『週刊ダイヤモンド』10月31日号の第1特集は「ビジネスマン6000人に聞いた日韓 本当の大問題」です。11月1日には3年半ぶりとなる日韓首脳会談が予定されています。会談では日韓融和が強調されるでしょうが、実現するのはたやすいことではありません。というのも、この間、日韓関係は悲劇的なまでに冷え込んだからです。そこで本誌は日韓ビジネスマン6000人アンケートを軸にして、嫌韓報道からは絶対に見えない本当の日韓関係を探りました。

 9月26日の昼時、東京・日比谷公園を見下ろすザ・ペニンシュラ東京の宴会場には、日韓両国のメディア関係者が集まっていた。

 会場では、韓国紙の東京特派員や日本の全国紙の韓国特派員経験者らが、冷え切った日韓関係の改善策について議論を交わしていた。

 会の主催者は駐日韓国企業連合会。両国メディアによって量産されている反日・嫌韓報道に歯止めをかけ、日韓関係の改善を促す狙いで催された。

 連合会の会長は、韓国焼酎メーカー、眞露(ジンロ)の楊仁集社長。売り上げが日韓関係に大きく左右されるとあって、冷え切った現状を看過できなかったのだろう。「皆さま、これからは双方のポジティブな記事を書いていきましょう」。楊社長はあいさつの場でこう述べたという。

 確かに近年、日韓関係は悪化の一途をたどり、反日・嫌韓報道は増殖し続けている。本誌が日韓ビジネスマン6000人を対象に行ったアンケートでは、「ビジネス上、韓国は必要な国ですか」の質問に対して、日本人の実に8割が「必要ない」と答えるなど衝撃的な結果が出た。政治・外交上の冷え込みと異なり、冷静な日韓関係を構築していると見られていたビジネス上でも、嫌韓意識が急台頭していることをうかがわせた。

 また、アンケートでは両国のビジネスマンの7割以上が、メディアが日韓関係に悪影響を与えていると回答した。なぜこのような報道が急増したのか。その背景には、両国メディアが抱えている二つの問題が横たわっていた。

 一つ目は、自国の世論に追従する大衆迎合主義だ。例えば、韓国メディアは対日報道において「反日」が〝定番化〟しているのが現状である。

 慰安婦や竹島などの歴史・領土問題のみならず、日韓関係以外においても「親日的な報道は難しい」(韓国大手紙幹部)という。国民感情に反して日本に好意的な報道をすれば「国民から『親日派』のレッテルを貼られ不買運動が起こりかねない。誰も損をしたくない」(同)ため、世論に迎合した反日記事を掲載するのである。

 特に、2011年の在韓日本大使館前への慰安婦像設置以降、両国政府によって、それまで棚上げされていた歴史・領土問題が蒸し返されるケースが増えた。

 その結果、「韓国国内で、安倍政権への批判が強まり、日本たたきの報道が増えた」(韓国大手紙日本特派員経験者)という。

 反日報道の増加は負の連鎖となって増幅されていく。

 複数の韓国大手紙日本特派員経験者によると、韓国メディアの間では、「慰安婦像の設置以降、反日モノで他社に遅れると、自社だけニュースを落とした『特オチ』と見なされる空気が醸成された」という。

 つまり、反日報道が〝スクープ化〟したのだ。こうして、反日ネタを探す傾向が強まり、紙面で日本批判の見出しが目立つようになったのである。

 一方、日系メディアも嫌韓という一部の国民の世論に迎合する形で、嫌韓報道を繰り広げている。

 これまで、嫌韓報道は日本のマスコミ界でタブー視されてきた。ところが、「李明博前大統領の竹島上陸や天皇謝罪要求を境にして、韓国政府の強硬な外交姿勢に国民がしびれを切らし、嫌韓モノが受けるようになった」(日系大手紙記者)ことで、日本側の嫌韓報道もエスカレートしていった。