『週刊ダイヤモンド』7月25日号の第1特集は、「大失業時代の倒産危険度ランキング」です。コロナ危機で大失業時代が到来しそうです。ヒトやモノの動きが停滞し、企業の倒産リスクが急激に高まっています。そこで今特集では、上場企業3784社の倒産危険度を総点検。百貨店、外食、自動車、アパレルなど、甚大な打撃が避けられない13業種については個別にランキングしました。コロナ倒産を回避するのに役立つ、補助金・減税・融資の使い倒しマニュアルもお伝えします。

新たに265万人が失業
失業率は戦後最悪の6%台に

 社員数130人のうち、実にその8割強のリストラに踏み切ったのは外食チェーンのフレンドリー(大阪府)だ。関西で居酒屋やうどん店を営んでいたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で売り上げが蒸発。全70店のうち41店の閉店も既に打ち出していた。今回の倒産危険度ランキングでは、同社がワースト1位となった。

 居酒屋からは撤退し、事業をうどん一本に絞る。社員がわずか20人程度になってしまう公算だが、同社は「うどん店は1人の店長で複数の店舗を運営できる。事業継続は可能だ」(中尾武史経営管理部長)と説明している。

 今回応募した希望退職者については、ファミリーレストランを展開する親会社ジョイフル(大分県)への再就職をあっせんする。だが、「同社側の精査もあり、全員ではない」(中尾氏)。ジョイフルも4~5月は売上高が前年同期比で半減し、6月には直営200店の閉鎖を発表するなど余裕がない状況に追い込まれている。フレンドリーの労働組合関係者は「外食業界内での再就職は非常に難しい」と不安な気持ちを打ち明ける。

 国内で新たに265万人の失業者が発生し、失業率は戦後最悪の6%台まで上昇する――。2012年から5年間、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の審議委員も務めた、野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは、こう予測する。

倒産は7年ぶりに1万社超え
全国で消滅する企業は6万社に

 日本の失業率の定義では、仕事を休んでいる休業者は失業者に含まれない。だが4月以降、休業者はフレンドリーのような飲食業のほか、宿泊業や娯楽業などを中心に急増している。彼らは今後失業するリスクが高い失業予備軍だ。こうした「隠れ失業者」を考慮すると、実質的な失業率は欧米並みの「2桁に達する恐れがある」(木内氏)。コロナ禍が引き金となり、大失業時代が到来する。

 鍵を握るのは今後の倒産動向だ。東京商工リサーチによると、全国の倒産件数は19年に11年ぶりに増加し8383件となった。足元では、6月の倒産件数が前年同月比6%増の780件と今年最多の水準に。負債総額は、大阪府の旅行会社の大型倒産もあり、48%増の1288億円に膨らんでいる。

 東商リサーチの友田信男常務取締役は「9月から年末に向けて、倒産件数がさらに増えてくる恐れがある」と警鐘を鳴らす。

 コロナ倒産を減らすため、政府は企業が返さなくてもよい給付金を複数用意した。手続きに手間がかかり企業の申請から給付までの時間差が問題となったが、8月には大体行き渡りそうな情勢である。

ただ3月以降、開店休業状態の企業ではさまざまな固定費が発生しており、給付金の多くは過去の支払いに充てられる可能性が高い。そして今後、営業活動を再開・本格化する際に仕入れなどで資金需要が膨らむが、その大半は本業で賄わなければならない。ところがコロナ下の新常態に対応できず、資金繰りに窮する企業が出てくる――。

このような問題が9月以降、顕在化してくる可能性があると友田氏はみている。東商リサーチの予想によると、全国の倒産件数は今年、7年ぶりに1万件を超える見通しである。こういった時期だからこそ、ダイヤモンド編集部は「大失業時代の倒産危険度ランキング」というコンセプトで、特集を敢行することにした。

なお、大失業時代につながる雇用の減少は、より厳密には倒産に休廃業・解散も加えた企業の消滅数で論じるべきだろう。東商リサーチは今年、全国で6万社以上が消えると予想する。休廃業・解散の調査を始めた2000年以降、この水準となるのは初めての事態だ。

19年度に5%超の企業が消えた
青森県平川市と静岡県伊豆市

 7月に入り、東京都では1日当たりのコロナ感染者数が200人を超す日も出てきた。感染第2波への懸念が高まっている。外出自粛や移動制限が再び強まれば、外食、旅行、宿泊を中心に企業の倒産リスクは大きくなる。こういった業種への依存度が高く、雇用や経済基盤が脆弱な地方では特に甚大な影響が必至だ。

 全国の実情を地域別に見るため、19年度に倒産・解散・休廃業した消滅企業のデータから、「自治体別・企業消滅危機ランキング」を作成した。帝国データバンクが集計した「19年度の倒産・解散・休廃業件数」を「18年度末の企業数」で割り、消滅企業比率を算出してランキングした。

 ワースト20の顔触れを見ると、やはり首都圏以外が多かった。1位の青森県平川市と2位の静岡県伊豆市では、1年で5%を超す企業が地域から消えた。10位までの自治体で倒産理由を調べたところ、販売不振が9割近くを占めた。昨秋の消費増税に加え、年明け2月以降のコロナショックで地方経済に深刻な打撃が出ている。

 本特集では、こうした危機にひんする企業のために倒産回避マニュアルも用意した。併せて熟読してほしい。