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トップ ■ 連載 第三十二回「続・憂国呆談」番外編Webスペシャル
 2005年5月号

憂国放談    ............... ■ 田中県政の成果を認めない長野県議会、過去の問題点を隠蔽する大阪市。人はなぜ「変わる」ことに強硬に抵抗するのか? 丹下健三の死や愛知博の話題も含め、今月もジャンルを越えて田中康夫と浅田彰が語り呆ける!
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三位一体の癒着構造


●改革への抵抗で共通する長野と大阪
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浅田 彰 二月の長野県会を見てると相変わらず大変だね。議会は、田中さんの出した当初予算案から二億八四〇〇万円余を減額修正して可決した。田中さんは「再議」を請求したけど、結局それを経て改めて修正案が可決された。他に、副知事と教育長の人事案も否決される始末。一方、住民票問題の訴訟なんかで県費を支出したことを県民に謝罪するよう知事に求める決議案は賛成多数で可決されちゃった(笑)。

田中康夫 そこまでやるなら不信任を出せばいい、と改革派の県議が議場で発言したけど、それに対しては二年半前のトラウマがあるんだね。でも、木製ガードレールとかスキー王国NAGANOの予算まで切っちゃうのは、阿呆としか言いようがない。早い話が、観光客は来なくても良い、と宣言しているようなもの。信州・長野県観光協会の理事会でも、全員怒ってたよ。自民党系の県議が、自分の選挙区の幾つかのスキー場を県内共通リフト券事業から、無理矢理に脱退させて、その上で、スキー王国事業は効果が無い、と言い出したんだから、壊しているのは誰なんだいって話(笑)。信州型木製ガードレールも、切り捨て間伐と呼ばれて山中に放置していた間伐材を用いて、中に鉄棒を入れて強度を高め、国交省の耐久度テストに合格した県内の三つの土木建設業グループが生産しているんだ。その過程で県が補助金を出した。中軽井沢から千ヶ滝まで、このガードレールが続いている。景観的にも、環境県、森林県、観光県をアピールできる。しかも、ダムと違って県内業者が生産から設置まで手掛ける。こんなハッピーな話はないのにね(苦笑)。

浅田 彰 前から言ってるように、長野県の改革は財政再建という面でも全国で唯一、累積債務を減少させて一番進んでるし、その一方で教育や福祉や環境には手厚い配慮がなされてる。ところが、たんに田中憎しというだけで、長野のためになる法案であれ予算であれ、議会が全部否決していくわけだ。

田中康夫 猜疑心が強いんだよね。僕が目立つのはいけないらしい。でも、彼らがフジテレビの「クイズ$ミリオネア」に出演したって、25.6%の視聴率は取れないでしょ(苦笑)。

浅田 彰 そういや四月七日のこの番組に出て一〇〇〇万円獲得したんでしょ。すごいじゃない?!

田中康夫 いやぁ。でも、いちばん格好よかったのは応援のゲスト。菅原文太がきてくれたんだ。みのもんたが、菅原さんと田中さんはどういう関係ですかと訊いたら、三秒くらいして「友だちだよ」と。これがなかなかかっこいい(笑)。

浅田 彰 意外な交友関係だよね。

田中康夫 彼は「『脱ダム』宣言」当初から、大変な理解者でね。普通だったらクイズの応援なんてポジションでは失礼なんだけど、嬉しかったよ。やっぱり存在感があるんだ。観客席の若い連中も、「おーっ」と言ってた。

浅田 彰 しかし、フジもそういう番組にホリエモンを呼ぶぐらいの度胸があれば面白いんだけどな。それどころか、ホリエモンの出演した『平成教育2005予備校』の放送を中止しちゃうんだから、ダメだなあ(苦笑)。

田中康夫 この『クイズ$ミリオネア』が放映された週は期首特番が目白押しだったんだけど、3時間に亘る同番組の平均視聴率が17.9%。全局全番組中で7位。因みに、僕が出演した一時間弱の部分は平均視聴率が21.7%。一位だった『めちゃ×2 イケてるッ!』も平均視聴率は20.9%だから、良い数字だよね。番組中に、小布施ワイナリーのカベルネ・ソーヴィニョンを抜栓して、みの、菅原のご両人と飲んでしまうなんて、前代未聞の宣伝でしょ。個人アドレスへも知事や広報等の複数の公的アドレスへも嫉妬のメールが全部で二通あっただけで、後の一〇〇通近くは賞賛や激励のメール。なのに、批判相次ぐと“捏造記事”を書いちゃう小坂一族の開かれたファミリー企業『信濃毎日』には呆れるね。知事職たるもの芸能番組に出るのは不謹慎(笑)、というんだけど、だったら、今までにも出演した石原慎太郎や橋本大二郎も批判の対象かい? 大株主で衆議院議員の小坂憲次も、それだと都合悪いと思うけどね。何せ、橋本派ですから(爆笑)。どうせなら、田中康夫を利用してやろうって発想になればお利口な狡猾さなのに。タダで使って踊らせりゃいいじゃん。

浅田 彰 それが戦略ってものだよね。

田中康夫 長野では毎年、県政世論調査を行っているんだ。一般競争入札で調査会社に委託して、二〇〇〇人に郵送して68.2%の有効回収率。県財政が危機的であるとは僕の就任前には教えられていなかった県民が六割。県有施設の敷地内禁煙に八割が賛同。出来るだけ燃やさない・埋め立てない廃棄物条例の制定を八割が期待。嫌疑塊じゃなかった県議会が否決した「スキー王国NAGANO」事業や知事が先頭に立って広告塔を演ずることに七割が評価、といった具合なんだ。詳しくはhttp://www.pref.nagano.jp/keiei/callc/yoron/h16/yoron16.htmや「広報ながのけん」http://www.pref.nagano.jp/hisyo/kouhousi/tokusyu38.pdf、或いは青山貞一武蔵工業大学教授のサイトhttp://eritokyo.jp/independent/nagano-pref/naganopref-QandA-2005.htmを覗いてみて欲しいけど、信濃毎日新聞や何故かゼネコンの鹿島も会員の、名前だけは長野県世論調査協会という尤もらしい名称の機関が回収率五割以下で実施している世調とは随分と違う結果が出たよ(笑)。最高なのは、県民が知りたいことを報道機関がより客観的に報道する事を望む県民が53%という数値だね(苦笑)。そしたら早速、ステキな質問を知事会見http://www.pref.nagano.jp/hisyo/press/20050422.htmでしてくれたよ、新米じゃなかった信毎記者が。自民党の小坂憲次氏も株主で、小坂一族が経営する信毎は、最近では連日連夜の反田中キャンペーン。「支那之埋仁智」とも「支那之迷煮痴」とも言われて、一説には、石原慎太郎氏が新聞名を気に入って大量購入しているとのブラックな都市伝説もあるらしい(笑)。まあ、阿呆アホ話はこのくらいにして、市長と職員と議員がお仲間クラブを築いてきた大阪市の話題だ。

浅田 彰 大阪市の改革をめぐるドタバタは、長野の問題を理解する上でもわかりやすい反例だと思うよ。六代続けて助役から市長になったっていう関淳一だけど、さすがにここまで乱脈が続いてきた以上は何かしなきゃいけないってんで、大阪大学の本間正明を座長とする都市経営諮問会議ってのをつくった。ところが、本間が、改革のために外部の人材を市が受け入れるよう求めたところ、「大阪は市と議会と組合の三位一体でやってきた、純血主義で中央官僚を受け入れず地方自治を貫いてきた」(笑)とか幹部たちが誇らしげに言って、それで市長は自らつくった諮問会議を途中で解散させ、事実上、本間を解任しちゃったわけだ。その「市と議会と組合の三位一体」こそが問題なんだ。そんなんじゃ相互チェックなんてできるわけないもの。それを徹底して拒否するところが田中康夫の真骨頂だと思うよ。

田中康夫 その通り。長野県も僕以前に公選知事は戦後三人。一人が二〇年間も牛耳ってきた。で、県知事と県議会と県職員がお仲間ピラミッドを築き、その壁面に地元メディアや地元金融機関なんぞがへばり付いていたと。就任当初、知事は職員に歩み寄ろうとしない、と非難されたよ。でも、それっておかしな話で、職員は大いに僕と議論すべきだけど、一旦、方向性を僕が示したら、その実現に向けて彼らが協力すべきな訳で、こんなところにも長きに亘るお仲間主義の弊害が現れてる。

浅田 彰 大阪市の本間正明は、よかれあしかれ小泉改革のブレーン以上でも以下でもない。自分を市の顧問にしろ、跡田直澄慶応大学教授を市長の改革担当補佐官にしろ、総務省からも何人か受け入れろ、とかなんとか、人事のことまで具体的に言いすぎたかもしれない。しかし、とにかく市長が自ら請うて座長になってもらったわけだから、それを急に外すってのはすごいよ。
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田中康夫 まったくね。しかも、この件じゃ、市の助役の大平光代が本間を外す首謀者だったんでしょ。福岡政行、勝谷誠彦がレギュラーのABC朝日放送の『ムーブ!』に出た際に、申し上げてあげたよ。啖呵を切るのがお上手な筈だから、彼女は本来、伏魔殿な大阪市役所の悪行的お手盛りを、洗いざらい暴露しちゃえばいいんだよ。なのに、ギルド社会な弁護士へと転身して長いからか、保身が目に付く。しかも、一所懸命、間に入って奮戦しているような振りをするのも上手いから、始末に負えない。

浅田 彰 首相秘書官の飯島勲に電話して、内閣府の経済財政諮問会議のメンバーでもある本間を外すにあたって仁義を切ったらしい。さすが「元極妻」が売りだけのことはある。しかし、彼女は、本間が中央官僚を受け入れないと国から仕打ちを受けると言ったのは脅迫と思ったとまで言うんだけど、本間によると彼女はその場に同席してなかったっていうんだからね。あるいは、本間が個人的な地位や名誉を追求してるって言うんだけど、仮にも内閣の経済財政諮問会議のメンバーで、学会では竹中平蔵なんかよりずっと重視されてるような人が、大阪市ごときの顧問になって嬉しいと思う?「私では(補佐官には)不足ですが」と繰り返した大平のほうが、はるかに異常だよ。

田中康夫 大阪市に限らず京阪神奈の場合、同和利権とか色々とあって、そうした人権的配慮で雇用されるシステムと無縁ではなかった現業の雇用関係にまで手を突っ込んでいくと難しいんだろうね。本間はわりあい融通がきかない純粋さで、ここは変えなきゃと言ったんだろうけど、頑強に抵抗されたんだと思う。でも普通は、小泉内閣の経済財政諮問会議メンバーでもある本間にここまで泥を塗るなんてなかなかできない。

浅田 彰 裏になかなか難しい問題があることは確かだね。しかし、だからこそ、ある程度、外から人を入れて、蛮勇を奮ってもらわないと、改革できないってことも事実だから。

田中康夫 そうだよ。

浅田 彰 それにしても、大平に汚れ役を押し付けながらのほほんとしてる市長っていったい何なの? 六〇〇〇人を超す処分が発表されたときも、市長の姿が見えないと思ったら、年度末ってこともあって、幹部の送別パーティをハシゴしてた、それが毎日放送(TBS系列)に隠し撮りされてるんだからね。
 しかし、その件で筑紫哲也が言ってたよ。たしかに大阪市の公費流用は突出してるけど、それがここまで目立つのは、大阪にけっこう大きなメディアがあって、頑張って取材し報道してるからだ、他の地方でも似たようなことはいっぱいあるのに、ほとんど報道されてないって。記者クラブ制度なんかを通じてメディアも「三位一体」に統合されてる場合がけっこうあるんだね。そういう意味では、大阪市の例をいい教訓にして、すべての自治体が長野県でやってるような徹底的な洗い直しをやるべきなんだと思う。


田中康夫 その長野県では、改革の足を信毎や地元TV局が思いっきり引っ張って下さるラヴリーな状況。いやぁ、楽しいよ。


●丹下健三の死

田中康夫 建築家の丹下健三が亡くなったね。九一歳だった。

浅田 彰 日本のモダニズム建築を代表する巨匠だったと思う。本当をいうと、一九七〇年代初めに亡くなってりゃ、世界最高クラスの巨匠として記憶されたと思うよ。それまでに手がけた広島ピースセンターとか国立代々木競技場(東京オリンピック会場)とかはたしかに素晴らしいからね。戦後まだ貧しかった日本で、よくあれだけのことをやったと思う。
 ところが、その後、国家を代表する建築家なんて必要としなくなった消費社会・情報社会の中で生き延びようとして商業的ポストモダニズムに転じたあげく、余計なものをつくっちゃったんだな。赤坂プリンスホテルあたりに始まって東京都新都庁舎あたりまではまだ許容範囲ぎりぎりとしても(弟子の磯崎新は「朝日新聞」に書いた追悼文で新都庁舎も「伝・丹下健三」くらいにしておきたいって言ってるけど)、お台場のフジテレビとか、芝のプリンスホテル・パークタワーとか、たまたまいま危機にある企業グループのための安っぽいシンボル建築はどう見てもヤバイでしょう。まあ、偉大なクリエーターは死に時も難しいってことかもしれない。そう、フジテレビもあんな建築に大金をはたく前にグループの資本関係を整理しとけば、今度のような乗っ取り騒動も起こらなかったかもしれないのに。
 ともあれ、今年一月にフィリップ・ジョンソンが死に、三月に丹下健三が死んで、いわばアメリカと日本の建築界の二大ゴッドファーザーがこの世を去ったわけね。二人とも、戦時下でナチや軍国主義とも関係しながら仕事を始め、戦後、まさにモダニズム建築のリーダーになったかと思うと、やがてポストモダニズムに転向し、その過程で優秀な子分をいっぱい育てたという意味で、とてもよく似てる。ただ、ジョンソンには五〇〜六〇年代の丹下のような決定的な作品がないわけ――ひとつ挙げるなら自分が死ぬまで住んでた「ガラスの家」だろうけど、前に訪問記(http://www.kojinkaratani.com/criticalspace/old/special/asada/techo13.html)に書いたとおり、それもまたミース・ファン・デル・ローエの住宅のコピーみたいなものだから。その分、丹下のほうがすごい建築家だとも言えるし、むしろ建築運動のキュレーター&プロデューサーとして優秀だったジョンソンのほうがメディア時代を先取りしてたとも言える。ともあれ、彼らの退場でモダニズム建築も本当に終わっちゃった感じだね。あとは、コールハースとかヘルツォーク&ド・ムーロンとかが、めちゃめちゃなデザインの建築をこれ見よがしに建てていくだけ。


田中康夫 芝のパークタワーもプリンスって名前を付ける辺りがダメだよね。全然違う名称でやるべきでしょう。伊豆長岡の三養荘だって、それがプリンス系列だと知っていてもあの名前の旅館だから人は来るんだよ。「プリンスホテル・パークタワー」ってつけて、一泊五万円のパークハイアットと同じ値段にしたって客は来ないって。

浅田 彰 西武の再建委員会は、すでにパークタワーは売るって言ってるらしい。できたばかりなのに早すぎないかって(笑)。

田中康夫 外資のなかには、プリンスホテルはいくつか買いたいところもあるんじゃないかな。買い叩けるんだったら、おいしいだろうな。
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浅田 彰 再建計画がうまくいくかどうかは微妙で、それこそまさに乗っ取りのチャンスだよ。まったくダメな物件も多いけど、絶好のロケーションの物件もいっぱいあるわけだから。

田中康夫 いやぁ、長野県内の軽井沢とかはどうなるのかな。まあ、丹下に関しては面白い都市伝説があって、フランスで勲章を貰った際、アメリカンエキスプレスの日本法人が発行するカードの新記録を樹立したのだとか。一回の買い物としては最大金額のカード決済。確かエルメスとかルイ・ヴィトンでの記録かな。一体、妻は何を買ったんだろう(苦笑)。数々の施主たる大企業の面々への内祝い品かな。


●愛知万博にみる小泉改革の成果

田中康夫 いよいよ愛知万博が始まった。弁当持ち込み禁止なんて、やっぱり発想が官僚的だよね。緑の博覧会でそんなことをしたらどうなるか、子ども連れがどうなるかって想像力がない。本当に役人って、人間としての想像力がないんだ。たぶん実質的な主催者のトヨタ側の担当者も、それでいこうって同意したんだろうな。三河的偏狭さが出ちゃった気がする。「親の心、子知らず」だと奥田碩も頭を抱えているんじゃないか。

浅田 彰 この件に関しては、小泉が見直しを指示したんで解禁されることになった。

田中康夫 でも小泉が何故、そんなレヴェルの話を持ち出したのかね。彼に言わせたのは誰なんだろう。

浅田 彰 いずれにせよ小泉改革が実を結んだ稀有な具体例でしょ(笑)。

田中康夫 それは言えてる。素晴らしい実績(笑)。

浅田 彰 さっきの丹下健三に絡めて言うと、一九七〇年の大阪万博って丹下健三(&磯崎新)と岡本太郎が対決する「お祭り広場」をはじめ、パヴィリオンごとにかなり力を入れてたのに対し、今回はそういう見所が何もないでしょ。アーティストっていったって、せいぜい藤井フミヤとか。それに、環境がテーマの博覧会で、なぜロボットが歌い踊るわけ? それらしい見ものといえば、マンモスの氷づけぐらい。この万博はたぶん春休み明けで急速に失速するね。

田中康夫 だけどチケットだけは売れてるらしい。つまり名古屋の企業に勤めてる連中が皆、買わされたわけだ。これっていわば政治家のパーティだね(笑)。チケットは売れても人は来ない。二〇〇〇円の弁当を食堂で買わされて、持ち込みはダメ、と。会場で食べられる寿司と天ぷらもちょこっとで、あっという間になくなっちゃうパーティみたいなもの。中京経済って実は、自民党も真っ青の政治家商法だったのか、驚いた(笑)。たしかに人がいっぱい来たらガードマンも増やさなきゃいけないしゴミも出る。ならばいっそ、チケットもeチケットにしときゃ紙代もむだにならすに済んで、環境博らしくなったのにぃ、とトヨタが思ってたりして(笑)?

浅田 彰 トヨタの得意なムダ取りってわけだ(笑)。

田中康夫 まったく。実は愛知万博では五月二五日に「長野県の日」ってのがあるんだよ。僕もその時には行くんだけどさ。

浅田 彰 何かイベントをやるの?

田中康夫 そう。イベント会場で、コシノジュンコが伊那谷の生糸でデザインしたファッションショーをしたり、田崎真也が原産地呼称管理制度について語ったりとか。彼らや彼女らも、自慢じゃないけど、僕が知事だから交通費程度で協力してくれる。この経済効果を、山国の新聞社や議員は冷静に考えるべきだよね。嫉妬してばかりいないで(苦笑)。だけど、イベント会場の外で告知のチラシを配っちゃいけないとか、規制がうるさいわけ。スキー王国のキャラクターのわんだるま国王とか移動絵本図書館のキャラクターのオハジョナの着ぐるみを連れて、ハンディマイク持って踊りながらパフォーマンスでもして集客する、ってのも御法度らしいよ、いやはや、役人的でしょ。確信犯で決行したりして(笑)。

浅田 彰 いいねぇ。そういえば小泉も『Shall we dance? 』ハリウッド版の宣伝に来たリチャード・ギアと踊ってたから。あれは怖い絵柄だったな(笑)。というか、やおい(主人公の同性愛関係だけに焦点を絞った「やまなし・落ちなし・意味なし」のパロディ)の一部に政治家を主人公とする特殊ジャンルがあって、そういうのが好きなやつにはたまらないシーンだったかも。

田中康夫 リチャード・ギアって小泉に会った前日に、反国家分裂法を制定した中国政府を批判するコメントを出したでしょ。でもそういう記事が出るのはスポーツ新聞だけ。一般紙には出ないわけ。芸能人が会見で述べた発言なんて、仮に共同通信から配信されようとも、自分達の政治面や社会面で扱う話じゃないと不遜な選民意識を抱いてるんだ。やっぱり一般紙って負けてるんだよ。

浅田 彰 そう、リチャード・ギアは自分が仏教徒だから、以前からチベットに対する中国政府の姿勢を痛烈に批判してきてる。

田中康夫 彼もそれをやっぱり小泉に実際に会った際にも直接言わなきゃ。「君には信仰があるかい」って。

浅田 彰 踊ってる場合じゃない(笑)。

田中康夫 これまた、役人用語を使えば、いかがなものかという感じだよね(笑)。
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●チャールズの執念

浅田 彰 最近妙に感心したニュースといえば、イギリスのチャールズ皇太子とカミラ・パーカー・ボウルズの結婚(笑)。

田中康夫 たしかに。

浅田 彰 一九七〇年に出会ってから三十数年、ダイアナがいたころから不倫関係にあってあれだけ顰蹙を買ってたにもかかわらず、ついに結婚までこぎ着けた、この執念はすごい(笑)。

田中康夫 一方、エリザベス女王もすごいね。結婚式に出席しなかったんでしょ。英国国教会への配慮とか、式場が予定していたウィンザー城から近くの公会堂に変更されたんで混乱を避けるためとかされてるけど、どうかなぁ(笑)。

浅田 彰 でも、それだけの逆風に耐えて結婚まで行ったのは、エライといえばエライんじゃない?

田中康夫 それは言えるかもね。だいたいチャールズってもう五六歳。カミラはその一つ上だからね。よほど結婚したかったんだろうなぁ。

浅田 彰 ただ、カミラは結婚しても「プリンセス」じゃなく「コーンウォール公爵夫人」、彼が王になっても「クイーン(王妃)」じゃなく「プリンセス・コンソート(王の配偶者)」って称号になるらしいね。とはいえ、チャールズは世論調査で「次の王になるべき人物は」って質問で息子のウィリアムに抜かれちゃってるからそれどころじゃないんだけど(笑)。しかし、次男のハリーが仮装パーティでナチの扮装をしてスキャンダルになった事件で、ウィリアムも衣装選びに立ち会ってたらしいから、外見がダイアナに似てるってだけで、中身は空っぽかも。
 他方、アラブ人の恋人の子どもを身ごもり、結婚を控えてたダイアナが、突然パリで交通事故死した事件も、ホテルを出るときなぜかいつものクルマが使えず別のクルマを使うことになったとか、陰謀説の好きなやつなら喜びそうな話がいまだに出てくるんだなあ。これまた伝説になっちゃうだろうね。
 いずれにせよ、イギリスの皇太子があそこまで頑張ったんだから、日本の皇太子にも頑張ってもらおう。


田中康夫 うーん、頑張る方向がちょっと違う気もするけどね。何れにせよ、宮内庁官僚に屈せず、逃げずに闘って欲しいよ。
 それにしても、ローマ法王の葬儀にこそ、皇太子夫妻を出席させるべきだった。雅子妃にとっても、そうした厳粛な公式行事から復帰するのは、望ましいでしょうに。思うんだけど、皇太子夫妻に皇室外交をさせる必要はない、と遅れた意見を述べている似非尊皇思想の連中って、嫁は自宅から出るな、と言ってる姑みたいだよね(笑)。


浅田 彰 ほんと。他方、モナコ公国をたんなる賭博場から観光地兼タックス・ヘイヴンへと「発展」させたレーニエ大公が死んで、アルベール大公が後を継ぐことになったけど、けっこうな年なのに独身を貫いてるんだよね。シャイだからなのか、ゲイだからなのか、よくわからないんだけど。ともあれ、レーニエ大公のようにグレース・ケリーみたいな妃を迎えることはほぼ不可能だからね。そういえば、グレース・ケリーも自動車事故で死んで伝説になっちゃったなあ。
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●洗脳された大統領

浅田 彰 いま『クライシス・オブ・アメリカ』(http://www.coa-movie.jp/)って映画をやっててけっこう面白いの。大統領候補が洗脳されているという話なんだけど。

田中康夫 へぇ面白そうだね。

浅田 彰 デンゼル・ワシントン主演のメジャー作品なんだけど、配給の問題なのか、田舎のシネコンでしかやってない(笑)。東京や大阪でも一館だけかな。この映画、実は『影なき狙撃者』っていうジョン・フランケンハイマーの名作のリメイクなわけ。原題はどちらも『THE MANCHURIAN CANDIDATE』。オリジナルのほうは、朝鮮戦争で捕虜になって満州で中共軍に洗脳された米兵が帰国して選挙の候補になるっていう話なの。新作はそれを今に持ってきてる。湾岸戦争から帰還して大統領を目指す人物が実は洗脳されているらしいことがわかって・・・と。冷戦期のポリティカル・スリラーを今にもってきてる感じ。

田中康夫 今のリアルなものに投影しているようなところはあるの?

浅田 彰 うん、ただ、ブッシュなんかは、アルコールを断って「ボーン・アゲイン」体験をした時点ですでにキリスト教原理主義に洗脳されてる感じだからなあ(笑)。


●田中康夫的中国講義

田中康夫 本誌でも述べたように、北京大学で授業をしてくれっていうんで、行ってきたの。三日間の短期講座なんだけど。

浅田 彰 へぇ、いいじゃない。テーマは?

田中康夫 「解読日本」と称して、長野県の改革とかを喋ったんだけどね。ただ、三日間も学生相手にアジったんで、途中で連行されるんじゃないかと思ったよ(笑)。
 実は中国が侮れないのは、上海の交通大学がね、近い将来、長野県の僕のように政党や組合や団体推薦とは無縁の形の候補者が当選する選挙がありえるんじゃないかと、僕の後援会の幹部に話を聞きにきてるんだよね。いろんな意味で貪欲な国なんだと思う。

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浅田 彰 たしかにね。そういや磯崎新が前に中国で講演したときは、講演料をもらうどころか、内々に話があって、こっちが寄付することにされちゃったんだって(笑)。講演のあとで学長とかが出てきて「先生から寄付をいただきました」とか言ってみんなから拍手される、と。朝貢貿易だね。中華帝国で話をさせていただくかわりに、ちゃんと貢ぎ物を出す、と(笑)。やっぱり中華思想はすごい。

田中康夫 たしかに僕も講演料はナシだったなぁ。しかも、僕の場合「今までの本を一冊ずつ寄付してください」って求められちゃった(笑)。


(了)
次回更新は5月下旬の予定です!



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