野中郁次郎氏と楠木建氏が
コロナ騒動の本質を喝破
緊急事態宣言の発令からおよそ半年が過ぎた。一時よりは新型コロナウイルスの感染拡大は落ち着いているものの、先行きははっきりとしない。
経済は回復するのか、ビジネス、医療、教育は変貌するのか。もっと言えば人々の生き方、考え方すら変わっていくのか……。
そこで今回、各分野を代表する識者100人に、コロナ後を行く羅針盤となってもらうべく、幅広く日本と世界の未来を語ってもらった。ここではその一部を紹介したい。
まずは知識経営の泰斗、野中郁次郎氏の言葉。ソーシャルディスタンスが叫ばれる中、「一度でも会って対話できれば〝知〟はつくることができる」と説く。さらに、今のリーダーに必要なのは「人間くさい戦略立案」だともいう。
また、楠木建・一橋ビジネススクール教授は「コロナは〝危機〟ではなく、ニセモノの経営者を炙り出す“騒動〟」だと喝破。
2人の賢人の言葉はコロナに関する表面的な議論を吹き飛ばす。
そして、コロナの経済へのインパクトは甚大だ。市場の行く末を占うべく、合計52人の専門家に、景気、株価、為替、主要業界を徹底予測してもらった。すると「日経平均は2020年末に2万4000円」との予測が複数あり、中期では3万円という声も。少なくとも株価の面では悲観論がそれほど目立たないのだ。
しかし、マーケットは常に地政学に揺さぶりをかけられる。
国際政治の権力の空白「Gゼロ」を説く国際政治学者のイアン・ブレマー氏は「コロナはあらゆる地政学的なリスクを加速させる」と予見。特に米中に対しては、多くの賢人が対立は先鋭化するとみる。
加えて、米国の大統領選挙で劣勢に立つトランプ大統領が挽回のため、10月にサプライズを繰り出す可能性が高いと、暴露本騒動に揺れるジョン・ボルトン前米大統領補佐官は予測している。
ちなみに、当然だが、100人の意見は一様ではない。それでも、実は多くに共通する認識がある。「コロナ禍で起こっている問題は突然発生したものではなく、日本や世界が以前から抱えていた問題」というものだ。
つまり、問題の根源はウイルスにあるのではなく、変わることができなかった自分たちにある。
実際、それを証明するかのように藤野英人・レオス・キャピタルワークス代表取締役社長・最高投資責任者(CIO)は「コロナ後に良かった会社というのは、結局、コロナの前から評価されていた会社だったこと。コロナ禍で分かったのは、新しい時代に対応していた会社がやっぱりコロナにも対応できた、ということです」と明かす。
これまで変わることができなかった人、企業はすこし急いだほうがいいかもしれない。入山章栄・早稲田大学ビジネススクール教授は今が「変革する最後のチャンス」だと強調する。
大前研一・ビジネス・ブレークスルー大学学長も、これまでわかっていても変えられなかった日本の雇用制度と教育制度を今こそ「ゼロベースで作り直すべきだ」と促す。
人類はこれまでも学ぶことで厄災を乗り越えてきたから、いたずらに不安を感じることはない。今こそ、賢人たちの声に耳を傾け、変化と行動の指針としてほしい。
賢人100人が語る
日本と世界の未来
『週刊ダイヤモンド』9月26日号の第一特集は「賢人100人に聞く! 日本の未来」です。コロナの感染拡大は一時よりは落ち着きを見せていますが、経済や社会の先行きははっきりとしていません。
そこで、今回、日本と世界を代表する識者100人に未来を語ってもらいました。前述の野中郁次郎氏、楠木建氏、藤野英人氏、入山章栄氏、大前研一氏、ジョンボルトン氏、イアン・ブレマー氏のほかにも、世界は日本化していくとする河野龍太郎氏、地政学の分野では宮家邦彦氏、藤原帰一氏、グレアム・アリソン氏、マーケティングの大家であるフィリップ・コトラー氏、などなど多数の識者が登場。
日本企業はどうなる!?株価は上がる!?国際情勢は?といった疑問に応えます。さらに医療、政治、教育、文化、宗教まで幅広い分野の羅針盤を紹介します。
また、量子ビジネス、ゲノム、宇宙ビジネス、ブランド、ワクチン、働き方、スポーツビジネス、シェアリングエコノミー、地方創生、カジノなど気になるトピックに関しても賢人が未来を語っています。
ぜひ、ご一読いただければ幸いです。