新型コロナウイルスの感染拡大の影響をもろに受けた3月期決算企業の今期第1四半期。厳しい決算内容で、業種間、業種内でも格差が広がる中、日経平均株価はコロナ暴落前の水準まで戻しています。これからでも買える株は? 『週刊ダイヤモンド』9月12日号では、最新の業績予想数値や経営データをもとに、今後も上昇が期待できる「強い株」を厳選しました。

キャノンは33年ぶり減配、日産は11年ぶり無配
巣ごもり需要を取り込むソニー、任天堂は好決算

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響が色濃く表れた、3月期決算企業の今期第1四半期決算。そこでは本決算のとき以上に、企業ごとの業績の良しあしによる「優勝劣敗」が浮き彫りとなった。

 そんな「劣敗」の象徴的な存在となってしまった大企業が、キヤノンと日産自動車だろう。キヤノンは新型コロナの影響で事務機などの需要が急減し、第1四半期としては初の最終赤字に転落。業績悪化に伴い、33年ぶりの減配を余儀なくされるに至った。

 日産もコロナ禍が業績を直撃する形で、第1四半期決算は同期間としては11年ぶりの最終赤字(2855億円)に沈み、併せて示した通期見通しも6700億円の赤字予想に。以前は高配当銘柄として知られたが、年間配当は11年ぶりに無配の計画となっている。

 このように、製造業をはじめとする多くの企業にとって、極めて厳しい事業環境であったわけだが、そんな中でも勝ち馬に乗った企業群が存在した。コロナ禍による生活様式の変化を捉えた企業は、むしろそれを追い風として利益を拡大。テレワークの普及や在宅時間の増加による「巣ごもり需要」を取り込む形で、任天堂やソニーなどのゲーム関連や、ITサービス企業などの一角では好決算が相次いだ。

 株式市場でも、成長力の高い銘柄にはより多くの資金が集まり、業績の厳しい銘柄は上場来の安値水準までたたき売られる---------。そんな格差が生まれ、株価の二極化が進む。「週刊ダイヤモンド」9月12日号では、8大セクターについて、機関投資家の評価が高いアナリストたちの分析に基づき、代表的な企業の今後の業績動向をまとめた。

「正露丸」の大幸薬品が出した除菌剤が大ヒット
株価も年初来安値から2.7倍の急騰

 コロナの感染拡大に伴い、株価が急上昇した医薬品メーカーの一つに大幸薬品がある。8月20日には2928円の上場来高値(調整後)を付けた。年初来安値からは2・7倍の急騰となる。大幸薬品の社名は知らなくても、主力商品であるラッパのマークの「正露丸」はご存じだろう。

 8月12日に発表した第1四半期(2020年4〜6月)決算は、前年同期比13倍超となる約28億円の営業利益を達成したが、けん引したのは正露丸ではなく、「クレベリン」という除菌剤だった。二酸化塩素分子を発生させ、空間に浮遊するウイルス菌を除去する製品で、自宅のリビングや寝室に置いて使用するタイプから、携帯に便利なスプレー型やスティック型までそろっている。

 通常なら、インフルエンザが流行する冬に売れる商品だが、今期は4〜6月で前期の約半分の40億円を売り上げ、閑散期の夏場に入っても売れている。大幸薬品はクレベリンの生産能力向上のため新工場の建設を計画中だが、果たして、今後も需要拡大は続くのか。

 「コロナの感染拡大で、消費者の衛生意識は高まっている。今後、国内ではオフィス、ホテル、車の中などでの使用を提案して拡販を狙う。そして、競合商品のない海外での展開も検討している。特に正露丸の知名度が高い中国、香港、台湾で販売チャネルを広げていきたい」(中條亨・大幸薬品企画・IRグループマネージャー)

 コロナが直撃した今期決算で、利益を伸ばす企業はどこか。過去の利益の推移や財務体質でふるいにかけ、今期の予想営業利益の伸び率が高い順にランキングを作成した結果、前述の大幸薬品は2位の伸び率になった。ランキングの上位10社だけ見ても、うち8社が8月に上場来もしくは年初来の高値を更新している。

業績が右肩下がりの高配当株は
目先の配当利回りが高くても買ってはいけない

 個人投資家に人気がある高配当株でも、今期、減配や無配に転落企業する企業は少なくない。冒頭で挙げた日産の配当利回りは2019年初めに6%超まで上昇したが、これは業績の下方修正を織り込んで株価が下落した結果である。今期は無配に転落して、株価は2年半で3分の1程度まで下落した。

 仮に日産株を5年前に100株購入した場合、5年間の受取配当金の合計は1万6800円になるが、株価下落による損失は8万円ほどになる。同期間の日経平均株価は20%以上上昇している。

 減益トレンドの高配当株への投資は危険ということだ。日産のように業績の低迷が続けば減配を余儀なくされ、さらに株価が大きく下落するリスクもある。 

 中長期で高配当を享受でき、株価が値下がりしにくい銘柄を選ぶには、業績が右肩下がりではないことが大前提。今特集では、直近8期のうち5期以上で増収、増益をしている企業を対象に、安定高配当株ランキングを作成した。頻繁に売買せず、着実に資産形成を狙うなら、要注目である。

 このほかにも、『週刊ダイヤモンド』9月12日号では、最新の決算数値や収益予想をもとに、攻めにも守りにも強い「高ROEランキング」、上方修正が期待できる「業績進捗率ランキング」などを掲載しているので、投資の参考にしてほしい。