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●「J隊」のキーワードは「ABC」「GNN」?

本誌でも言ったように、僕は以前、近年のムード的な日本回帰の風潮を、古典的な日本回帰と区別し、JポップのJをとって「J回帰」って言ったんだけど(http://www.kojinkaratani.com/criticalspace/old/special/asada/voice0003.html)、たんなるムードで国家主義に回帰しつつある小泉首相や若手政治家もまさに「Jポリティシャン」だし、彼らに玩具のように振り回されてる自衛隊も「J隊」だよ──文芸批評家の仲俣暁生も「J隊」って言ってるって知人から教えられたけど(http://d.hatena.ne.jp/solar/20040210)。
そういえば、「J隊」のイラクでの責任者である番匠幸一郎一佐が現地での訓示でアルファベットの略語を連発してるの、「GNN」「ABC」が大事だって。「義理、人情、浪花節」(GNN)は万国共通だ、「当たり前のことを、ボーッとせずに、ちゃんとやろう」(ABC)、そうやって地道に努力する姿を見せれば、イラク人にも絶対通じるはずだ、と(笑)。まあ、イラクの海千山千の族長連を相手に「J隊」の「GNN」がどこまで通じるかってことだね。
恐らくODAと似たか寄ったかの金銭やプレゼントの攻勢でしょ、族長連中に。巨額の官房機密費も動いているのかな。だけど、象徴的なのは、地元の学校を先遣隊のヒゲの責任者(佐藤正久先遣隊長)が訪れた時に、黒板が欲しい、ノートも鉛筆も足りない、と直訴されたでしょ。サーヴィスとは何ぞや、を「最初の3秒、真実の3分」という題名で上梓したいと昔から考えている僕としては、どうして最初の訪問の際に持っていかないの、って感じだね。派兵に我々は反対だけど、こうした民生分野の支援自体は悪い訳じゃない。なのに、何が必要かの情報収集もしていない、と言うか、そんな状況であることを想像も出来ないのが外務省改め害・無能省。その手下として甘んじているのがJ隊。日本は雇用を運んできてくれる、と思われているわけだ。どうも、そうではないらしい、とバレちゃった時のリバウンドは恐ろしいよ。
●「KUSAMATRIX」と「六本木クロッシング」
『ギャラリー』2月号の表紙に、田中さんが草間彌生と並んで、彼女のつくったカボチャをかぶってる写真が出てたね。なかなかいい感じだったけど。
ああ、県知事表彰で彼女のアトリエを訪ねたときの写真ね。彼女は松本市の出身なんだ。お互い、こんな表彰をしたり、されたりする柄でもないけど、と前置きして表彰したの(苦笑)。
草間彌生は、六本木の森美術館で「KUSAMATRIX」っていう展覧会を開いてる(http://www.mori.art.museum/contents/kusamatrix/index.html)。彼女の全貌を紹介する展覧会じゃないけど、合わせ鏡によるナルシシズムの消散っていう戦略に焦点をあてた展示で、なかなか効果的だと思うな。ナルシシスティックに鏡像に固着するのでも鏡像を破壊するのでもなく、合わせ鏡で鏡像を無限に増殖させることでナルシシズムを消散させる。これは、単一の男根を切断するんじゃなく、いたるところに男根状の形態を増殖させることでそれを滑稽化・不能化するっていう、去勢の去勢ともいうべき戦略とも通じてる。それが、美術史でいうと、アンフォルメルの後、単純な形態の反復によって造形的な秩序を生み出そうとしたミニマリズムとうまくフィットしたわけだけど、いまや森タワーの高層階を埋め尽くさんばかりのマキシマリズムにまで発展しちゃってるんだから驚くよね。ほかにも、いたるところに人形のカットアウトを吊るし巨大な花や人形を配した部屋に干草を敷き詰めた「ハーイ、コンニチワ!」っていう作品があるんだけど、森タワーの高層階の一画に農村の香りを漂わせただけでもすごいよ。ともあれ、上の階では57組のアーティストがワン・フロアに詰め込まれた「六本木クロッシング」ってのをやってるんだけど、最近のビエンナーレやトリエンナーレと同じ学芸会的な混沌でしかなくて、必ずしも全力投球したわけじゃない草間彌生の「KUSAMATRIX」に軽く負けてる。

なるほど。未だ僕が知事に就任する前、草間が木場の東京都現代美術館で展覧会を開催した時、同時に荒木経惟の展覧会も行なっていてね。W嬢と出掛けたら、荒木の方が人は多いんだけど、アーパーな感じの観客。それに対して、草間の方は、観に来ている女の子が美しいんだよね(笑)。所謂、頭でっかちな偏差値教育的知的女性とは対極の、体で智性を判ってるタイプの子。荒木の方を観て、W嬢は言ってたよ。判り易〜い、って。勿論、皮肉を込めて。
しかし、森美術館の開館展の「ハピネス」は73万人を超える観客を動因したっていうから、すごいといえばすごいけど、それを基準にしちゃうとこれから大変じゃないかな。良かれ悪しかれ「六本木クロッシング」だけじゃ集客できないから「KUSAMATRIX」を同時開催しなきゃいけないとか、そういうふうになっちゃうでしょ。そういうのがいつまで続くか見ものだね。
●テクノミュージックとエシュロン
山口情報芸術センターっていうのができた(http://www.ycam.jp/index.php)。建設反対派の市長が当選したにもかかわらず、辛うじて完成に漕ぎ着けたって感じ。磯崎新設計なんだけど、彼の考えてた複雑な曲面の屋根が、予算削減によってちょっと間の抜けた山形(あるいは波形)の屋根になっちゃったんで、外見はいまひとつって感じかな。でも、中はすごくオープンで見通しがいいし、市立図書館も入ってて結構にぎわってる。田舎だからそんなに頻繁にイヴェントをやれないかわり、アーティストに長期間のレジデンスで作品をつくらせるっていう方針もいいと思うな。2月に池田亮司がレジデンスの成果として音楽に映像をつけたコンサートをやったんで見てきたんだけど、なかなかよかったよ。アートの先端はどう考えても東京の森美術館なんかじゃなく地方のこうした施設にある。現にこのコンサートもヴァージョン・アップされてニューヨークやパリで再演されるわけだから。
へぇ、池田亮司ってどんな音楽をやってるの?
パルスやノイズだけでできたテクノミニマル・ミュージックなんだけど、最近そこから一種のロマン主義に転回しつつあるって感じかな。彼のようなミュージシャンたちは、とんがった音楽をやりながらも、自分たちでCDを自主制作して世界中に流通させることができるようになったんで、メジャーな回路を通さずに世界的なスターになることができた。でも、これからは逆にメジャーなミュージシャンですらCDが売れなくなるから、大変だと思うよ。
たしかに、音楽はインターネットからどんどんダウンロードできちゃうからなぁ。

ダウンロードといえば笑っちゃう話があってさ。その池田亮司が、作品をつくるための取材で、アメリカの軍事技術に関する情報を大量にダウンロードしてたんだって。そしたら突然FBIからメールが来て「あなたの情報収集活動を関心をもってモニターしています」と(笑)。スパイ行為を働いたわけでもなんでもなくて、公開されてる情報をダウンロードしただけなんだよ。やっぱり全部見てるんだね、変なやつが危ない情報を集めてないかって。
へぇ、単にダウンロードしてただけでそんなメールが来るんだ。
ある種の情報にある程度以上アクセスした人間には自動メールが行くようになってたりするんじゃない? クリントン政権時代にはインターネットの監視は反対が多くて実現しなかったんだけど、9/11以降は盗聴でもなんでもありになっちゃったから。
アハハ、すごいね。なんだか、世界的な通信諜報システムとされる「エシュロン」を思わせるお話。
池田亮司はそのあとニューヨークに帰ったから、空港で別室に呼ばれるんじゃないか、テロリストの収監されてるキューバのガンタナモ米軍基地にでも送られちゃうんじゃないか、と(笑)。むろんこれは悪い冗談だけど、考えてみれば、ガンタナモ基地に監禁されてる連中の中にも無実の人がいるだろうし、それが弁護士も頼めずに監禁されたままなんだから、こわい話だ。
●公明党の恐怖のお花畑

公明党の全国女性議員大会とかいうのがあって、小泉首相が出席したらしいね。
ヴァレンタイン・デーの次の日かなんかで、小泉はチョコをもらって「今日はお花畑に来たようだ」なぁんて言ったらしい(笑)。でもふざけちゃいけないよ。僕は『日刊ゲンダイ』に連載してる「奇っ怪ニッポン」で書いたんだ。これこそ「私つくる人、あなた食べる人」的な男女の固定化で、公明党議員は怒らなきゃいけないだろう、と。
しかし恐ろしいお花畑だよ。浜四津敏子とか(笑)。
まったくだ、あと池坊保子とか(笑)。
華道なんていわば悪しき封建制度の上にあぐらをかいて威張りくさってるんだから、ホントなら公明党なんて最も嫌いなはずなのにね。

党として何の定見もない。彼女のほうも政治家をやりたくて仕方がなくて、どこでもいいんだろうしさ。
で、小泉は女性議員たちに向かって「皆さんは最強の政治勢力だ」とまで言った。よくそこまですり寄れるもんだよ。
そうしたゴマすりの成果か、2月の『日経』の世論調査で、公明党は「イラクへの自衛隊派遣」に賛成が66%だからね。去年の12月時点では34%だったのが倍増しちゃった。これは全政党中でトップの数字。自民党支持者よりもダントツ。小泉はきちんと説明しているかどうか、の設問にも、公明支持者は半数が「十分」だって。これも自民支持者よりも高い(笑)。
党代表の神崎武法が去年12月にサマワに視察に行ったでしょ。たった3時間の滞在だったのに「比較的平穏という印象を持った」と言って派遣容認にひと役買った。だけど、創価学会はさすがに平和主義が売りだから派兵反対派も多いらしいね。だから、何かあったら神崎が全責任を負って辞任する、と。
いやはや、すごい政党だよ。
●ステークホルダーとしての納税者
以前触れた田中さんの住民票問題だけど、前に住民票のあった長野市と、現在ある泰阜村で、選挙人名簿に二重登録されることになっちゃったね。
そうなんだ。長野市長の鷲沢正一は、「個人的には、田中の気持が判らないでもない」と新聞には答えてるのに、田中許すまじの感情が強いのかな。このままいくと、夏の参議院選挙のときには両方から投票用紙が来ちゃうかたちになるのかな。
それと納税に関しても、長野市は課税権は自分のところにあると言っているわけ。だけど、じゃあ全国の代議士や家族はどうなんだ、と。国会があるからと大部分は東京に住みながら、住民票だけは選挙区にある。単身赴任者や大都会で一人暮らしの学生も、実家に住民票を置いたまま。住民税も払ってない。学生の多い杉並区辺りは、調べてみたら。つまり、もはや住民票というものや住民基本台帳という概念が、これだけ人が移動する日本社会の実態を反映していないんだ。
ステークホルダーとして自分はこの自治体にコミットする、コミットするからには納税もするっていうふうに、主体的に選択していくってことは重要だと思うね。それに関して、田中さんの言うように、一定程度の多重帰属を認めるってことも考えられる。むろん、日本人の大多数は一箇所に定住してる普通の市民なんだから、マージナルなところでそういう大胆な実験をやってみてもいいんで、大混乱が起こるおそれはないんだから。
慶應大学教授の跡田直澄あたりも、自治体に対する寄附による基金というのをつくろうと言っているんだ。それは僕の考えに似ているわけね。地方分権と地域の活性化を同時進行させるための「ふるさと再生基金」と言っているんだけどね。
二重帰属だと、東京に住んでるけれど、税金の一部は故郷の村にも納めるとかいうことも考えられる。そういうところからでも、霞が関が税金を集めて地方に分配するっていう構造を変えていかないと。
そういうことなんだ。だから前から言ってるように、霞が関は税金の分配をするんじゃなく、単なる事務機能にならないといけないわけ。住民個々がどこのコミュニティを支援していきたいか選択できるようにするのが大切だと思うね。人口2000人強の泰阜村は老齢化率が4割。9割が森林。既に助役を置かない条例を設け、村会議員も12名から10名に。議員が専業になってはいけない、と土日や夜間に議会を開催。歳費も高すぎてはいけない、と実費弁償程度。職員も削減して、その浮いた金額が1億円。これを在宅福祉、訪問介護に投じているんだ。大した努力ではないと思うかも知れないけど、これを国レヴェルに置き換えると、霞が関の課長が3万5000人、消滅する話なの。交付税もね、今回12%の削減で全国の自治体はヒーフー言ってるけど、泰阜村は既に17%の削減に耐えられるように手を打ってきている。我が大家さんでもある松島貞治村長の哲学と気概は、大変なものなんだ。『「安心の村」は自律の村』という著書も自治体研究社から出している。http://www.vill.yasuoka.nagano.jp/ も覗いてみてね。同時に、北山早苗県議の http://sanae.islandvoice.net/、吉江健太朗・松本市議のhttp://www.yoshiekentarou.jp/、「K嬢の長野県政ウォッチング日記」http://www2.diary.ne.jp/user/95992/、「しなやかな信州をはぐくむ会」http://www.yassy.net/ 辺りも、「信州知事の田中康夫と申します」http://www.pref.nagano.jp/hisyo/governor/governor.htm と併せて覗くと、連日、田中批判を繰り広げている『信濃毎日新聞』や『朝日新聞』では判らない「コモンズからはじまる、信州ルネッサンス革命」を理解出来ると思うよ。
そうそう、最後に本誌(3月13日号)での対談の訂正をしておかなくちゃ。小泉ワンワン内閣による交付税の急激な削減で、平成16年度の信州長野県の財源不足は370億円。で、90億円の追加削減を行なったんだけど、「ただ、そこまでやってもまだ370億円の不足なんだ」という172頁3段目の最後の発言は「まだ280億円の不足なんだ」の間違いです。済みません、チェックしたのに素敵な県議会の最中で、頭が曇っていたのかも(笑)。

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