コロナ禍こそ、実践で役立つ
会計知識のアップデートをすべき理由
実は「社内での数字をどのように共有するか」で、会社の経営は天と地ほどの差がつく。通常時でもそうなのだから、コロナ禍ではより一層、“現場の数字意識”が重要になってくることは間違いない。これまで社内での数字管理を工夫してこなかった場合、コロナ禍以前の数字の共有をそのまま行っていては、いずれ大きな損失を出すことになるだろう。
『会計の世界史』の著者である公認会計士の田中靖浩氏は、社内での数字意識の低さを「赤信号で、周りも見ずに道路へ直進している状態に等しい」と述べ、警鐘を鳴らす。
そもそも、社内で共有すべき数字である「管理会計」と、対外的に公表する数字である「財務会計」は、目的も内容も異なる。ところが、これを同一のものと見なし、区別せずに対外的な数字をそのまま社内で共有してしまっている企業やビジネスパーソンはかなり多い。
では、管理会計と財務会計の違いとは一体何なのかというと、「社内向け」か「社外向け」かである。
まず、財務会計とは、いわば株主のための会計なのだ。決算書に書いてある利益は、税金と配当にしか使用されない。「外部へ報告する目的のための数字なのだから、社員には役に立たないのは当然だ。
一方、管理会計は、社内で使用することを目的とした数字だ。これは単なる数字を伝える会計ではなく、社員同士の共通言語だ。経営のトップが示した数字を達成するため、社員自らが考え、必死に行動する。これが管理会計の考えであり、社外に結果を報告する財務会計とは全く違うのである。
だからこそ、「どの数字を指標にするか」が重要で、また、経営側はその指標を用いると「社員はどのような行動を取るのか」を徹底的に想像しなければならない。そして、働く側の社員は、会社の意図をしっかり汲み取らないと、出世は叶わないだろう。
「KPI」の設定方法と共有方法が重要
強い会社になる秘訣とは
その管理会計の基本のキとして覚えてほしいのは、社内で共有・管理する指標を「KPI(重要業績評価指標)」と呼ぶことである。
KPIは社内の採点基準で、営業部門は売り上げで評価され、購買部門は仕入れの金額で評価され、これがKPIになる。このKPIの設定により、社員の行動指針が決まっていくのだ。
また、KPIの設定の仕方が正しくても、共有方法が下手な会社は失敗する。現場の社員に、経営者と同等の数字意識は必要ない。それぞれの社員に必要な情報に絞って、分かりやすい言葉で伝えるべきなのだ。一方、会社側がきちんとKPIを設定しているのに現場の社員が正しく認識していないことも問題だ。
裏を返せば、利益成長を続ける「強い会社」の多くは、企業の経営陣から現場レベルにまで適切な「KPI」を設定し、現場の行動に落とし込むことに成功している。
花王、オムロン、星野リゾート……
クイズと最新事例で「現場の会計力」を付ける
『週刊ダイヤモンド』2月6日号の第1特集は「会社の数字に強くなる!現場で役立つ会計術」です。コロナ禍でも負けない強い会社は、現場の社員の数字意識を徹底しているのです。
特集では、パート1で会計の勉強を始めるスタートラインとして、「財務3表」に関する会計クイズを掲載しています。
ベストセラー書籍『世界一楽しい決算書の読み方』の著者である、大手町のランダムウォーカー氏協力のもと作成したクイズです。サイゼリヤやZOZO、メルカリ、ファミリーマートなど、実在する会社の決算書を使用した会計クイズを解けば楽しく理解できます。
また、パート2では、星野リゾートや花王、スシロー、オムロンなどの著名企業が実践しているKPIを徹底解説。各企業のCEO・CFOに直接取材をして、最新事例を紹介しています。
現場の会計力は、状況や目的に合わせて臨機応変に変えていく必要があり、正解はありません。すでに自社に合うKPIや共有方法を試している企業の実例を参考に、会計ノウハウをアップデートできます。
(ダイヤモンド編集部 塙 花梨)