記事一覧:元特捜部主任検事のざわめき59件
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元特捜部主任検事のざわめき
性犯罪の厳罰化に向け 求められる冷静な議論
2015年1月9日うちわ問題で大臣辞任に追い込まれた松島みどり前法相の置き土産となっているのが、性犯罪の罰則について検討を進めている法務省の有識者検討会だ。厳罰化には賛成だが、一方で冷静な議論も求められる。今回は、この問題を取り上げてみたい。
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元特捜部主任検事のざわめき
今年ネット上で反響大だった 3つの重大事件のてん末
2014年12月19日今年最後の連載となる今回は、この1年間に取り上げた20余りの事件のうち、特にネット上で反響が大きかった3件を振り返り、その後のてん末などについて思うところを示したい。
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元特捜部主任検事のざわめき
盛り上がりに欠ける衆院選に埋没し 存在意義が問われる最高裁国民審査
2014年12月5日2日、衆議院議員総選挙が公示され、投票日の14日に向けて本格的な選挙戦がスタートした。この選挙に併せて実施されるのが最高裁判所の裁判官に対する国民審査だが、相変わらず分かりにくく、影が薄い存在となっている。今回は、この問題を取り上げてみたい。
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元特捜部主任検事のざわめき
虚偽証言による強姦事件で懲役12年 人が人を裁く刑事裁判の恐ろしさ
2014年11月21日18日、大阪地検は、2011年に強姦や強制わいせつで懲役12年の確定判決を受け、既に3年半ほど服役していた再審請求中の男性を釈放した。再捜査の結果、被害を訴えた女性らの虚偽証言に基づくえん罪だと判明したからだ。再審請求に対して徹底抗戦をするのが検察の通例だが、その結果を待たずして刑の執行停止に及び、完全に白旗を上げたのは、09年の足利事件以来、実に史上2例目だ。今回はこの事案を取り上げ、性犯罪捜査の実態などを見てみたい。
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元特捜部主任検事のざわめき
そうまでして維持する必要があるのか 大きな曲がり角に来ている裁判員制度
2014年11月7日先月31日に東京地裁で判決が下された裁判員裁判。息子(39)が痩せ細った母親(当時64)の背中を複数回蹴って死亡させたとされる傷害致死事件だが、裁判所は遺体写真はおろか、そのイラストすら裁判員の目に触れさせようとしなかった。今回はこの問題を取り上げてみたい。
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元特捜部主任検事のざわめき
「政治とカネ」で看板女性閣僚が相次ぎ辞任 捜査当局の視点から見る2つの事件の行く末
2014年10月24日20日、第2次安倍改造内閣の看板女性閣僚2人が内閣発足後わずか48日で辞任した。松島みどり前法相のうちわの件は民主党が、小渕優子前経産相の収支報告書の件は市民団体が、それぞれ東京地検に告発状を提出しており、真相究明は特捜部の手に委ねられた。そこで今回は、捜査当局の視点に立って2つの事件の行く末を見てみたい。
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元特捜部主任検事のざわめき
ついに「FC2」の本体に捜査のメス 当局の狙いと違法動画にまつわる罪と罰
2014年10月10日先月30日、京都府警サイバー犯罪対策課など5府県警の合同捜査本部は、大阪市内のインターネット関連会社など数か所を一斉捜索した。同社やその関係者が米国法人を隠れ蓑にし、大手動画配信サイト「FC2動画」や「FC2ライブ」などを運営して、わいせつ動画などの違法配信を容易にさせたと睨んでいるからだ。運営者側に捜査のメスが入るのは初めてであり、他の同種サイトや一般のインターネットユーザーに与える影響も大であることから、今回はこの問題を取り上げてみたい。
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元特捜部主任検事のざわめき
骨抜きとなった120年ぶりの民法改正で 押さえておきたい2つの留意点
2014年9月26日先月26日、法務大臣の諮問機関である法制審議会・民法(債権関係)部会は、1896年(明治29年)の民法制定以来初めてとなる抜本改正に向け、5年に及ぶ議論の総まとめとなる改正要綱の仮案を決定した。継続審議となったテーマもあるが、法務省はこの方針に沿って条文作りを進め、来年の通常国会に改正法案を提出する見込みだ。今回は、この問題を取り上げてみたい。
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元特捜部主任検事のざわめき
コンビニ土下座恐喝事件に学ぶ クレーム対応の理想と現実
2014年9月12日大阪府茨木市のコンビニエンスストアで店側の対応に因縁をつけ、土下座で謝罪するオーナー(51)や店長(25)らから売り物のタバコ6カートン(2万6700円相当)を脅し取ったとして、男2人(39・46)と女2人(39・10代)が逮捕された。彼らがスマートフォンで撮影した犯行動画を自らインターネット上に投稿したところ、次々と拡散されて大炎上となり、瞬く間に氏名や住所などが特定されて糾弾され、逮捕に至ったというものだ。今でもネット上でこの生々しい動画を閲覧でき、彼らに強い憤りを覚えるが、他方で店側の対応を含めて学ぶべきところも多いことから、今回はこの事件を取り上げてみたい。
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元特捜部主任検事のざわめき
IC運転免許証から見える マイナンバーカードの将来像
2014年8月29日運転免許証を更新した際、新たに暗証番号の設定を求められ、その必要性に疑問を抱いた方も多いだろう。免許証に埋め込まれたICチップから氏名や本籍、顔写真などの個人情報を読み出すためのものだが、読み取り端末が普及しておらず、使用する場面などないからだ。
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元特捜部主任検事のざわめき
最高裁が求刑の1.5倍判決を破棄 知られざる検察側求刑の決まり方とその意義
2014年8月15日2010年に大阪府で当時1歳8か月の女児を虐待死させたとしてその両親が傷害致死罪(3年以上20年以下の懲役)に問われた事件。一審の裁判員裁判は検察側求刑の1.5倍にあたる懲役15年を選択し、控訴審もこの判断を支持したが、先月24日、最高裁はこれらを破棄し、三女に暴行を加えた夫(31)を懲役10年、これを黙認した妻(32)を懲役8年とした。
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元特捜部主任検事のざわめき
史上最大規模のベネッセ流出事件に見る 穴だらけの個人情報保護法制
2014年7月25日刑事事件に発展したベネッセホールディングスの顧客情報流出問題。その後も流出件数やその内容、流出ルートなどに関する報道が錯綜し、ますます混迷の一途をたどっている。今回はこの事件を取り上げ、「ザル法」と言われる個人情報保護法やその関連法規について見てみたい。
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元特捜部主任検事のざわめき
心当たりがあれば1年以内に廃棄を 児童ポルノ単純所持罪の創設と留意点
2014年7月11日先月18日、国会で児童ポルノの単純所持(誰にも渡すつもりがなく、単に持っているだけの行為)を罰する法改正が行われた。今月15日から施行される。罰則の適用には1年の猶予が設けられていることから、心当たりがあればその間に廃棄しなければならない。この件は約1年前にも取り上げたが、改正法では当時の法案に一部修正が加えられたほか、国会でも興味深い質疑が行われたことから、それらを踏まえ、改めて留意点などを示したい。
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元特捜部主任検事のざわめき
捜査当局に強力な武器を付与へ 司法取引制度導入の問題点と留意点
2014年6月27日刑事司法制度改革の叩き台作りを進めている法務省の法制審議会特別部会は、一部の事件に対する取調べの録音録画義務付けとともに、欧米諸国で採用されている司法取引制度導入の方向性を示した。夏ごろには法務大臣に対する答申がまとまり、早ければ来年の通常国会で必要な法改正が行われる見込みだ。そこで今回は、今後話題となるであろう司法取引制度について見てみたい。
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元特捜部主任検事のざわめき
「忘れられる権利」でグーグルに削除要請殺到 EUの司法判断で問われる日本の対応
2014年6月13日先月末、インターネット検索大手の米グーグル・インク社が欧州連合(EU)圏の個人ユーザー向けに新たなオンラインフォームを開設した。同社によるウェブページの検索結果から自身に関するニュース記事などへのリンク表示の削除を要請できるという画期的なもので、開設初日だけで1万2千件を超える削除要請が出されたという。今回は、その背景にある「忘れられる権利」と呼ばれる新しい権利を取り上げるとともに、類似の事案に対するわが国の現状などを示したい。
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元特捜部主任検事のざわめき
PC遠隔操作事件で急展開 一連の真犯人登場劇に思うこと
2014年5月30日たった一通の真犯人メールが墓穴を掘ったPC遠隔操作事件。えん罪主張をしていた片山祐輔被告(32)は一転して白旗を上げた。今回は、元検事で被疑者・被告人の立場をも経験した者として、一連の真犯人登場劇に思うことを示したい。
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元特捜部主任検事のざわめき
再び外れ馬券購入費を経費と認定 高裁判決が及ぼす影響と留意点
2014年5月16日9日、大阪高等裁判所は、競馬の当選払戻金に対する所得税額を算定する際、当たり馬券のみならず外れ馬券の購入費をも経費として算入できるか否かが争われた所得税法違反事件で、昨年5月の一審大阪地方裁判所と同じくこれを認め、検察側の控訴を棄却した。
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元特捜部主任検事のざわめき
激震走る法務検察に安堵の声も 幹部による盗撮事件の『罪と罰』
2014年5月2日4月25日、警視庁は、3月まで法務省の財産訟務管理官を務めていた男性幹部(現官房付・50歳)を、同省の女子トイレにおける盗撮容疑などで書類送検した。財産訟務管理官といえば現職検事である上、法務省の中枢である大臣官房で国有財産の管理や国の債権などに関する民事上の争訟事務を担当する要職だ。
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元特捜部主任検事のざわめき
JR福知山線脱線事故の無罪・控訴に見る 検察官控訴制度の問題点と改革の方向性
2014年4月18日今月25日で発生から丸9年となるJR福知山線の脱線事故。14日、検察官役の指定弁護士は、検察審査会の起訴相当議決を経て業務上過失致死傷罪で強制起訴され、昨年9月に一審神戸地方裁判所で無罪判決を受けたJR西日本の歴代3社長に関し、控訴の理由などを記載した控訴趣意書を大阪高等裁判所に提出した。確かに被害者や遺族の無念の思いは察するに余りある。
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元特捜部主任検事のざわめき
袴田事件で地裁が画期的な再審開始決定 改めて問われる検察の証拠に対する姿勢
2014年4月4日先月27日、静岡地裁は、1966年に静岡県で一家4人が殺害、放火された袴田事件の再審開始を決定するとともに、「世界で最も長く収監されている死刑囚」としてギネス世界記録にも認定された袴田巌氏(78)に対する死刑執行の停止と即時釈放を決定した。検察内でも「危うい」と言われてきた事件の一つであり、「予想外」と言いながらも再審開始決定そのものは検察にとって想定の範囲内だった。ただ、地裁が前例にない即時釈放を認めたばかりか、捜査機関による重要証拠のねつ造にまで踏み込んで言及した点は検察幹部の不興を買う結果となり、検察の即時抗告によって舞台は東京高裁に移ることとなった。今回は、この決定までの経過を振り返り、改めて問われる検察の証拠に対する姿勢について触れてみたい。