創業。帝国データバンクによれば、木造アパートの建築単価において同業他社よりも20%以上安い、1室当たり250万円という低価格を武器に事業を拡大。17年4月期の売上高は約20.5億円に達した。

 しかし、有資格の作業責任者を置かずに作業させたとして相模原労働基準監督署に労働安全衛生法違反で書類送検されるなど不祥事が続出。20年4月期の売上高は約9.8億円と3年で半減し、工事代金の支払い遅れも常態化。取引先の間で信用情報が飛び交う「倒産警戒銘柄」になっていた。

 国土交通省によれば、則武地所が手掛けた166件の集合住宅のうち、少なくとも57件で階段の劣化が確認された。しかし、同社が破産したため、アパートのオーナーが補修費用を請求しても支払われるかどうかは不透明だ。

 死亡事故から約1カ月で破産申請した則武地所について、赤羽一嘉国土交通相は、「本来ならば施工についてのオーナーへの説明や、補修対応をする必要がある中、責任を果たさずに自己破産申請することはあってはならない」と不快感をあらわにした。

 則武地所が施工したアパートのオーナーのように、取引先の倒産に巻き込まれると、企業は手痛いダメージを食らってしまう。

 取引先が信用に値する企業かどうかを見抜くことは、自社の死活を左右する必須スキルだ。

 ただし、企業の倒産リスクを調べようにも、どうやってチェックすればいいか迷うだろう。加えて、コロナ禍で企業の実態が見えにくくなっていると、信用調査会社の担当者は口をそろえる。

〝危ない〟会社を見抜くプロたちに、最新の信用調査のチェックポイントを伝授してもらった。

本業悪化でも黒字、過剰債務が急増…
激変した“危ない”企業のチェックポイント

 一つ目は、「減収増益」企業の急増だ。東京商工リサーチが約3.9万社の21年3月期の決算を分析したところ、大企業(資本金1億円以上)、中小企業共に約7割の企業が売上高を前期よりも落とす「減収」になった。一方で、利益が前期を上回る「増益」企業の割合は、大企業が前期から9.1ポイント上がり53.9%、中小企業も同5.0ポイント増の49.5%と、減収増益の傾向が強まっている。

 コロナ支援の補助金や給付金などに加え、不動産など資産売却に着手して特別利益を計上したことや、交際費や出張費などのコスト削減が進んだためだ。

 決算書上では黒字が拡大していても、本業が悪化した企業は増えている。取引先の最終利益にとらわれず、どうやって利益を確保しているかをチェックするべきだ。

 二つ目は、「現預金の増加」に目を奪われないことだ。取引先の手元の現預金が増えたからといって、支払い能力は大丈夫だと安心することは早計だ。

 というのも、無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)などの資金繰り支援策が充実したことで、負債が急増して過剰債務になった企業が増えているからだ。

 東商リサーチが8月に中小企業約8000社を対象に実施した調査によれば、「過剰債務」と回答した企業は35.7%。実に3社に1社が過剰債務に陥っているのだ。

上場493社が倒産“危険水域”
13業種別倒産危険度ランキング

 『週刊ダイヤモンド』9月4日号の第一特集は「廃業急増のウラ 倒産危険度ランキング」です。景気が悪化すれば企業の倒産は増える。そんな当たり前のような常識が、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大に伴う危機で通用しなくなっています。

 経営リスクの高い企業を見分ける手引きとなるのが、公開情報から算出した「倒産危険度(Zスコア)」。ダイヤモンド編集部が上場企業3787社の倒産危険度を総点検したところ、493社が“危険水域”と判定されました。

 特集では493社の実名をランキング形式で届けるとともに、倒産危険度が高かったワースト上位企業の理由を深掘り。また上位企業への直撃取材を敢行し、経営危機の理由や打開策を聞きました。

 また、コロナ禍でどれだけ各業界が打撃を受けたかを探るため、自動車や航空・鉄道、鉄鋼、半導体・電子部品、小売り、アパレル、外食、など主要13業種の危険度ランキングを作成。業界ごとの倒産事情と業界内の序列を浮き彫りにしています。

 一方、2020年に急増した廃業。後ろ向きに聞こえがちな廃業ですが、うまく活用すれば手元に資金が残る“ハッピーリタイア”が待っています。850社の廃業などの手続きを支援してきた“企業のおくりびと”のプロフェッショナルが、「勝ち組廃業」入りの最新テクニックを伝授。M&Aや解散、破産など、会社の終活を成功させて「倒産地獄」を回避するポイントをまとめました。

 倒産の最新事情に迫った一冊です。ぜひご一読ください。