「東京五輪の前後にきっと暴落するはず」──。そう力説する東京都心の賃貸マンションに住む40歳の男性会社員は、夫婦共に大手企業に勤めるいわゆるパワーカップルだ。世帯年収は1500万円超だが、それでもマンションをおいそれと買えないと話す。
男性は、子供が生まれたことを契機に物件探しを始めたが、それからはや3年。職住近接を絶対条件に、都心3区の物件を新築・中古を問わず探したが決め切れず、暴落を信じて待つことにしたという。
「中古ならまだ手が届きますが、築10年以上なのに新築時よりも1~2割高く売っている。ばからしくて買う気がうせましたよ」
男性の不満も分からなくはない。不動産経済研究所によれば、今年上半期(1~6月)の首都圏の新築マンションの平均価格は5962万円と1991年以来の高騰で、6年連続の上昇となった。東京23区に至っては平均7059万円だ。一方、2000年に9.5万戸を超えた新築発売戸数は、16~17年、3.5万戸台まで減少した。
新築だけではなく中古も値上がり中だ。17年は70平方㍍換算で3577万円と4年連続で上昇した。成約戸数も過去最高だった16年からさらに増加し、3.7万戸台をキープ、市場の主役の座を新築から奪っている。
高騰と供給減──。実需において、その要因の一つとなっているのが、都心回帰を目指す中高年の「住み替え」需要だ。
国土交通省の「住宅市場動向調査」と過去と現在を比較すると、二次取得(2回目以降の住宅取得)のマンション購入者の属性や意識は、この5年で様変わりしたことが見て取れる。一言で言えば、住宅すごろくの上がりが、郊外の戸建てから都心や駅近のマンションに移っているのだ。
中高年の場合、今の自宅という資産の売却により、高額なマンションを購入できるはずだった。だが、目下のマンション高騰で、マンション購入額から自宅(戸建て)売却額を差し引いた売却損益は、この5年で2倍超の1700万円の赤字に拡大している。
その結果、「老後破産しかねない大甘な資金計画による住み替えも増えている」と、相談を受けるファイナンシャルプランナーはため息をつく。
この状況に、冒頭の男性のような現役世代のみならず、中高年にも価格暴落を心待ちにする人が増える中、来年は消費増税や五輪選手村の販売開始など、今後のマンション市場を占うイベントが目白押しだ。
果たして暴落を待つ戦略は正しいのか――。先行きが読めない今こそ、一生モノの住み処の選び方をお伝えする。
2019年は市場を占うイベントが目白押し
『週刊ダイヤモンド』12月1日号の第1特集は「相続・増税・暴落に克つ 一生モノの住み処選び」です。首都圏や関西圏を始め都市部のマンションの高騰が続いています。特に東京23区では、新築マンションの平均価格が7000万円を突破し、普通のサラリーマンには手の届かない価格になりました。その上、販売戸数の方は逆にほぼ右肩下がり。高い上に選択肢も少ないという選ぶ側には厳しい状態にあります。
来年2019年は、このマンション市場に影響しそうなイベントが立て続けに予定されています。東京五輪を前に、巷でささやかれる暴落説の検証を含め、来年から順次施行される約40年ぶりの相続改正のポイントも踏まえた「終の住み処」の選び方を提供します。