『週刊ダイヤモンド』2月22日号の第1特集は、「不動産・開発 危うい狂乱」です。超低金利で溢れるマネーが不動産市場になだれ込み、リーマンショック前を超える高値で物件が売買されています。なおもオフィスやホテルが大量に開発される中、実需はアラートを出し始めました。融資の選別も始まっています。

11年たってもピークアウトしない
異様に長いオフィス賃料上昇局面

 オフィス賃料はそのときの不動産の局面を象徴する。

 不動産サービス大手のジョーンズ ラング ラサール(JLL)は、オフィス賃料の動向を示す独自の分析ツール「不動産時計」によって、不動産が今どの局面にあるかを長年示してきた。

 0時をピークとして、0~3時は賃料下落の加速期、3~6時は賃料下落の減速期。6時をボトムとして、6~9時は賃料上昇の加速期、9~12時が賃料上昇の減速期。時計の針がぐるりと1周すると次の周期になる。

 東京での前回の周期は0時が02年、6時が04年、12時が08年1~6月の間だった。6年で1周したことになる。

 今回の周期は0時が08年1~6月、6時が11年。19年は11時30分の位置にいる。11年たってもピークアウトせず、1周していない。

 東京Aグレードオフィス(中心業務地区、都心5区の一定レベル以上のオフィス)の需給を見ると、20年の東京五輪・パラリンピックに向けて再開発が集中し、18~20年にオフィスが大量供給された。

 3年連続でこれだけの供給が積み上がるのは、過去20年を振り返ってみても初めてだ。だから17年までは、ビルのオーナーたちはこの大量供給に対して需給が緩むのではないかと賃料設定もかなり弱気だった。

 「われわれも空室率が上昇すると思っていたが、ふたを開けてみると、空室率は歴史的な低水準。できるビルできるビルが100%の稼働になった」と、JLLの大東雄人リサーチ事業部ディレクター。これほど空室率が低下して需給がタイトになるとは、多くの専門家が2~3年前には予測していなかった。

 空室がなければ、貸し手有利。賃料は上昇局面からピークアウトしなくなった。なぜこんなにも需給が逼迫したのか。

 「それまでになかった需要が東京に生み出されて爆発的に伸びたことが一つの要因で、代表されるのが18年2月に六本木で1号店をオープンしたウィーワークのようなコワーキングと呼ばれる新しいオフィス需要」と大東氏は言う。

 米シェアオフィス大手のウィーワーク(運営会社はウィー・カンパニー)は、ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長肝いりのビジネスで、ソフトバンクGが多額の出資をしてきた。前CEOが会社を私物化するなど経営体制の問題が露呈して19年秋に上場を撤回、経営立て直しのために人員削減などに踏み切っている。新CEOには不動産業界のベテランが指名された。

 日本ではソフトバンクとの共同出資で事業を行っており、今のところリストラ、出店計画の撤回はない。日本で約30拠点を構え、引き続き計画通りに開業を続けるようだ。

 同業の中でもウィーワークの拠点拡大の勢いはすさまじく、都心部の新築ビルをどんどん借り上げ、供給をのみ込んでいった。オフィス市場に”ウィーワーク特需”が起こったのである。

 このほか、想定外の需給逼迫を生んだ要因には、企業が有望な人材の雇用につなげるべく、彼らが働きたいと思える職場にしていくためにハイグレードなオフィスを借りたり、増床したりしたこともある。

 「若手の雇用や人材を確保するために都心にスペースを確保したいという企業の意欲、それを可能にする企業の業績があった」と不動産サービス大手CBREの大久保寛リサーチヘッドエグゼクティブディレクター。

 オフィス仲介大手の三幸エステートの今関豊和市場調査室長チーフアナリストは「シニアや女性の労働参加率が上がっていること。就業者数が増えたことに尽きる」と言う。

 シェアオフィスを利用して働き場所を分散させた企業はその分、本社なり既存オフィスを縮小する判断を下すかもしれないが、シェアオフィスを使った働き方はまだ試験段階の企業が多い。

 そのため、今は既存のオフィスにプラスアルファで重複して使っているような状況だ。ここがどうなっていくのか、まだ市場は読み切れていない。

 三幸エステートグループのオフィスビル総合研究所では、東京都心5区においては、20年から徐々に空室率は上昇していくと予測している。

 「生産年齢人口が減っていく中で、今後は就業者数の伸びは期待しにくくなる。就業者が増えないと実需が伸びない」と、今関氏は分析する。

 都内ではオフィスビルの建て替え、再開発は今なお続いている。21~22年は一時的に供給は減少するが、23~27年は大量供給が続く見通し。空室率が上昇局面になっていくことは明らかで、あとはタイミングとその緩み具合だ。

 これとともに賃料がピークアウトすることを、ビルオーナーはもう覚悟しているだろう。

 賃料はAグレードから先にピークアウトが始まるとみられ、その意味で気になるのは、19年末時点で丸の内・大手町エリアの空室率が1.2%(JLLのデータ)と、他のエリアに比べてまとまった空室が出ていることだ。国内最高レベルである坪当たり賃料が5万円を超えると、入居が決まりにくくなってきている。

不動産・開発の危うい狂乱
「実需」がアラートを鳴らし始めた

 『週刊ダイヤモンド』2月22日号の第1特集は、「不動産・開発 危うい狂乱」です。

 超低金利で溢れるマネーが不動産市場になだれ込み、リーマンショック前を超える高値で物件が売買されています。

 東京・恵比寿ガーデンプレイスにあるウェスティンホテル東京は2019年12月、約1000億円で売却されました。金融危機前である08年の売買額は770億円であり、これを上回る額です。

 なおもオフィスやホテルが大量に開発される中、実需はアラートを出し始めました。融資の選別も始まっています。

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 過熱する不動産・開発の今に迫ります。

2020年2月22日号[ 730円 ]

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特集

不動産・開発 危うい狂乱

【特集】不動産・開発 危うい狂乱

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