アンソニー・トゥー著『サリン事件死刑囚 中川智正との対話』は、優秀で心優しき若者たちがなぜオウム真理教とその教祖に心酔し、化学兵器を用いたテロ事件を引き起こしたかがよく分かる一級の史料だ。〈私は6年間にわたって、彼と文通や面会をしてきた。彼を死刑囚としてでなく一人間として付き合ってきた。彼の今迄の犯罪を私は知っている。これらの罪は許されるものではない。しかし人間には誰にも明暗、または光と影がある。私は彼の「明」や「光」の片側だけと付き合っていたのかもしれない。彼の死刑執行という事実で中川という個体がこの世から消されてしまったことに対し、私は一抹の哀悼を感じる〉とトゥー氏は述べる。偏見を排して接触したので、中川元死刑囚も公判では語らなかった事柄についても率直に述べたのだと思う。刑事裁判では、検察官も裁判官も犯罪事実の立証にだけ関心を持つ。オウム真理教事件の最大の問題は、思想であり、宗教的信条なのであるが、この点についての究明がなされないまま、関係者13人の死刑が執行されてしまったことに違和感を覚える。

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